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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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競艇の鬼たち――決定戦2日目後半のピット

「うわあぁぁ!」。
 11レースの進入がもつれたとき、選手控室で山本隆幸が悲鳴を上げていた。スタート展示のときからそうだったが、厳しすぎる進入争いになり、結局、6号艇から前付けにいった三嶌誠司は、6コースからのスタートになっている。そして、レースでも三嶌は魚谷智之との厳しすぎる3番手争いを続けて、3着をもぎ取ったのだから、見ていてしびれさせられたものである。

_u4w3789  このレースを制したのは吉川元浩だったのだから、今の吉川は本当に「いい流れ」に乗っている。レース後、手伝いに出てきた鎌田義は「手本、見せてもろうた。言うたとおりできとるわ」と手放しで賞賛していたように、トライアルの1号艇という緊張の舞台で、吉川は文句のつけようのないレースをしてみせたのだから、凄いことだ。
 TVインタビューの際、吉川は「いい集中力でいけてると思います」と話していたが、ピットにおける様子を見ていても、それが事実であるのはよくわかる。
 午後のスタート特訓のあと、待機ピットで魚谷と並んで作業をするようなかたちになっても、互いに声を掛け合うこともなく、それぞれに自分の仕事を続けていたのだ。魚谷ももちろん、いい集中力を保てている選手の一人だが、表情や動きのバランスを考えると、吉川は本当にいい状態にあるように思う。
 付け加えておけば、レースを制したあとも吉川は「ペラの森」の端っこでプロペラの微調整も行なっていたのである

_u4w3782  このレースで2着に入った田中信一郎もまた、「雰囲気の良さ」では抜けている感触が伝わってくる選手である。
 ピットでどんなふうに過ごしているかがいちばんわかりやすい、屋外のペラの森で作業をしている時間が長いため、そんな印象を受けやすいこともあるのだろうが、これまで以上に、「いかにも信一郎らしい笑顔」を爆発させている場面を見かけることが増えている(今節は上瀧和則と話しているところをよく見かける)。それでいながら、作業をしている時間はよく集中できているのだから、昨日から書いているようにメリハリがきいているのだ。
 レース後には、2着という結果にある程度は納得しているような表情で金子良昭と話していたが、その後に行なわれた共同会見では「首の皮一枚、つながりましたね」と、自分の置かれている立場も、冷静に把握していた。足に関しては、「いいのは乗り心地だけ」と発言しているが、明日からさらに調整していくとも言っている。
 明日は、今日と同じく2号艇になるが、「今年1年の集大成を見せるためにもなんとかしたいんで、がんばりたいと思います」「歯を食いしばってがんばります」と会見を締めくくっているので、その言葉を信じたい。

 この記事の冒頭でも名前を出している三嶌は、展示ピットにボートを着ける間際まで作業をしていた。
 午後の三嶌も、午前中と変わらず、整備室にある「ペラの大奥」の手前でペラ叩きをしている時間が長かった。足については「出てる自信がある」と言っているので、そうして、さらなる上積みか、微妙なマイナス面の修正を狙っているのだろう。
「ここ(福岡)は侵入が難しい」ともコメントしているが、明日は2号艇であるうえに、「スタートを決めたい」とも言っている。
 ファイナル進出のため、明日も“闘魂を注入”したままの三嶌が見られるのは間違いない。

_u4w3408_2  また、レース後では、三嶌と死闘を演じていた魚谷智之がかなり悔しそうな表情をしていたように見えたのが印象的だった。
 前検からその足を立て直してみせた魚谷もまた、三嶌と変わらぬほどの闘魂が注入されているのに違いない。装着場で自分のプロペラを見ているときの目つきなども、怖いほどのものになっていたのだ。
 賞金王決定戦という特別な舞台であることを考えれば、それも当然のことだといえるのかもしれないが、選手たちの集中力はそれほど研ぎ澄まされた状態にあるわけなのだ。
 足については「競った感じでも悪くない」と話しているし、明日も熱いレースを見せてくれるはずである。

_u4w3755  12Rを勝ったのは湯川浩司で、2着には井口佳典が入ったのだから、85期銀河系軍団の勢いはとどまるところを知らない!

