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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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気になる女たち――初日後半のピット

2008_0304_0132  魚谷香織が転覆してしまった6Rでは、“艇界の逸材”平山智加が女子王座デビューを果たしている。
 このレースの勝者は角ひとみで、平山は3着だったが、レース後の平山は、同県(香川)の先輩である小松原恵美に対して、手振りを加えながら、どんなレースだったかを説明していた。その様子を傍目で見ていると、どちらが先輩なのかもわからない感じがしたのだから、平山はすでに底知れぬ風格を備えているのだと言えるのかもしれない。
 もちろんそれは、平山が先輩に対して不遜な態度をとっていることではまったくなく、物怖じするような部分は少しも持たずに接していたということだ。その後、山川美由紀や柳澤千春といった大先輩2人に対しても、レース振りを報告しながら、返された言葉に対しては、「はい!」「はい!」と真剣な表情で返事をしていた。そんな様子を見ていると、平山が香川支部の期待を背負う存在になっているのも確かだろうと思われた。
 その後、整備をしている平山に対して、「伸びは良さそうですね」と声を掛けてみると、「伸びは良さそうだけど、乗れてないのでチルトを下げます」とのことだった。
「今節は全部、ダッシュで行きますか?」とも訊いてみると、「はい、ダッシュから行きます!」とのことだったので、新鋭女子リーガーらしい思い切りのいいレースを期待したい。

2008_0304_0196  午後のピットでよく目についた選手としては、海野ゆかりの名前が挙げられる。本日の海野は1Rの1回乗りだったが(5着)、レース後すぐに整備作業を開始して、午後になっても試運転や調整作業などを繰り返していたのだ。
 そうした作業の合間には、ピット内を走っているところも何度か見かけられたので、時間を惜しんで作業に励んでいるその姿勢はどこまでも前向きだった。
 もちろん、現実としては、足に納得がいっていないからこその行動と受け取ることもできるだろうが、笑顔をはじけさせていることも多かったように、こと「雰囲気の良さ」でいえば、群を抜いていた。
 不思議なことにも、明日もまた1Rの1回乗りで(「1回乗りの組み合わせパターン」については、モーター抽選段階で決定している。ただし、何レースに乗るのかはまた別)、それも1号艇! 格闘技やプロレスなどでもオープニングバトルは重要な意味を持っているが、今節の女子王座においても“オープニングレース”から目が離せない日が続いているのだ。

2008_0304_0223 目が離せないといえば、宇野弥生である。
 昨年の女子王座で見ていたときから、「競艇選手としてはかなり珍しいタイプだな」とは感じていたが、正直にいえば、それほど気になるタイプではなかった。もっと正直にいえば、ビジュアル的にいっても、個人的にはそれほどタイプ(好み)ではなかったということだ。
 それがいったい、どうしたことなのだろうか……。
 1年の歳月はここまで、人を変えるものなのか? 間もなく22歳になる彼女が進化したのか(宇野弥生の誕生日は今節4日目の3月7日)、昨年、無事40歳となった不惑の私の好みが進化したのか……、どちらなのかはわからない。しかし、今年、再び目にした宇野はどうにもこうにも気になる存在になっていたのだ。黒須田守にとっての山崎智也のような状態といえばいいのだろうか。要するに、一言でいえば「気になる弥生」なのである。
 その“気になる弥生情報”を記しておけば、午前中には「メイド喫茶」ジャンパーを着用したにもかかわらず、午後にふと気がつけば、「ガチャピン」ジャンパーに着替えていたのだから、たまらない!!
 そして、午後の彼女は、マスクをした真剣な表情で、モーター本体を割って、12R開始間際までモーターを触っていたのだから、その姿勢も真摯そのものだった(そしてなぜだか、モーター整備をしている姿までもが色っぽく見える)。本日は5Rの1回乗り6着で、足については「良くない」とコメントしていた彼女だが、この整備の成果がいい方向に出てくることを期待したい。

2008_0304_0688 作業に熱心なのは、宇野に限ったことでないのは当然で、かなり遅い時間帯まで整備室内のペラ作業場は満員御礼状態で、12R締切直前になっても、その場で作業をしている選手の数は10人を超えていた。季節の変わり目となる時期だけに、この作業の成否が大きなカギを握ってくることだろう。
 もちろん、ここで慌てる必要を感じず、動じることなく過ごしている選手のほうが、「ペラの当たり」を得られているという見方もできるわけなので、そのあたりの判断は難しい。
 また、多くの選手がペラ調整をしているなかで、最若手である平山などは、夕暮れが近づいている時間帯のピット内を右へ左へと駆け回り、各ボートに吸水用のスポンジやナンバープレートなどを配り回っていたものだった。
 この作業は、平山のほかに土屋千明、魚谷香織、金田幸子などもしていたし(写真は土屋)、たとえ「やりたい自分の作業」があったとしても、必ずしもそれができるわけではないのも若手にとってはつらいところだ。
 また、前半で自分のレースを終えていた柳澤千春や五反田忍(柳澤は1R&5Rの2回乗りで、五反田は2Rの1回乗り)は、試運転や待機ピットでの作業をその後も熱心に続けており、ボートを引き上げてきたのは12Rの締切が迫ってきていた時間だったのだから、こちらもすごい!
 思惑通りのことにしろ、そうではないにしろ、選手それぞれに、様々な時間帯を過ごしていたわけである。

2008_0304_0344  12Rのドリーム戦が近づいてきていた時間には、厳しい顔つきに表情を一変させていた日高逸子と、何かを考え込んでいるような顔をしてピットを歩いていた淺田千亜希を見かけている。
 どちらの顔つきにしても、「らしいな」と感じられるものだったが、このドリーム戦を淺田が制したことにより、2年前の浜名湖・女子王座優勝戦のあとに、2着に敗れた淺田が人目も憚らずに涙していた場面を思い出したものだった。女子王座に懸ける想いはそれだけ強いということなのだろう。今日のレース後の淺田は、引き締まった表情を崩さず、ゆっくりとした足取りで控室のほうへと歩いていったのが印象的だった。
 その少し後方では、前方の淺田が目に入らないように悔しそうな顔をした横西奏恵が歩いていた。横西は淺田が敗れた浜名湖・女子王座の覇者であり、このドリーム戦では1号艇で3着に敗れている(ドリーム戦の2着は日高)。
 そして、前を歩く淺田に追いついたときには、横西のほうから表情を崩して話しかけたのだと思われる。私は少し離れた場所から見ていたが、振り返った淺田もそのときはじめて笑みを見せていたのだ。
 やはり、思い出される2年前のピットの光景――。今年、最後に笑うのは誰で、最後に泣くのは誰なのか? 現時点ではとても予想はつかないが、今日の12Rの豪快なレースぶりによって、淺田が力強い第一歩を踏み出すことができたのは間違いない。
(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/内池久貴)


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