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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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GⅠダイヤモンドカップ準優ダイジェスト

10R 菊地がっ!?

①菊地孝平(静岡)
②佐々木康幸(静岡)
③笠原亮(静岡)
④新田雄史(三重)
⑤田中信一郎(大阪)
⑥萩原秀人(福井)

2009_0803_r10_0603  黄色いカポックが1号艇の菊地孝平に襲いかかる――ほんの1週間前にも目撃したようなシーンが浜名湖の待機水面に浮かび上がった。
 スタート展示、前付けに動いた田中信一郎がじわりとインコースを目指して艇を進める。慌てたようにスピードアップした菊地がくるりと舳先を回してインを主張する。すわ、待機行動違反か……いやいや、これはスタート展示、菊地にとって何より大事だったのは、強い決意を田中に理解させることだった。
2009_0803_r10_0605  本番は、田中はやはり動いたものの、折り合ったような形となって1~2コースはすんなり決まった。これも、あの優勝戦を彷彿とさせるようなシーン。ただ……。スローが効いたこともあって、15秒針が回り始めるころには100mポールと小回り防止ブイの中間地点ほどにいた菊地は、艇を少し前に進めて起こす位置を100mあたりに調整している。これは、1週間前の夜の菊地とは異なっている点だった。

 あるワンシーンがデジャヴのように思えるほど似ていても、すべてが再現されるなどということはそうそうあるわけがない。スリットの手前からすでに、浜名湖10Rのオリジナルな流れはできあがり、スリットを超えると1週間前のあのドラマは霧消している。
 浜名湖オリジナルは、菊地孝平に襲いかかる佐々木康幸。ややヘコんだ田中の頭を叩いて佐々木は、そのまま菊地をも叩き切ろうとした。静岡同士の仁義なきガチンコ勝負。ここが地元水面だからといって、両立してともに優勝戦へ、などという感傷は1Mには存在しない。静岡で上位独占とレース前には考えていても、スイッチの入った勝負師たちは一瞬にして野獣と化す。
2009_0803_r10_0622  1Mに到達する直前、佐々木がなぜか流れ気味になった。菊地をマクリ切る態勢で、ハンドルワークが狂ったか。これが、4カドからSを決めて攻め筋を探していた笠原亮の眼前に、晴々しいウィナーズロードを切り開くこととなる。まっすぐに突き抜ける先を見つけた笠原は、一気に獰猛さを増す。迷わず飛び込んだ笠原は、抵抗せんとする田中を振り切って、水煙の向こうへと駆け抜けていった。バック水面に出たとき、赤いカポックは先頭に立っていた。
2009_0803_r10_0634  田中は、ターンマークに舳先を当てたのか、1マーク付近で失速してしまっている。最内を差そうと狙っていた新田雄史がこれに接触、こちらも失速を喫した。結果は時に皮肉だ。新田に続いて差した萩原秀人は、新田の内をすり抜けていく。まるで、新田がすべての不運を自らに引き寄せて、萩原に舗装道路を用意したかのように。
 最内を通って2番手優勢な萩原に、佐々木が内から、菊地が外から逆転の一太刀を浴びせようとしたが、これは届かず。1Mに出現した優出ロードを真っ先に見つけた者が、逆転劇を許すはずがなかった。

★機力診断★
 笠原は、本来の爆発力を見せたわけではなかったが、引き波を苦にしないのだから、ターン回りはいい。また、スリット付近の行きアシも上位級と見えた。萩原は特別インパクトがあるわけではないが、こちらもターン系は悪くないはず。
 敗退組については、展開的に判断が難しいのだが……。しかし、佐々木にあっさりマクリを許したように見えた菊地は、やはりもうひとつ仕上がりが足りないのかも。

11R 湯川もっ!?

①湯川浩司(大阪)
②坪井康晴(静岡)
③松本勝也(兵庫)
④重成一人(香川)
⑤池田浩二(愛知)
⑥長野壮志郎(福岡)

