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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――SGが始まった、という実感

2009_0824_0609 「むっちゃ緊張しちゃいました」
 てへ、と最後についてもおかしくない口調で、平山智加が声をかけてきた。平山にレンズを向けていた中尾カメラマンの隣でぬぼっと突っ立っていたこちらに、平山は苦笑4割の笑顔を向けてきたのだ。
 か、かわいい……はともかく、平山の気持ちはなんとなく理解できる。地元SG、オープニングレース、1号艇。丸亀がいかにブルーナイター、そしてMB記念に力を入れてきたかを肌で知っているはずの彼女だけに、期待がひしひしと伝わる初日1Rの白カポックは、デビュー3年生にとってはプレッシャーも大きかっただろう。
 結果は残念であった。しかし、それ以上に大役を担った一戦を無事に終えたことが大きいのだろう。今日はこのあとさらに整備と試運転を続ける様子。ここから本当の奮戦がスタートするのかもしれない。
2009_0824_0359  一方、そんな平山に対しても手を緩めることなくコースをうかがい、きっちり1着をとった石川真二。勝負の過酷さを伝えた勝負師としてのふるまいは、さすがの百戦錬磨であった。また、今日は仲のいい“中尾フォトアーティストの20回目の誕生日”(すべて自称)。昨日、今日の勝利を中尾FA(自称)に誓っていたそうで、有言実行のバースデープレゼントでもあった(中尾Cは舟券外してるんだが)。
 しかし……2R直前にピットにあらわれた石川は、中尾Cの顔を見るなり、愚痴り始めた。なんと、待機行動違反をとられたのだ。ホーム側で流しているときに右転舵をしたとジャッジされたのだが(石川自身は、舳先が波に押されて右を向いただけだと言っている)、せっかくのピン発進にミソがついてしまったことは心をズタズタに引き裂くものだっただろう。たしかにリプレイを見る限り、ちょっとかわいそうな判定に見えるが、それだけに悔やんでも悔やみきれない石川。ひとしきり愚痴るとそれでもすぐにペラ室に向かったから、すでに巻き返しに向けて切り替えているとは思うが……。もしこれが石川の気持ちに火をつけたのだとしたら、今節の石川は台風の目になってもおかしくない。

2009_0824_0364  2Rのファンファーレが鳴り、装着場内にあるモニターに5~6人の報道陣が集まる。ペラ叩き場で作業をしていた田村隆信も覗き込みにやって来て、さらに松井繁まで加わったから、さあ、大変。いや、別に大変じゃないか。僕が一人で緊張していただけだ。で、その2R、2コースの上瀧和則がヘコんで、宮武英司には絶好の展開となった。「おっ、水神祭!」。モニター周辺で誰かがそう呟くと、皆なんとなく宮武に注目するようなかたちになった。結局マクリ差しは流れてしまうのだが……。
 レース後、宮武の顔はヘルメットの奥で歪んでいた。地元でSG初出場、めぐってきたチャンス、しかし……それをモノにできなかった……。カポック脱ぎ場に戻って来たのは6選手の中ではラストとなった宮武は、ヘルメットを脱ぎながら、ひとつ溜め息をついた。2コースを譲った上瀧が声をかけても、無言でうなずくだけだった。
2009_0824_0555  同じ2Rで、見事な逆転ターンで3着に浮上した横西奏恵も、レース後はなぜか浮かない顔をしていた。宮武に注目していたせいもあって、1Mの展開は見逃していたのだが、逆転シーンだけ見れば素晴らしいレースであった。もっと喜んでいてもおかしくないのだが……。
 カポックを脱いだ横西、……あっ、そのまま医務室へ直行。レース中にケガでもあったのか……。だとするならレース直後の表情も納得できるのだが……。
 言っておくが、医務室に行ったからといって、レースで負傷したとは限らない。競艇のレースはさまざまな箇所に大きな負担をかけるもので、腰やヒジ、ヒザなどの関節に持病を抱える選手は少なくない。また、万全の体調を維持するため、ちょっとした打撲等にも手厚く処置をしようとする選手だっている。あるいはちょっと風邪気味とか、そういうケースだってあるだろう。だから、横西の医務室行きもその程度の可能性もあるのだが……。
 3R直前に顔を合わせたので、思い切って訊ねてみる。
「ああ、大丈夫ですよ」
 うむ、その言葉を信じるぞ。初戦3着はそこそこの好発進だ!

2009_0824_0455  さて、初日の前半ということで、選手たちはみな忙しそうに動き回っている。ペラ室は満員御礼、整備室には今垣光太郎&石橋道友(1R出走後に素早く本体整備に)、リードバルブの調整テーブルには濱野谷憲吾と平田忠則、ギアケース整備テーブルには三嶌誠司に川上剛(やっぱり1R出走後に素早く)、さらには試運転をいったん中断した阿波勝哉も加わった。試運転係留所は満艇状態、あちこちで選手同士の情報交換が繰り広げられている。なかでも、飯山泰は係留所を右に左に大横断しつつ、さまざまな選手と話し込んでいた。
2009_0824_0298  まさしく、初日前半らしいピットの空気! 時計を見ると午後3時とか指していて、不思議な感覚にとらわれるが、それでも選手たちの動きを見ていると、SGが始まったなあ、と実感するのである。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)


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