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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THE ピット――優勝戦。春の魔物と闘った男たち

_mg_8972  空模様もはっきりせずに、時おり小雨もぱらつき、強風は少しもおさまらなかった。
“春の魔物”などは姿を見せず、とにかく無事にレースが行なわることを祈り続けた一日だった。それでも優勝戦の頃には雨はあがり、多少ながらも風がおさまってきていた。
 多摩川のピットでは、2マーク近くでレースが見られる「アリーナ」といえるポジションがあるのだが、レースが始まる頃には、いつものSG優勝戦以上に多くの選手がレース観戦に現われた。木村光宏がひとり少しだけ離れた場所にいたが、濱野谷憲吾などの地元勢、服部幸男、菊地孝平らの静岡勢、松井繁、湯川浩司らの大阪勢……と、挙げていけばキリがないほどの顔が見られた。
 そして迎えた優勝戦。激戦の1マークを抜けたあと、「1コーナーは全部、すばらしかったな」との声が聞こえたのでそちらを向くと、笑顔の松井がいた。そして、その言葉に頷きながら、湯川が「いい足、してましたね」と言葉を返していた。
 そんなレースを制したのは1号艇の池田浩二だ。大勢の選手に迎えられるかたちで、ピットに戻ってきたときは、ボートの上でサッカー選手がゴールのあとに見せるようなマシンガンポーズ! それに続けて、「やったあ!!」と大声をあげて右手を突き上げた。

_u4w0486  レース後の池田は素直に喜びを表現していたが、それだけこの優勝にホッとした部分も大きかったのだろう。表彰式では、「足的にはやばいな、というところはあったんですけど、開き直って、行きました」とも話していたように、足に関していえば、自信を持ってレースに臨めてはいなかったわけである。
 昨日の準優後にも、足に関しては「感じは良くない」「仕上がっていない感じですね」といったニュアンスの言葉を繰り返していたし、今日は、黙々とペラを叩いている姿がよく見かけられたが、それでも納得のいくレベルにはできなかったということだろう。それだけに、ここで久しぶりの「大きな結果」を出せた喜びを素直に爆発させたのは無理もない。その嬉しそうな顔は、見ているこちらの顔もほころばせるようなものだったのだ。
 ……付け加えて書いておけば、池田がウィニングラン用のボートに乗り換えて、ウィニングランに向かったあと、池田のボートに乗って、ボートリフトからボートを揚げておく役目を引き受けた石川真二が、池田のボートの上で右手を突き上げていた姿は、とてもお茶目なものだった。

_mg_5054  朝のリポートでも書いたが、今日一日は、優出選手それぞれが、長い時間、ペラと向き合うことになっていた。
 そのなかでもとくに目立ったのが田村隆信だった。
 朝から休む間もなく、試運転→ペラ調整を延々と繰り返していたのだ。
 3着という結果は、本人にとっては微妙なところというか……、悔しくないはずはない。だが、今年の田村は、昨年とは一味違うということは、この一節でよく確認できた。総理杯優勝戦が終わった時点で、獲得賞金ランキングでも2位につけている。この姿勢を失わない限り、まだまだチャンスはあるだろう。

_mg_5167  レース後は、比較的、サバサバした表情を見せていた選手が多かったが、珍しくそんなふうには見えなかったのが田中信一郎だ。
 最近は、悔しくはずはない結果に終わったレースのあとにも笑顔を見せていることが多かったのだが、こちらが確認した範囲でいえば、レース後の田中に笑顔はなかった。チャンスを逃してしまったという思いがそれだけ強かったのだろう。
 今日の田中は、ペラ調整中心の作業のなかでも、いつもにくらべれば疲れているようにも見えた部分があった。それでも、作業をしているなかでの移動の途中で、艇運係の「超マッスルマンくん」を見かけると(この人は本当にモー、超マッスル! プロレスラーであってもおかしくないほどの体格をしている)、疲れ顔から一転、笑顔になって、彼に向ってマッスルポーズを見せていた!
 そんなお茶目さが見ていて本当に気持ちいい田中には、また、満面の笑みを爆発させてほしいものである。

_u4w0837  展示ピットにボートを着けようとしていたときに、黒須田守を見かけて「ベストパフォーマンス!」と、ひと言で状態を表現した笠原亮――。
 SG優勝戦に初めて臨み、1日休むことなく作業を続けた重成一人に森永淳――。
 この3人にしても、一日を通してベストを尽くしたと言っていいはずだ。この強風の中、SG優勝戦でムチャすぎるスタートは行けないものだし、1マークには展開のアヤもあったのだ。
 重成や森永は、レース後、ホッとした部分もあるような笑みを見せていたが、この経験は必ず今後の糧になる。

_mg_0246  ……多摩川の魔物が今日、牙を剥いたかといえば、微妙なところだ。午前中から心配されていた天候の部分からいえば、最悪のコンディションまではいかずにレースが迎えられたし、選手たちはSG優勝戦にふさわしい好レースを繰り広げてくれたのだ。
 ひとつの戦いが終われば、次の戦いが始まる――。
 表彰式で池田は「次のSG、笹川賞も獲るつもりで走ります」と言葉を締め括ったが、これからまた、誰もがその頂きを目指していくことになるわけだ。

(PHOTO/山田愼二、池上一摩=2枚目、5枚目、6枚目 TEXT/内池久貴)


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