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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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話す!――THEピット

 ペラの神殿の右側には係留所に降りていく橋があって、その周辺は堤防のようになっている。ここは、水面も見え、また対岸のビジョンもよく見えるので、ピット取材中のレース観戦の定位置である。2Rも、この位置からビジョンを見ていて、吉田重義が差し抜けるのを確認。2番手はどうやら、松野京吾のようだ。
「すいません!」
2008_0417_0194  橋の入り口あたりから、突如声がかかった。声の方向を見ると、そこには山田省二。そういえば、最新兵である山田はここでレースを見ていることも多いことを思い出した。まったく気づいていなかったが、レースが始まった頃にやって来ていたのだろう。
 その山田から声がかかって、僕はとっさに「先輩の鈴木幸夫に関することかな?」と声をかけてきた理由を推察した。しかし、違った。
「松野さん、2着なら準優に行けますかね?」
 松野? 支部は違うし、期はもちろん違う。山田はなんてったって、日高逸子や熊谷直樹と同期の56期なのだ。だというのに、なぜに松野を気にしているのだ?
「おととい、僕が6着にさせちゃいましたからね。松野さんが予選落ちしたら、胸が痛い(笑)」
 2日目に対戦した松野と山田は、5コースの山田がマクって1着。松野はすぐ隣で山田の引き波を浴びなければならない4コースだった。なるほど。山田はこのレースで不良航法をとられている。それを気にしていたのですね、山田選手。いい人だ。でも……ちょっと優しすぎるかもしれない、と思った。もちろん、それが山田省二のいいところ、なのだろう。
 松野が2着でゴールするのを見届けた山田は、力強く「ヨシッ!」と叫んで、ボートリフトへと駆け出した。山田は2着条件の勝負駆け。この好漢にも、予選を突破してもらいたい!

2008_0417_0411  その2R終了後、カポック脱ぎ場でいちばんテンションが高かったのが、松野京吾だった。まず、3着だった佐藤勝生をつかまえる。
「勝ちゃん、スタートで落とした? 落としてなかったら、勝ちゃんが完全にマクり切ってたよぉぉぉぉ! 勝ちゃんがずーっと前に見えてたもん!」
 6コースから佐藤はトップスタートを切っていたのだが、これがコンマ21。強い追い風が吹いて、どの選手もスタート控え気味だったのだ。だから、「勝ちゃん、落としてなければ……」となるわけだ。松野はその後も原義昭や吉田重義をつかまえて、「勝ちゃん、ずーっと前にいたもん」と繰り返していた。佐藤のひとつ内、5コースだった片山晃には、「勝ちゃん、行ってたよね! 落としてなかったら行ってたよね!」と熱い口調で確認。ま、片山は「かぶってたからわからなかった」と答えてたんですが(笑)。まったくもって、松野は何を興奮していたんでしょうか、他人のことで(笑)。でも、これが松野京吾のいいところ、なのでしょうね。もちろん、2着条件だった勝負駆けをクリアしたことの高揚感もあったんだろうけど。ともかく、微笑ましいシーンでありました。

2008_0416_0002  3R前、ペラの神殿のほうに言ってみると、荘林幸輝と藤井泰治がベンチで真剣に討論をしていた。藤井といえば、プロペラ博士とも言われるペラ巧者。支部や期を超えて、いろいろな選手が藤井に声をかけているのを目撃している。荘林もそういうことなのだろう……と思いきや、荘林が自分のペラの翼の部分を押さえて、「このへんを叩くと…………」と言っていた。いや、質問していたのかな? 僕には、荘林のほうがアドバイスしているように見えたのだけれども……自信がない。ペラの神殿は常にトンカントンカンと金属音が響いていて、装着場ではほとんど声が聞き取れないし、多少聞こえてきたとしても、あまりに専門的な話をしているから理解するのが難しいのだ。
2008_0417_0406  そのすぐ隣では、新良一規と木下頼房がペラについて話している。これは、木下が自分のペラを手に新良に話しかけていったあと、新良が親身に何かを説明しだしたから、木下のほうがアドバイスを受けるべく相談したもので間違いないだろう。この組み合わせも、期も支部もまるで違うが、ようするにこのピットではそんなことを気にする必要はないのだろう。
 新良は、木下に対して実に懇切丁寧に説明しているようで、木下はときどき自分のペラの翼面を指差して質問らしきことをしている。新良の説明はさらに熱を帯びていって、松野が2Rのエンジン吊りのお礼を言ったときも、「はいー」と気のない返事をしている。それほど、木下へのアドバイスを熱心にしていたのである。そこに吉本正昭がやって来て、二人の会話を熱心に聞き始めた。うーん、これは新良ペラ教室、だろうか。
「こうなると、回りすぎてしまって…………」
 そんな声が聞こえてきたが、もちろん僕にはそれ以上は理解できませんでした、はい。

2008_0418_0141  3Rも堤防で観戦し、エンジン吊りをざっと眺めてカポック置き場へ。1着の竹内知樹がニッコニコで戻ってきて、心が和む。また、原田順一の憤懣やる方ないという表情には心が痛む。2Rと違って、みな淡々とレース後のルーティンをこなすのみ。久間繁が村田瑞穂に「いいターンしてたよねえ」と声をかけたくらいだろうか。ムラミーは、ド迫力の顔を崩してニコーッと笑ったので、それがなんだかものすごく嬉しかったけど。だからこそ、竹内のニコニコ顔が印象に残った。勝利選手インタビューに向かうため、自動車に乗り込む竹内は、まったく聞き取れなかったけど、冗談らしきことを言って、運転手さんを爆笑(苦笑だったという説もあり)させていた。この香川支部長の笑顔には、本当に癒されるのであります。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田守)


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