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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――まさかの進入

 3R。
 2号艇・阿波勝哉。6号艇・今村豊。
 普通はこう考える。今村は緑でもスロー起こしだから、阿波は6コース単騎ガマシだ、と。上瀧和則もいるけれども、3号艇だからおそらく2コースまで。進入は13456/2だ。
2009_0824_0573  実際、ピットアウト後はそこを目指して全員が艇を流しているように思えた。しかし……今村、ずいぶんと岸壁に寄ってないか? 阿波のコースは相当に狭くなっているが……。
 そんな異変を感じたとき、誰もが目を丸くしたのではないだろうか。阿波が4コースの重成一人と今村の間に突っ込もうとしている!
 単騎ガマシのはずの阿波が5コース。スロー艇の最外のはずの今村が6コース。こういう隊形、何て表現したらいいんですかね? 阿波は5カドなの? 今村はカド受け……じゃないよなあ。表記は1345/2/6でいいのかしら? うーん、わからん。
 阿波にとっては、この並びが敵となった。そして今村にとっては、この作戦が奏功した。5コースだとスタート勘が狂うという阿波。阿波のマクリについていって、2番手に浮上した今村。今村としては、してやったり、というところだろう。
2009_0825_0323  このレースを見ていた選手仲間も、目を丸くしていたようだ。ボートリフトで今村を出迎えた白井英治は、おかしそうにニコニコしている。今村はヘルメットの奥で大笑いしながら、白井に話しかけている。湯川浩司を出迎えに来た松井繁と田中信一郎も、まずは今村の真ん前に陣取って、今村の解説をニヤニヤと笑って聞いている。陸に上がったあとには、誰かが「阿波さん殺し?」と声をあげていた。今村は「いやいやいや、そうじゃなくて」と否定していたが、顔にビタリ張り付いた笑顔は永遠に消えそうにないほどに深くなっていった。
2009_0824_0432  ともに走った面々も、水面で今村の走りを興味深く見ていたようだった。カポック脱ぎ場で、もっともブーイング(?)を飛ばしていたのは、上瀧和則だ。「俺はスタート遅れてたから、よう見えたわ」。アウトにいるはずの黒いカポックが5コースから疾走しているのを、上瀧は前方に見ていたわけである。「いやあ、人間のやることやない!」。上瀧は大笑いしながら、今村をからかう。「あんなことやるようじゃ、引退の時期も近づいたってことやな!」。爆笑する上瀧に、今村はさらにニコニコニコニコと笑っていた。近くでヘルメットのシールドを磨いていた白井も、ふふふふと笑っていた。
2009_0825_0034  そこに湯川があらわれる。「いやぁ、ビックリした! 阿波さんがすぐ外に来てるんやもん!」。本当はいるはずのないところに、阿波がいた。そりゃ驚く。「それに阿波さん、内に行くし!」。カマシ切れずにマクリ差しに出た阿波の戦法も意外だったようだ。湯川自身、阿波対策の作戦を立てて臨んでいたのかもしれない。それが完全に狂わされたわけだ。そんな湯川に、今村はやっぱりニコニコニコニコ。この大先輩が、後輩たちにエンターテインメントを提供した、というべきである。
2009_0825_0299  ただ一人、笑っていなかったのは、当事者の阿波である。もちろん、今村の作戦に憤っていたわけではない。だが、勝負師として、ここで笑うわけにはいかない。哄笑の輪の中で、ひとり表情を変えることのない阿波勝哉。
 控室に戻り際、湯川に「ごめんね」と阿波は声をかけた。思いもかけぬ阿波の謝罪に、湯川は大慌てでそれを制する。ひとつうなずいた阿波は、やはり表情を変えぬまま、控室への階段を上がって行った。
(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)


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コメント

まさか…まさか…の6コースでしたね(>_<)
目の前で見てて、何が起きたのかわかりませんでしたよ〜!

でも、とても素敵なまくりでしたo(^-^o)(o^-^)o

実況殺し(笑)

まだまだ引退には程遠いデスよ。

投稿者: ゆたぽん (2009/08/26 17:43:53)

いや〜、見たかったなぁこのレース。ビックリの進入、しかも、それをバチッと決めちゃうところが今村さんのスゴイところなんですよね。さすが艇界のプリンス!!引退なんてまだまだ(。・_・。)ノ

投稿者: 月ちゃん (2009/08/26 23:38:56)
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