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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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優勝戦 私的回顧

激差し!

12R優勝戦
①松井 繁(大阪)12
②山崎智也(群馬)17
③池田浩二(愛知)16
④赤岩善生(愛知)20
⑤白井英冶(山口)18
⑥笠原 亮(静岡)22

進入123/456

2009_0830_r12_0880  池田が勝った。
 スリット~1マークでは、王者・松井がトップSから圧勝するムードだった。が、その艇尾に怪しい毒矢が飛んでくる。2コース智也のツケマイ。スタートでわずかに後手を踏んだ智也には、ふたつの選択があった。差すか握るか。常道は「差し」だ。が、相手はイン戦の鬼神である。差しの気配を察知すれば、すかさず減速して智也の差し場を完封する。
 智也は握った。見えない位置から飛んでくるツケマイは、インにとって厄介な存在だ。松井はこの毒矢にどの時点で気づいただろうか。とにかく、かなり早い段階で松井も握り返した。1マークをしっかり噛んだターンではあったが、毒矢を振り払った代償として艇が流れる。王者の圧勝ムードから、一転して波乱含みになった。1、2号艇がやり合って内のスペースがぽっかり開く。外の4艇にとって垂涎のスペース。誰がこの黄金空間を制するか。4艇が殺到する。が、スタートが一息だったダッシュ勢には、鋭角に突き抜けるだけのマイシロがなかった。赤岩と白井が同じタイミングで握り、接触して流れた。笠原の差しにも迫力がない。ただ1艇、その黄金空間にもっとも近い位置にいた池田が、ターンマークをえぐるような絶妙の差しハンドルでその空間を制圧した。
2009_0830_r12_0906  が、これでまだ勝負は決したわけではない。体勢を立て直した松井が外から伸びる。内外離れての伸び比べ。スタンド騒然。両者がともに近づいて併走になり、決着は2マークに持ち越された。もっとも逆転の多い2マーク決戦。池田がブイを目指し、松井がまたわずかに開く。そしてハンドルを入れる。早いし、速い! 私の目には、その舳先がズッポリと突き刺さる逆転の航跡が見えた。
 やっぱ王者か!?
 思った瞬間、松井の艇はふんわりと外に流れていた。流れたのではなく、流したというべきか。差そうとした狭い空間に、後続の艇が続々と突進してきたのだ。ハンドルを切り返してそれらを回避したとき、池田は3艇身先を全速で突っ走っていた。このとき、池田浩二の通算4度目の、そして総理大臣杯に続く今年2度目のSG制覇が決まったといっていいだろう。決まり手は「差し」というより「激差し」だ。松井だけでなく、池田もまた智也のツケマイにハッとしたことだろう。不利な体勢の2コース選手は、SGでも8割がた差しを選択する。池田の予測もそんな比重だったはずだ。野球のバッターでいうなら、「次の投球は、内角球が8割で外角が2割か」みたいな。そこに、外角の直球が来た。なかなかそんなボールには、手が出しにくいものだ。が、池田は、まるで外角球を読んでいたかのように迅速かつシャープにバット(差しハンドル)を振り抜いていたのだ。卓越した動体視力、そして智也が2コースでたびたびツケマイを選択する選手だと知っての柔軟な対応力。それらが相まって、あの素晴らしい激差しが生まれたのだろう。もし判断がコンマ1秒でも遅ければ、バック直線で間違いなく松井が突き抜けていた。

2009_0830_r12_0932  私はときどき、池田を見ていて「イチローに似ているなぁ」などと思うことがある。今日、悠々とゴールに向かう彼の姿を見ながら、また同じことを思った。競艇レーサーにはさまざまなタイプがいるが、池田浩二は飛びぬけた身体能力を誇るスーパーアスリート。そんな私の勝手なイメージが、より強く脳裏にインプットされる激差しだった。(Photo/中尾茂幸、Text/H)


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