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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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42期!――THEピット

 名人戦の選手たちはみな優しい。
 ……なんて書くと、SGの選手たちが意地悪みたいに聞こえるかもしれないが、そうではなくて、長年培ってきたキャリアや重ねてきた年輪がいい具合に肩の力を抜いているのか、基本的に空気が柔らかいのである。このメンバーでSGを戦うことになれば、目がもっとつり上がるのかもしれないが、年に一度の同窓会的なシリーズであるということも、選手たちの気持ちに穏やかな風を吹き込むのだろう。
2008_0417_0051   そんななか、ほとんど笑顔も見かけず、厳しい表情しかお目にかかっていないのが、村上信二である。朝などに挨拶しても、一瞥して会釈するのみ。SGの、特に優勝戦の朝などにはよく遭遇する場面だが、名人戦ではおおよそ村上だけが作り出す瞬間である。そして、こうした瞬間が、僕は好きだったりする。ちょっとビビるけどね。
 12R、6号艇の村上は、今シリーズ初の大敗を喫した。ただでさえヒットマンのような目つきの村上だから、ピリピリした胸の内がハッキリわかるほどに、不機嫌な表情でピットに戻ってくる。うーん、怖い。怖いが、ついつい目が行ってしまったりもして、目が合ったらどうしよう……などとドキドキしている自分がいたりする。気温が下がろうともすべてが暖かな空気が醸し出されている名人戦のピットにあって、氷の剣のように研ぎ澄まされた気合を発散する男。彼のような存在が、シリーズに活力を与えている。
 村上信二、42期。3日目を終えて、準優当確。
 …………そうか、大敗でも当確だったのだ、村上は。あの表情からはとてもそうは見えなかったが。つまり、乗れているし、アシも出ている。

2008_0417_0042  12Rを勝ったのは、荘林幸輝だった。村上とは同期生である。1号艇と6号艇に42期生が入り、他艇をサンドイッチしていたのだが、着順も1着と6着で、明暗が分かれてしまった。
 荘林は、話してみれば非常に優しい人なのだが、普段のピットでの様子はあくまでもクール。表情が大きく変わるところはめったにお目にかかれないし、それはレース後も同じ。しかも結果にすら左右されることがない。12R後だって、荘林はあくまで荘林であって、そりゃあ僕が見ていなかったところで笑顔を見せていた可能性はあるけれども、ボートリフトでも、カポック脱ぎ場でも、ついに相好を崩しているところは見ることができなかった。淡々としていて、冷静なのだ。勝利選手インタビューのために、送り迎えの自動車に乗り込む際にも、やっぱり淡々。改めて、驚くしかないのであった。
 こういう人だから、実はピットでは存在を見落としがちにもなってしまう。成績も、そうだ。気づけば予選3位。去年の優勝戦1号艇はダテじゃないのだ。今年も、同じ環境が手の届くところに来た。明日も、淡々としながら、緩めない走りを見せるのだろう。
 荘林幸輝、42期。3日目を終えて、準優当確。

2008_0417_0380  予選トップに立ったのは、地元の田中伸二である。強烈な伸びを見せていて、ドリーム5着以外はほぼ完璧な戦績。走り慣れた水面での戦いとはいえ、たいしたものである。
 この田中も、荘林同様、ピットではそれほど目立つ存在ではない。去年、おととしの名人戦でも、実はそんなことを感じており、ピット記事でも彼に触れた機会は少なかったはずだ。本当に申し訳ないのだけれど、やはり派手な存在に目が行きがちになるもので、特に名人戦では強烈な個性がたくさんあるために、田中のようなタイプはつい見落としてしまったりするものだ。
 田中のようなタイプとは、まず「ルックスはめちゃくちゃ若い」。なんか、万年青年という感じなのだ。同じようなタイプには藤井定美などがいて、藤井もあまりピット記事には登場してもらっていないと思う(ごめんなさい)。やっぱり、富田章とか原由樹夫とかのほうが目立つんだよなあ(ポイントはヒゲか?)。
 そのうえ田中は、非常に好青年に見える、人のよさそうな顔つきなのだ。やっぱり、井川正人とか村田瑞穂とかの迫力ある顔つきのほうが目立ちますよね(だから、ヒゲか?)。
 洞察力が足りないというのか、こういうタイプに関しては、好成績を確認してから気にするようになってしまう。まったくもってお恥ずかしい限りだが、明日からは若くて好青年という以外の部分にも注目することになるだろう。
 田中伸二、42期。3日目を終えて、準優当確。

2008_0417_0286  若いルックスといえば、吉田稔も同じだ。個人的に、初めて見た(テレビでだけど)賞金王決定戦に吉田は出ていて、だから名人戦に出ていることも不思議で仕方がないのだが、ピットで挨拶を交わしたりすると、その若々しさにやっぱり不思議な気分になってしまう。
 吉田は、ペラにしても本体にしても、けっこう粘って調整をしている、という印象がある。わりと遅めの時間まで、整備室で、ペラの神殿で、見かけるように思えるのだ。わりと物静かな雰囲気でいることが多いが、しかし作業に集中しているときの目つきは、なかなかに鋭い。
 今日は、最後に控室に戻っていくのを見かけたのが、12R直前。作業を終わらせた最終組の一人だった。今節は中間着が多く、決して目立った成績ではないが、こういうタイプが怖い、と思う。
 吉田稔、42期。3日目を終えて、予選19位。4日目、3・3着の勝負駆け。

2008_0417_0209  一方、村上信二系のド迫力は、足立保孝だ。いや、村上に比べれば、笑顔でいるところはずっと多く見かけていて、その表情は優しい。だが、たとえばレースに向かう直前、あるいはペラ神殿でペラと向き合っているとき、その目つきはただただ鋭い。黙っていれば、かなりの迫力がある、男っぽい男なのだ。
 今日の足立は、1着3着。上々の成績にまとめて、昨日までの遅れを取り返している。しかし、「アシはまったくダメ」とのことで、喜びよりもむしろ、追い詰められたかのような表情でいることが多かった。吉田同様、かなり遅くまで作業をしていた一人だが、控室に戻る姿には、うかつには近寄れそうにない、トゲトゲしい雰囲気があった。すでに、明日への勝負駆けに思いが飛んでいるのかもしれない。
 足立保孝、42期。3日目を終えて、予選25位。4日目、1着の勝負駆け。

 花の42期、という。強い選手を数多く輩出した、レベルの高い世代だ。今で言う、銀河系軍団のようなものである。残念ながら、いまだSG覇者を出してはいないのだが、もし今のように年間SGが8シリーズもある時代にデビューしていれば、複数のウィナーを出していただろう。今節、6人が参戦、その出場選手の多さこそ、いかにハイレベルな選手がそろっていたかの証であろう。しかも、3人が準優当確。やはり、強い。当確ではない吉田も足立も準優への可能性が残されているのだから、優勝戦にも複数が名を連ねる可能性がある。
2008_0417_0432  たった一人、終戦を迎えてしまった42期生、久間繁も、決して緩めることはないだろう。今日の11Rは、関忠志、原由樹夫という二人のイン屋を向こうに回して、きっちりインを死守した。このガッツが、明日からにつながるはずである。
 若い世代のファンには、花の42期、なんてピンと来ないかもしれない。だが、この6人には、一時代を築かんとSGの中心で戦っていたプライドがあるし、名人戦でも主役を奪わんとする気概がある。彼らの走りを見ることが、競艇の深みを知ることにきっとつながる。明日からも42期を刮目せよ!なのだ。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田守)


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