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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――閑散としたピットとまとわりつく空気

2009_0730_0971  1Rの周回展示がはじまる少し前に、グレーの空から霧雨が降り出した。体にねっとりとからみつくような濃厚な空気が、この霧雨で中和される。むしろ心地いい部類に入るような雨だ。ピットには海から向かい風が吹き込んでくる。昨日に比べると不快指数は低い。 1R周回展示が終わって、6選手が水面から上がってくる。選手の足どりはやや重い。1Rは初日にまったく結果を残せなかった6人の争い。ここでも大きな着順を取ってしまうようだと、今節の予選突破は絶望的になってしまう。
 控え室に入る前に、1号艇の大澤がヘルメットを脱いだ。額にはじっとりと、汗が滲んでいた。

 朝11時10分。陸には艇がズラリと並んでいる。着水しているのは1・2Rに出走する艇を除くと数艇のみ。そして選手の姿も陸の上の艇のまわりにはほとんどいない。
 選手はどこに消えた?
 消えたというほど大袈裟な話ではないか。ペラ室に約20人の選手たちがひしめきあっていた。ほとんどの選手が朝練習で本日の方向性を掴み、ペラ調整に勤しんでいたのである。 雨。高湿度。風。調整が難しそうな条件がそろっているだけに、みな黙々とペラを叩いていた。私語はあまり飛び交っていなかったように思う。

2009_0730_r12_1117   整備室に目をやると、服部幸男が左から2番目のテーブルにエンジンを乗せ分解していた。私が目をやったときは、整備士たちにアドバイスを受けながら、ピストンを取り出して金タライの中につけていた。
 私の勝手なイメージだが、服部といえば本体整備よりもペラで調整するタイプの選手だと思っていた。整備室で見かけるよりも、圧倒的にペラ室で見かけることが多いような気もしていた。
 その服部が午前中からエンジンをバラしている。服部は昨日のドリーム戦を1号艇で5着に敗れているが、あれはスタートで後手を踏んだのが敗因のすべて。しかし足も本人が納得がいくものではないのかもしれない。

2009_0729_1017  服部の隣のテーブルでは、菊地孝平が同じくエンジンを整備していた。静岡王国の王と海王が、そろって本体整備。にわかに波乱の気配を感じたのは、私が穴党だからなのだろうか。
 ずっと整備室の中にいて、本人に話を聞くタイミングがなかったのでわからない部分はあるが、菊池も自分の足に納得がいかない部分もあるのだろう。初日の成績こそ2着1着と上々ではあったが、昨日のレース回顧でも書いたが、機力に勝って掴み取った勝利ではなかったように思っている。この整備がどのような結果をもたらすか。服部と菊地の両者には注目しておきたい。

2009_0729_0989  誰もいない競走水面をひとりで独占していたのは竹上真司であった。竹上が引いた45号機は2連対率が50%を超える、浜名湖ベスト3のモーター。ただ、初日の競走を見るかぎりでは、そのポテンシャルをまだ発揮しきれていないようにみえた。
 霧雨が降るなかを、竹上はひとりで1周、2周、3周……と走る。ピット内の見える場所にほとんど選手はおらず、ピットから見たスタンドにも人はまばら(雨が降っているので、ファンも室内に入っていたのだろう)。 灰色に鈍く光る水面を、ひとりで走る竹上に何だか鬼気迫るものを感じた。……というのは言いすぎか。
 しばらく水面を一人で独占していた竹上だが、ここに安達裕樹がからんできて2人で足合わせを一本行なって、水面から上がってきた。

2009_0730_0442  1レースがはじまる。2コースの山本英志がトップスタートを決め、インの大澤を行かせたあとで差し抜けて1着。
 6艇がリフトに戻ってくると、ピット内にこんなに人がいたのかというくらい、あちこちから選手が出てくる。
 2日目オープニングカードを飾った山本の艇を引っ張るのは、関東の選手たち。阿波勝哉、平石、福島などが、凱旋した山本の艇を引っ張る。
 山本は、「とりあえず一息ついた」という表情をしていた。初日6着と最悪のスタートから、今日の1着で得点率を大幅に戻した。 一方、スタートで後手を踏み、絶好の1号艇で差されてしまった大澤は苦い顔。3着の岡瀬も苦笑いをしていた。

(PHOTO・中尾茂幸 TEXT・姫園淀仁)

 


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