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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――仲間

 午後イチくらいには不穏だった雲行きが、あっという間にドス黒くなり、1Rが始まる頃には雨が降り出した。雨足は勢いを増しており、空はぐんぐん暗くなる。4Rで早くもナイター照明がついたほどである。風も強く、追い風になったり向かい風になったり。水面際に立っていると、風に乗った雨が屋根などゆうゆう乗り越えて、顔を濡らす。初日夜のような豪雨ではないが、なかなかに厄介な雨だ。
20090722_0161  それもあってか、係留所にボートは少ない。松井繁と服部幸男が隣同士で調整をしていて、わけもなく嬉しくなったりもしたが、その2人を含めてもほんの数艇しかない。3R前にチェックすると、64期コンビのほかは田中信一郎、山崎智也、魚谷智之、中島孝平。やけに豪華であるな。
20090722_0800  いちばん左端で黙々と作業をしていたのは魚谷智之。ここは追い風が吹いていると、雨が吹き込んでくる場所。それほど大量に魚谷を襲っているわけではないが、体を濡らさないはずがない。それでも魚谷は、雨など気にせず作業を続ける。完全に一人の世界に入り込んで、細かいチェックに余念がない。魚谷の言葉を借りれば、力を出し切っているのだ。
2009_0723_0204  その2つ置いて右の係留所に山崎智也。その隣に中島孝平。この2人、実に仲が良さそうなのだ。つながりはちっともピンと来ないが、楽しそうに談笑している姿をよく見かける。中島は基本的に寡黙で物静かな感じなのだが、智也といるときにはよく笑顔を見せているな。ともかく、不思議な組み合わせである。
「智也ーーーっ! ありがとーーーっ!」
 そのとき、控室の入口から大声が響く。角谷健吾だ。
「おっつかれーーーーっ!」
20090722_0311   そうか、智也と角谷は71期、同期生だ。なんとなく、山崎智也とゆかいな仲間たち、という言葉が浮かんだ。

 さてさて、今日は勝負駆けデー。1R、川﨑智幸が4着で6・00。いちおうのノルマはクリアだが、昨日の時点では辻栄蔵が6・00で19位。1着のない川﨑は、まだ予選突破と言い切れない状況にある。
20090722_0822  それにしても、1R1回乗りで、きょうはもう作業をする様子のない川﨑。長い1日になるのではないかと心配してしまった。予選突破が絶対的であるなら、のんびりしていればいいけど、残り11レースの結果いかんによって自分の運命が決まるのだから、気が気ではないだろう。1R1回乗りというのは、なかなか残酷だよなあ、と思った。
 とは言いつつも、川﨑はそんな状況を意に介したふうがないのだから、さすがである。2R以降もエンジン吊りには姿をあらわしているのだが、まるでゆったりと流れる運命の時間を楽しんでいるかのように、のんびりとした足取りなのであった。まあ、川﨑の場合、こういう歩様のほうが気合が入っていたりするんだけどね。
20090722_0790  一方、2Rでまたもや6等をとってしまった吉村正明のことも、別にそういう立場ではないんだけど、心配になってしまった。レース後はさすがに冴えない表情で、遠目にも溜め息が聞こえてきそうな雰囲気を感じる。もともと表情豊かなほうではないけれども、オール6着に頬の肉が動こうはずがない。今節に限らず近況最悪の吉村は、ボートを装着場の奥に運びながら、ひそかに悔しそうに顔をしかめていた。
 白井英治が吉村に寄り添い、タオルでボートの水分を拭いてやりながら、優しい笑顔で語りかけていた。吉村は何度かうなずきながら、白井の顔をじっと見つめていた。いちばん奥のほうにいた二人、何を話していたのかはまるっきりわからない。だが、先輩が後輩の心をほぐそうとしているのは間違いなかった。最後まで吉村の頬はゆるまなかったけれども、白井先輩の言葉は一服の癒しにはなったに違いない。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)


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