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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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笑顔の多い朝――賞金王決定戦ファイナル前半のピット

_u4w5994  昨日の記事では、今節の松井繁は、ファイナル進出を果たしたことで、ある程度、納得しているような印象も受けた……と書いているが、そう書いたことについては強く後悔している。
 なにせ、朝の公開優出インタビューから引き上げてきたあとの松井は、ほとんど時間を空けることもなくピットに姿を現わし、小走りで整備室へと直行していったのである。
 それほど大がかりな整備ではなかったと予想されるが、モーター本体を整備してから、松井はボートにモーターを着けている(傍にいた木村光宏が手伝っていた)。
 そして、屋外にある通称「ペラの森」でプロペラ調整を行なってから、ボートを待機ピットに移しているのだから、ひとつひとつの行動が本当に迅速だったのだ。移動の際に、赤岩善生を捉えているTVカメラの前を横切るかたちになっているのに気がつくと、あっ、という感じで、ひょいひょいと避けているところも見かけられた。今朝の松井は、昨日と変わらず、「タイム・イズ・マネー」そのものの行動をとっていたのだ。
 ボートに乗った松井が待機ピット近くまで来ると、待機ピットで作業をしていた鎌田義が、いかにも「どうぞ、こちらへお越しくださいませ」というように、大げさすぎる手招きをして松井を呼び寄せたので、ついつい笑ってしまった。それに応じた松井は待機ピットにボートを着けたあと、しばらくの間は、この“変わり者”と話をしていたが、そのときにはべつにカマギーギャグを聞かされていたわけではなく、整備に関する話をしていたようだった。
 鎌田が待機ピットを去ったあとには、松井は入念に回転数をチェックしていたが、その目はとても澄んだものだった。ファイナルに向けて、どれだけガツガツした欲を持っているかはわからないが、しっかりと狙いに行っているのは間違いない。
 気持ちの入り方のバランスを考えても、5号艇というポジションについた松井は本当に怖い存在である。

_mg_2990  優出インタビューを持っていたときから「顔つき」がまた変わってきたな、という印象を持ったのが、井口佳典と湯川浩司だった。
「優勝するイメージ」を持っていると言い切った井口は気合いをみなぎらせていたが、それが空回りするのではないかという危惧を持つことはまったくなかったのだ。
 湯川にしても、決意の強さははっきりと感じられたが、昨日までのような張り詰めすぎているものが抜けて、すっきりとした気合いになっている気がしたのである。
 松井に対するイメージなども含めて、すべてはこちらの勝手な印象に過ぎないわけだが、井口と湯川の二人は、現時点ではメンタル的な面でもいい状態になっていると判断してもいいだろう。
 この二人はやはり、インタビュー後、それぞれにペラの森に向かい、田村隆信を挟んでプロペラ調整をするかたちになっていたが、そのとき三人で話していたムードは非常に良かった。井口などは、つい吹き出してしまったという感じで口を押さえていたりもしていたほどだったのだ。三人の笑顔はまさに普段着どおりで、とても賞金王決定戦ファイナルの日の光景だとは思われないような時間を過ごしていたのである。

_u4w6087  今朝のピットで、この三人に続いて姿を見たのは三嶌誠司だった。それは1R後のことだったので、それまでどこで何をしていたのかはわからなかったが、まずはモーターを外した状態でひっくり返してあったボートを木村光宏に手伝ってもらって元に戻すと、1Rに出走していた烏野賢太(1Rで勝利)のモーター吊りを、走りながら手伝った。
 その後、インタビューなどを受けたあとに重成一人に手伝ってもらって自分のモーターをボートに取り付けていると、傍にいた田村隆信もそれを手伝った。
 そのときの三嶌は、「ありがとうございました!」と大きな声を発して、シラケンこと白石健にも負けないくらい折り目正しく、田村に頭を下げていたのだから、モーター同様、本人も“ご機嫌な状態”にあるようだった。
 この場面に限らず、「ラッキーボーイ」を自認する男の表情は、いつ見かけても、とても明るいものになっていたのだ。

_u4w6113  2Rが始まろうとしていた時点で、ピット内で見かけられないままでいたのは兵庫コンビの吉川元浩と魚谷智之だった。
 2Rには同県の山本隆幸が出走するのでレース後の手伝いに出てくるだろうと考えていたが、それについてはやはり予想どおりだった。ただ、二人並んで出てくるのではないかという予想は外れて、別々に出てきたので、同じ場所で過ごしていたわけではなかったのだろう。
 まず魚谷が早めにボートリフトのほうへと一人で出てきたが、その表情はすっきりした感じになっていた。その後、シラケンと話をしながら引き上げの作業を進めているときも笑顔は絶えなかったので、落ち着いた精神状態でいられているようだった。

_u4w6118  一方の吉川は、松井とともに控室のほうから出てきている。朝のインタビューでも「今のところ、緊張は大丈夫」と話していたように、その様子は普段と変わらないように見えたものだった。
 昨日の自分自身とも似たレースぶりで、6号艇で2Rを勝った山本に対しては(昨日の吉川は5号艇6コース)、“やったな”という感じで笑いながら声をかけていったが、その笑顔は、吉川らしいキュートなものだった。
 その後は、魚谷、吉川ともに控室のほうへと引き上げていったので、とりあえず慌てて行なう作業はない状態になっているのだろう。

 ファイナルに進出する6人それぞれの表情とその動きを見ていると、6人全員を応援したいと気持ちも強くなりすぎて、困ってしまうほどだ。
 刻々と「その時」は近づいている。
 これからピット内の空気は、緊張で張り詰めていくことだろう……。
(PHOTO/池上一摩 TEXT/内池久貴)


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