 今日の湯川は、あいかわらずマイペースで時間を過ごしているように見えたものだ。プロペラ調整などの作業はしていたが、その時間はそれほど長いものではなかったし、田中に声をかけられたときには、スキップするようにして、田中の傍に寄っていく場面なども見かけられている。
 勝ったレース後にしても、昨日にくらべれば落ち着いているようで、笑顔を爆発しているところなどは確認できなかった。
 また、その後の枠番抽選で“まさかの3走連続となる1号艇”を引き当てたときにも、「あっ」と、ひと言だけ発して、無表情のまま、そのくじを係りの人間に差し出したというのである。共同会見においても、その落ち着きぶりは逆に、ちょっとおかしいのではないのかとも思われる部分があったほどだった。
 今の湯川にとって怖いのは、3日連続となる「賞金王トライアル1号艇」という立場を背負ったことで、どこかで緊張の糸がプツンと切れてしまわないか、ということだけだろう。それさえなかったならば、このまま頂点まで突っ走っていく可能性は高いはずである。

_u4w3869  井口にしても、レース前の様子やレース後の言葉などから判断する限り、「落ち着きを伴った集中」がよく保てているようだった。
 ひとつだけ気になったのは、9R後のスタート特訓のあと、急にちょっと焦っているような表情となり、小走りで無人となっていた時間帯のペラの森に行き、ペラ調整をしていた場面を見たことだった。
 レース後の共同会見では「今日はプロペラのミスで、ちょっと回ってなかったです」と話していたので、それに気づいたのがこのときだったのだと考えられる。
 このときのペラ調整によって井口は、それが修正できたと判断していたのか、あるいは、修正しきれてはいなくてもその段階ではそれで納得しようと考えたのか……。どちらなのかはわからないが、その後はレースまで落ち着いて過ごしていたのだから、それもまた凄いことである。

_u4w3799  12Rの出走した選手は、6着の高橋勲も含めて、どの選手も「いい気配」を漂わせてレースに臨んでいたが、そのなかでももっとも震えさせられたのが、4着の服部幸男だ。

 昨日のレースでプロペラを壊したという服部は、今日は朝からペラの森での作業をしていたが、試運転やスタート特訓に出るときなどを除けば、「ほとんど一日中」というくらい、同じ場所に座って、ペラと向かい合っていたのである。

_u4w3377  それも、10Rが終わって、12R出走選手が続々と展示ピットにボートを着けていく時間になっても、まったく動じる様子もなく、それを続けていたのだ。このときの服部は、焦った様子もまるでなく、哲人の佇まいで作業をしていた。
 ようやくその場から腰を上げたのは、3時30分頃のことだったが、そこからもなお慌てることはなく、待機ピットからボートを出したあと、その周辺をひと流しすると、もう一度、待機ピットに戻ってきている。そして、しばらく回転数を確かめてから再度、水面に飛び出していき、状態を再確認するように大回りしながら、ようやく展示ピットにボートを移したのである。
 その一連の動作と、その際の服部の表情を見ていたときには、大げさではなく鳥肌が立ってきたほどだった。レース後の服部は、ペラを換えたことで「1回戦よりも感触が良くなった」と言っているのだから、凄すぎる!!
 哲人の佇まいをした競艇の鬼である。
 今日の結果のためにファイナル進出は絶望的になったが、この後もこのペラを煮詰めていくようにもコメントしている。明日以降の服部も競艇の鬼であり続けてくれるわけなのだから、それを考えただけでも嬉しくなってくる。
 ……そして、今の福岡競艇場には、服部のほかにも、鬼たちはいるのだ。
(PHOTO/池上一摩 TEXT/内池久貴)


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『しげ爺の賞金王決定戦予想(5日目)』 2007/12/22 【しげ爺の競艇予想】
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