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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――走れ! 勝負駆け

2009_0626_0225  我ながら、最後まで仕事してるとか最後まで走ってるとかそんなん見かけるとすげえすげえと騒ぎまくっていつもいつも木村光宏とか松井繁に頭が下がってばかりでどんなものかあまりに単純じゃないかしかも何回も繰り返すことか、とは思っているのであります。
 しかし、何回も目にしたって、感動するもんは感動する。10R、松井は3着で得点率は6点ちょうど。その時点では18位より下にいたのである。だというのに、レースを終えた松井はモーターもボートも片づけることをせず、試運転のプレートをつけると、水面に飛び出していった。予選落ちしようが、結果的に18位に残ろうが関係ない。弱いと感じた手応えをなんとか納得の域に近づけるため、走らずにはいられない王者なのだ。そうした行動はほぼ見かけられないものだからこそ、そこに王者の理由があると考えるしかない。そして、王者ほどの男がなりふり構わぬ姿勢を見せることに、僕は勝手にわが身を顧みるのである。
2009_0626_0116  松井の緊急試運転にはパートナーがいた。木村光宏である。別にパートナーではない。いつもどおり最後の最後まで試運転をしていただけだ。お互い、たまたまそこに足合わせの相手がいただけである。
_u4w3837  木村の試運転については、12R発売中にいつもと違った光景を目撃した。着替えを終えた三嶌誠司が試運転用係留所まで降りて行って、遠くから木村をずっと見守っていたのである。しゃがみ込んで、姿勢を崩さず、木村と会話を交わすでもなく、ひたすら木村に視線を送っていた三嶌。それは木村が試運転を終えるまで続いて、木村が引き上げると中心になってエンジン吊りを手伝っていた。きっと、三嶌をはじめ、誰もが木村の姿勢を支持している。自分のスタイルとは違っても、その執念を誰もが理解している。

2009_0626_0261  最後まで走っていたのは、原田幸哉もである。ただし、原田はペラを手にピット内を走り回っていた。急ぎの調整でもあるのだろうか、整備室とペラ室の行き来はすべて駆け足。整備室の出入り口からペラ室への出入り口はものの5mほどなのに、原田は走っていた。別に頭が下がったわけじゃないけど、大変だなあと思った。
 12R前、整備室を駆け出た原田はそのまま走ってペラ室へ。ここで、奇跡のようなタイミングの出来事が起こった。ゆっくり歩いてペラ室に入ろうとした平石和男が扉を開けた瞬間、原田がペラ室へ飛び込むようなタイミングになったのだ。つまり、平石が原田のために扉を開けてあげた、という格好になった。右足だったか左足だったかをペラ室に踏み入れようとした瞬間、原田も気づきましたね。「あ、先輩に扉を開けさせたみたいになっちゃってる!」と。原田は足をピタリと止めて、平石に謝った。そして、一歩後ろに下がって、平石に道を開けて、どうぞどうぞと先に行かせようとしたのだった。
2009_0626_1143  ただし、そんなことを気にするような平ちゃんではない。たまたまそういうタイミングになったことは、誰だってわかる。にっこり笑った平ちゃんは、いいよいいよ、先に入りなよ、と原田を促す。好人物の証である。だが、後輩としてはそれもバツが悪い。だから、いえいえ、お先に入ってください、とさらに頭を下げることになる。今日は俺が払っとくよ、そんな悪いですよ、いいよいいよ、ダメダメ割り勘で……とレジ先で財布を出し合っている酔っ払い同士のようなシーンがそこにはあった(違うか)。
 結局、原田が押し切って平石が先に入ることに。平ちゃんは、悪いね、と右手を上げて笑顔のままペラ室へと消えていった。悪いねったって、扉をあけたのはそもそも平ちゃんですけどね。礼節を欠かさないという原田幸哉の人柄も確認できたような気がする。

2009_0626_0337  えー、予選4日目なのに、勝負駆けの話をまったく書いていませんが、劇的な逆転劇がそれほど多くあったわけではない勝負駆け。印象に残ったのは、白井英治の悲しそうな顔だろうか。白井はレース後にボートを降りると、ヘルメットを顔のほうだけ脱いで、頭にぽんと置いておくようなかたちでエンジン吊りなどの作業を行なっている。完全に脱ぐわけではなく、顔だけを露出させるのだ。今日も、11Rを3着で上がってきたあとには同じように顔を出した白井。その顔が、泣いているように見えたのである。
 3着では届かないことを理解していたのだと思う。実際に涙は出ていなかったとはいえ、ハッキリと悔しさにまみれた厳しい顔つきをしていたのだ。それが、なぜか泣き顔に見えた。それほど、白井は結果に対して悔いを抱いていたのである。
 その表情はなかなか変わらなかった。エンジン吊りの間も、キッとまっすぐ先を見据えて、悔しさを隠そうとしないのだ。必死で心の整理をつけているのだろうが、なかなか心のざわめきは収まってくれない。それほどまでに、この敗戦を小さなものと片づけることができなさそうだったわけである。
2009_0626_0716 一方、その白井をマクった飯山泰は、ただただ笑顔だった。SG戦線に定着してきた飯山だが、これが初の予選突破。もしかしたら、これでようやくSGシリーズの仲間の一員になれたと実感したのかもしれない。
 準優進出ということもあり、レース後は報道陣に囲まれていた飯山。その間じゅう、頬は緩んでいた。解放されてモーターやペラを片づけている間も、さすがに笑ってはいないが、気分の良さが伝わってくる明るさが表情にはあった。で、毎度毎度ですが、僕としては当然、こう祝福したくなる。「同郷人として嬉しいです!」。なんたって、長野県出身者初のSG準優なのだ。同じ信州に生まれ育った人間として、僕には思い入れをもつだけの理由がある。飯山もそれを理解してくれてるんですね。祝福の言葉をかけ、いつもいつも同じことばっかり言ってすみません、と言うと、「長野県初のSG準優? アハハハハハハ!」。飯山選手、明日は長野県初のSG優出、って言いに行かせてくださいね。

2009_0626_0382  12R終了後、その飯山が展望番組のインタビューを受けていると、今村豊がそーっと近寄って来た。自身もインタビューを受けるためなのだが、明らかに何かを狙ってる表情(笑)。でも、その瞬間を目撃してやろうと狙っているこちらに気づいたのか、今村さんは特にアクションを起こすことはなかった。でも、抜き足差し足忍び足ふうのステップ、めっちゃかわいかったです。ミスター競艇にそんなこと言うのは失礼だけど。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩=三嶌 TEXT/黒須田)


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コメント

やっと出ました、幸哉くんの姿!ここ最近、不調みたいで…


たとえ準優勝戦に乗れなくとも、一走一走をファンの為に走る幸哉くんの信念をみたような気がした記事でした。ありがとうございますm(__)m

投稿者: 博多っ娘 (2009/06/27 2:50:00)