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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――本日よりよろしくお願いします!

 本日から参戦です。たいがい前検から一節間の通しなので、中途参戦というのは妙に緊張するもので。ましてや選手たちと顔を合わせるピット取材に向かう際には、足もとがフアフアしてしまう。折しも、浜名湖は突如の土砂降り雨に見舞われており、傘をさす手もやけに震えるのでありました。
2009_0731_0413  てなわけで、顔をこわばらせつつピットに入ると、真っ先に顔を合わせたのは笠原亮。梅雨空など吹き飛ばすような笑顔である。ふう、最初に言葉を交わしたのが亮くんでよかった。胸のあたりでもやもやしていた緊張感は、一気につま先まで落ちて、そのまま抜けていった。
 言葉が力強かったのもまた、気付け薬のようだった。手応えは相当に良い、ようである。このアシだからこそ、「今回は結果を出したい」と笠原はキッパリと言った。
「ポイントは今日の1号艇ですね」
「でも、内とか外とか関係ないアシでしょ」
「もちろん」
 その強い思いさえあれば大丈夫! そして笠原の顔は、次第に笑顔が消え、鋭さが増していったのであった。

2009_0731_0261  次に顔を合わせたのは、篠崎元志だ。何を隠そう、BOATBoy9月号(8月11日発売です。ヨロシク)で、僕は篠崎にインタビューしている。ちょうど3週間ほど前かな。これはやはりお礼を言っておかねばならない。
「この間はありがとうございました」
「いえ、どういたしまして」
 ……ありゃ。もっといろいろ話しかけようと思ったのに、篠崎はそれだけ言って、さらっと目を逸らしてしまった。ものすごく不機嫌に見えるし、話しかけられるのを真っ向拒否しているようでもある。時は1Rで敗れ、準優がほぼ厳しくなることが確定した直後。そりゃあ笑えるはずもないし、それにそのインタビューの内容からすれば、何も話したくなくて当然だろうな、とも思った(どんな内容だったかは9月号をお楽しみに。ヨロシク)。
 おおむね、成績、モーターのパワー、ペラの調子……これらは選手の感情を激しく乱高下させるもの。我々だって、仕事がうまくいくかいかないかで精神状態が変わるのだ。日々勝ちと負けに向かい合うことを強いられる選手たちは、極端に言えば、試運転から帰ってきただけで機嫌が変わったっておかしくないのだ。結果が突きつけられるレース前後では気分がおおいに違っていて当然である。
2009_0730_0385   たとえば湯川浩司。オーシャンカップ優勝戦のピット記事をご覧いただければ、あの日の湯川がいかに気分よく過ごしていたかがわかっていただけると思う。ところが、今日はこれがまあ同じ人物かと思うほどに素っ気ない。2着3本で成績はいいはずなのに……と思って後をひっそり追いかけてみると、湯川は整備室に消え、そして本体整備をしているのであった。H記者によれば、パワーは悪くないはずだが、しかし何かが気にかかるのか、こんな早い時間帯から本体に手をつけている(今日は12R1回乗り)。そりゃあ、素っ気なくて当然。むしろ陽気に話してかけてきたとしたらそのほうがおかしい。
2009_0731_0076  菊地孝平も同じことだ。ペラ叩く→外に出て翼面を光にかざす→目を細めてそれをチェック、というのは、SGでもよく見かける菊地孝平のルーティン。初顔合わせはまさにその瞬間、ということで、菊地は目だけで笑ってすぐに厳しい目つきに戻る。もう思い切り自慢させてもらうが、オーシャンカップでの優勝後、菊地は僕とガッチリ握手を交わしてくれたのである。しかし予選3日目、まだまだ気が抜けない時点で、あの日と同じ接触があるわけがない。鋭い視線をたたえたまま再びペラ室へと戻っていく菊地の背中を眺めつつ、緊張感がまた高まってくるのを感じた。

2009_0731_0008  それにしても、GⅠのピットというのは、SGばかり取材している者からすれば、新鮮でもある。たとえば、加瀬智宏。ピットで会ったことがあったかなあ……と記憶の引出しの奥まで覗き込んでみても出てこない(もしあった場合は、本当に失礼な話ですが)。しかし実は、一般戦では個人的に非常に相性のいい選手であり、けっこう儲けさせてもらっている。加瀬、なかなか渋いなあ……と、快精の空のようなスカイブルーのタオルを鉢巻のように頭に巻いている姿を見て、しみじみとしてしまった。
2009_0730_0303 後藤正宗の男っぽいワイルドな顔つきにも、痺れた。たしか東海地区選の取材で顔を合わせているはずなのだが、もう2年以上も前のこと。当時抱いた感想はとっくに忘れてしまっており、だから初対面のようなトキメキがある。と、すれ違いざま、後藤がニッコリと笑って会釈をしてくれた。こちらの会釈が一瞬遅れたことを、ちょっと後悔した。
2009_0731_0435  2Rで阿波勝哉がフライングを切ってしまった。一人ピットに戻って来た阿波は、痛恨という言葉以上の表情で顔をしかめていた。その阿波をダッシュで出迎えて、かいがいしく働いていたのは福島勇樹。07年の大村新鋭王座以来だ、ピットで見るのは。近況絶好調で、今節も快調。トーキョー・ベイ・パイレーツにも選ばれている。先輩の勇み足は福島にとっても痛みを覚えるものだろうが、ベイパのピンクのユニフォームが踊っているようにも見えたのだった。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)


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