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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――ベテランの春

_u4w7080  いっちに、さんっし。いっちに、さんっし。ボートリフト脇の鉄梯子にぶら下がって、田中伸二が懸垂を始めた。いや、懸垂というよりは、ぶら下がっているだけか。着水するためにリフトに艇を乗せたが、展示航走中につきリフトは動かせない。待機状態になった田中は、ヒマを持て余した感じでいっちに、さんっし。穏やかな気候が、それをほのぼのとした光景に見せていた。
_u4w7901  同様に、岡本慎治も待機状態。岡本のほうは、ウルトラマッチョな艇運係さんと談笑したり、柱にもたれかかってぼんやり水面を眺めたりと、待機時間を楽しんでいる感じ。人生の達人とは、時間を有効に使える人。年輪が刻まれた岡本の顔つきは、シブい。
 やがて展示が終わり、「試運転開始です」のアナウンスが流れる。まだぶら下がっていた田中に、「田中さん、行くよ~」と声をかけて、岡本が艇に乗り込んだ。田中は、おっ、時間か、と岡本の声に反応して、艇に飛び乗った。
 着水すると、二人は穏やか~~に係留所へと向かっていった。

2009_0318_0227  2R、長岡茂一が山口剛の猛攻をしのいで1着。多摩川の主に、ようやく1着が出たことで本人はホッとした様子だったし、周囲はざわめき立って喜びをあらわにしていた。
2009_0318_0295  最初に歩み寄ったのは、平石和男だった。嬉しそうに顔をほころばせて、やったね、とばかりに視線を送る。おそらくヘルメットの奥で視線を返しただろう長岡に、平石はさらににこにこと笑顔を向けていた。
2009_0318_0833  笑顔はなくとも嬉しそうだったのは、三角哲男だ。男!と言いたくなるほどの逞しい表情で、長岡を出迎えて勝利を祝福していた。濱野谷憲吾が先頭に立って長岡の艇を運んでいる間も、三角は時折振り返って長岡に視線を送る。自身の成績はもうひとつ振るわないが、仲間の勝利はやっぱり嬉しいものだ。
_u4w7655  その輪に、さらに金子良昭が加わった。三角は同支部だし、平石は同地区。他地区の先輩からも祝福される人徳が、長岡にはあるということなのだろう。金子が他選手を祝福するところは何度か見かけたことがある。たいがい、大声で冗談っぽく称えた後に、ガハハハハハと大笑い。もちろん、長岡に対しても同じだった。ガハハハハ! ピットに響き渡る、優しさをたたえた豪快な笑い声。そんなときの金子の笑顔が、僕は大好きである。

2009_0318_0235  後ほど別記事としてアップするが、1Rで市橋卓士がSG初1着。水神祭が行なわれている。これがまた、あまりに豪快に放り投げられたため、水しぶきが大きく大きく跳ね上がり、係留所にあった島川光男のボートに届くほどだった。ボートのヘリに、係留したままだったらかかるはずのない水がしっかりとかかっていた。数分後、島川がペラ装着のために係留所にあらわれる。謎の水浸しになっているボートのヘリを見て、島川はどんなリアクションを……と思ったら、一瞥した程度で淡々と作業を始めるのだった。さすがベテラン。その程度のことでは動じないのである。
 ペラをつけ終えると、島川はやはり係留所にいた金子のもとへ。この二人、たしか……同期だ! 54期生の二人が、時間を超えてSGのピットで笑顔を交わし合う。二人の顔に、きらきらと春の陽光が降り注いでいた。

2009_0317_1243  とまあ、ベテランにばかり目が行った朝のピットなのだが、残念な出来事もあった。濱野谷憲吾が5Rで転覆。振り込んでの転覆だから、選手責任。事実上、濱野谷の地元総理杯は終わった。救助艇の上からスタンドに向けて頭を下げ続ける濱野谷が痛々しかった。東京支部の面々には、エースの分までの健闘を! 濱野谷も残り3日を全力で!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)


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