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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――ピットの高さ

2009_0318_0022  装着場に面した係留所は、ボートリフトをはさんで2カ所に分かれている。右手側に10~15艇分、左手側に5~6艇分が係留でき、言うまでもなく、右手側にズラリと艇が並んでいる時間帯が多い。左手側は、すぐ裏手に整備室やペラ室があり、調整→試運転を繰り返す場合には、こちらのほうが便利そうだ。別に早い者勝ちとかいうことではないだろうが、朝の時間帯にはこちらは完全に満艇状態であった。
 11R前。右手側に係留していた飯山泰が、なぜかボートを左手側に移動させた。なぜ? 移動した後は、モーターを始動させて回転数をチェックしている。それって、右手側でもできたんじゃないの? なぜわざわざ左手側に移ったの?
 というわけで聞いてみた。
「ピット(係留所)の高さが違うんですよ。今日は朝、こっち(左手側)で調整をしたんですね。だから、もう1回同じピット(係留所)で調整をしようと思って」
 そう聞いて、さっそく両方の係留所を見比べたが、たしかに右手のほうがわずかに高いか、と思える程度で、同じ高さだと言われたって信じ込むほど格段に違うわけではない。知らなければ高さが違うなんて発送すら浮かんでこないだろう。もちろん、高さの違いが重要なのは理解できる。プロペラの水面からの深さの違いで回転数が変わってくるからだ。しかし、素人目には「そんなに気にするほどの高さか?」としか感じることができない。
 競艇選手は、そんなわずかな差を感じ取って戦っている、のである。この微細さが、プロフェッショナルの証なのだ。SGとは、そんな小さな違いすら見落とすことが許されない、激烈な戦いなのである。

2009_0318_0622   その飯山は、表情がどうにも険しい。思うようにモーターが噴いてくれないようだ。整備室の前で、飯山を中心にプチ会議が始まった。参加していたのは、試運転を終えてモーターを格納しようとしていた木村光宏、その直前に足合わせをしていたらしい野長瀬正孝、石川真二。2009_0318_0631 野長瀬と石川が東海地区同士、というだけの、関係性の決して濃いとはいえない4人が、真剣な表情で情報を与え合う。やがて飯山の表情には笑みも浮かんでいたから、少しは気分を軽くさせる会談ではあったのだろう。それにしても、どんなSGでも、遅い時間帯まで試運転している木村の姿を見かけることになるのだな。この人の執念は、誰もが見習うべきものであろう。
2009_0318_0555  ちなみに、中尾カメラマン情報によると、石川はペラを合わせることに成功したのだそうだ。だからだろう、石川の表情は比較的明るく映る。花粉症ということで大きなマスクをしており、目もとしか見えないけれども、穏やかな目つきから気分の良さが伝わってくるのである。
2009_0318_0328 「でも、石川さんと市川哲也、遠くから見ると区別つかないよね」
 石川と仲のいい中尾カメラマンがそう言って笑う。ちょうど石川と市川がすれ違うところで、市川もどでかいマスクをしているから、たしかに二人の姿は見分けがつけづらいな。SGジャンパーの背中のローマ字もほとんど同じだし。僕は幸いにも無縁なのだが、この時期、花粉症の皆さんは大変ですよね。女子王座でもマスクをしている選手は何人もいたように、アレルギーは職業を差別しない。微妙な調整を強いられ、レースではマスクなどするわけにはいかない競艇選手には、本当に強大な敵であろう。
2009_0318_0663  今節も、石川、市川のほかに、市橋卓士、田中伸二、石田政吾、菊地孝平、平尾崇典、田口節子、木村光宏が、ざっと思い出せるマスクマンたち。花粉に負けず頑張れ! と応援したくなってくる。花粉症の苦しさも知らないくせに気楽なもんだ、と言われるかもしれないけど。

_u4w7510 それにしても、松井繁の圧倒的オーラは今節もビカビカだ。10R前だったか、整備室の前に突っ立っていたら、目の前を松井が通りかかった。ペラ室から出てきたところだったようだが、そのときの松井の顔は金色に輝いていた。いや、実際は西日が当たっていただけだったのだが、とっさにゴールデンな印象を抱くほどに、松井の顔つきは充実感にあふれていたのである。松井は水面のほうに視線を投げていて、風の状態を確かめたのか、対岸のビジョンを眺めたのか、確かな視線の先は不明だった。ただ言えるのは、そうした目線の流し方が、強烈な風格をたたえていた、ということだ。この人、俺より年下なのになぜこんなたたずまいができるんだろう……と改めて己の小ささと向き合わされる存在感。ま、今さら松井の貫禄なんて語るまでもないんだけど、今日のピットでもっともインパクトがあったのが王者だったということには触れておかねばなるまい。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩=松井  TEXT/黒須田)


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