この特集について
ボートレース特集 > THEピット――10R直前
この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
ライタープロフィール
カテゴリー
関連リンク
競艇サポーターズ
関連書籍

 ボートレース特集

THEピット――10R直前

2009_0720_0681  試運転からいったん係留所に帰投した吉田俊彦が、ボートから降りると猛ダッシュ! 向かった先はボートリフト。足合わせのパートナーだった金子龍介が試運転を終えて、ボートを引き上げていた。吉田はキンリューめがけて全力疾走。そしてボディアターック!……というのはウソで、キンリューのエンジン吊りを手伝ったのだった。時は10R前、すでに装着場は閑散とし始めており、リフトの周囲に選手の姿は見当たらなかった。それを係留所から視認した吉田トシが猛ダッシュ! という次第である。トシは11R発売中にも試運転をしており、陸の上でも水の上でも走りまくっていた夕暮れ、であった。
2009_0721_0540  吉田トシとは対照的に、ゆったりゆったりした足取りで装着場をうろうろしていたのは、伊藤宏である。ゆったりというよりは、とぼとぼ、といった感じで、手持無沙汰そうにうろうろうろ。途中、すれ違った寺田祥に何か声をかけて、ワイルドなひげが印象的な口元を緩めたりもしていた。よくよくあたりを見渡すと、伊藤のボートは係留所に。すでに10R前の試運転タイムは終了していたから、11R前の試運転を待つ間、ちょっと手が空いたということなのだろう。人口密度の薄い時間帯のピットでは、そのたたずまいはよく目立っていた。
20090722_1016  そこに、10R出走の瓜生正義が控室のほうからあらわれた。軽快な歩様で出走待機室へ。その途上で、伊藤宏と顔を合わせる。76期同期の二人、ごくごく自然に会話が始まった。伊藤のヒゲは相変わらずゆるやかで、瓜生の瞳も明るい。レース直前とは思えないリラックスした瓜生の表情は、伊藤のヒゲ……いや、人徳がもたらしたものなのか。ともあれ、同期というのはいいもんなのである。
20090722_0153  10R出走組といえば、木村光宏が不思議な動きを見せていた。展示を終えて、出走待機室に収まった木村は、10分ほど経って室外に出てきた。レース直前でもないのに、塩をとって足もとに撒く。そして、ボートリフトへと歩み寄ると、脇に貼り出されている出走表を覗き込んで、数分動かなくなった。出走表は、何もそこに見に行かなくても、選手はたいがい持参しているものだし、出走待機室にだって置かれているはず。しかも、展示の後ということは、いくらなんだって対戦相手はわかっているし、スタート展示で進入の動向もある程度は見えているだろう。なのに木村は、あえてリフト横の出走表を覗き込む。もちろん木村なりの理由はあるのだろうが。
 木村はその後、いったん控室へと戻って、締切7~8分前に出走待機室へと改めてやって来ている。そして……その途中でリフトに寄り道し、ふたたび出走表を覗き込んで、1~2分考え込んでいた。変幻自在の木村だけに、こうして何度も何度も作戦を練り直す、ということだろうか。
2009_0720_0544  同じころ、服部幸男も控室のほうからあらわれた。まっすぐに視線を据えて、確かな足取りで歩く服部は、まさしく哲人。と、途中でなぜか軌道を外れて、整備室に顔を出す。そこには菊地孝平がいて、腕組みをしながら談笑。菊地と別れた服部は、笑みを残したまま、また腕組みをしたまま、待機室へと歩き出した。その笑みは、待機室前まで浮かんだままで、実に珍しい光景となっていたのである。なんかいいもん見た、と思った。
20090722_0405  締切5分前となり、集合合図がかかると、池田浩二も早足であらわれ、すすすすっと待機室へと消えていった。ん? 藤丸光一を見ていないな。展示から戻って待機室に入り、そのまま発走までの時間を過ごしたのだろう。
20090722_0796  魚谷智之の姿も見ていないが、これはいつものことである。魚谷は展示を終えると、待機室に入って、いっさい出てこないのがルーティンなのだ。それがレース前の精神統一のスタイルなのだろう。だから、レース直前の魚谷の表情はまず確認することができないのである。
 ともかく、こうして10R出走メンバーが待機室に揃った。締切1分前に整列、敬礼して出走ピットへ。そのシーンは、この10Rに限らず、予選とか優勝戦とか一般戦とかにかかわらず、見ているこちらも緊張する瞬間である。
20090722_0373 その10Rは、瓜生が6コースから突き抜けて、藤丸が2番手追走。地元のワンツーフィニッシュとなった。神妙な表情で戻って来た瓜生と藤丸は、しかしボートリフトに並んで収まると、顔を見合せてニコッ。充実感あふれる、爽やかな笑顔だった。そして……伊藤宏は瓜生を笑顔で出迎えていた。ヒゲがやっぱり素敵だった。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)


| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
コメント
コメントを書く




※メールアドレスは外部には公開されません