2009_0803_r11_0774  コンマ18~20で揃った1~4コースに対して、5コース池田浩二がコンマ09で1艇だけ飛び出す。その隊形はまるで、平屋ばかりの住宅街に1軒だけビルを建てたかのよう。スリットと1Mの中間点あたりから内を絞り込んだ時点で、勝負アリ。「今まで死んだフリしてたんか~」、周囲の誰かがそう口走ったように、ついにエース機が牙をむいたように見えるマクリ一撃だった。
 注目は2番手だ。6コースの長野壮志郎が池田の艇尾に張り付いて、虎視眈々とVロードを探している。マクリに乗って、マクリ差し。攻めた艇の外に位置する者の常道だ。
2009_0803_r11_0799  だが、坪井康晴は、妙な表現を使わせてもらえば、マクられたあとの対処をよく知っていた。池田が一気にバックに駆け抜けていったあとを、坪井は握ってついていったのである。池田が存在しないものとしてその航跡を見れば、イン湯川浩司にツケマイを放つようなかたち。小回りで残すのではなく、あえて全速で回って他に先んじようというものだ。これが、長野を牽制するかたちにもなった。いや、坪井はハナから長野を意識したのか。池田にマクられたのは仕方がない。だが、その2番手を渡すわけにはいかない。だから、池田の後を追って旋回してくる長野を迎え撃つような格好で張りながら回った。
 全艇がバック水面に出たとき、坪井は2番手に上がっている。最内をしっかり差して伸びた重成一人も、さすがの旋回力である。テクニックを取り沙汰するのなら、坪井と重成に差などない。だが、二人の着順を分けたのは、ということは優出と敗退の分水嶺となったのは、1Mで握ったかどうかだとしか思えなかった。もちろん、真っ先に叩かれたのは重成なのだから、その分を差し引かないわけにはいかないが……。

★機力診断★
 エース機がついに爆勝! しかし……今日のようなマクリ一撃では、正味の機力は判断しにくい。わかったのは、引き波のないところでの池田浩二のターンは本当に美しい、ということだけだった。一方、坪井の2着は、機力よりも捌きの達者さではないかと思う。そのテクを繰り出すだけの仕上がりにはなっているのだが、最近の坪井の噴き方と比べれば、7~8割程度ではないだろうか。
 敗退組も、この展開では判断が難しい。インの湯川浩司はマクられた時点でなすすべがなかったし、松本勝也もがっつり引き波の影響を受けてしまっている。重成が1Mですべての引き波をさらりと超えたのが目についたことはついたのだが……。

12R う、瓜生までっ!?

①瓜生正義(福岡)
②馬袋義則(兵庫)
③福島勇樹(茨城)
④今坂勝広(静岡)
⑤佐藤大介(愛知)
⑥後藤正宗(静岡)

2009_0803_r12_0852  瓜生正義、お前もか!……そんな悲鳴が聞こえてきそうなスリット。イン瓜生のSTはコンマ19。対する福島勇樹はコンマ10。福島の鋭い行きアシから伸びを考えれば、2コース馬袋義則がコンマ24とヘコんだこともあわせて、その時点で準優1号艇オールぶっ飛びは決まったようなものだった。予選1位の瓜生までがマクリの餌食になるなんて、今日の浜名湖のイン水域には不可思議な磁場が発生していたのだろうか……。
2009_0803_r12_0878  あっさりと内を叩いた福島は、気持ちよく1Mを先取りしていく。結果Fとなった後藤正宗がその外を攻めてきていたが、楽に凌ぎ切れる体勢。しかしマクリは常に差しの刃を向けられるリスクをも背負う。教科書通りの「マクリマークの差し」を狙っていたのは、カドに陣取っていた今坂勝広である。先に回った福島のふところに、鋭角なマクリ差しをズバリと突き刺す今坂。福島は決して流れたわけではなかったが、今坂のハンドルは福島の会心を上回る強烈さをもっていた。
2009_0803_r12_0895  しかし……福島には、何か特別な力でもあるというのだろうか。2M、今坂がわずかにターンマークを外した。昨日の8R=丸岡正典が2Mを外して差されたシーンのVTRでも見ているかのように、追っていた福島は見逃さずにターンマーク際を差した。内併走に持ち込んでしまえば、福島のアシは強い。2周1Mで今坂が渾身の再逆転を狙い、舳先をかける勢いで迫ったが、バックでじわじわと突き放した福島は2周2Mでケリをつけた。終わってみれば、福島の強さが目立つだけの一戦だったのだが……。

★機力診断★
 福島のアシは文句ナシ。ただ、ダッシュに入ったほうが妙味のありそうな行きアシと伸び、1号艇がどう出るか。今坂は昨日と比べればかなりアップしている手応え。伸びで福島にはやられたが、レース足では大きな差はないと思う。
 敗退組では、佐藤大介の粘っこいアシには注意しておきたい。瓜生、馬袋については、今日の展開では判断が相当に難しい。ただ、瓜生はやはりインパクトをそれほど感じられないのだが。

2009_0803_r11_0749  それにしても、SG合計7冠の1号艇がすべて優出を逃すとは! マクリは競艇の華と言われるが、時にこうした波乱劇を巻き起こすことも含めて、そう呼ばれるのかもしれない。優勝戦も一筋縄ではいかない予感がするのだが、果たして……。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)


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