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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THE ピット――素敵な男たち

2009_0803_0460  5日目――。
 準優勝戦が行なわれる一日であるのは言うまでもないが、午後のピットでまず驚かされたのは服部幸男だった。
 9レースのイン逃げで今節初1着を決めると、自分を出迎えに出てきた後藤正宗、坪井康晴といった準優メンバーに向けて、ブイブイといった感じでVサイン! その顔にはちょっとおどけた笑みまでが浮かべられていたのだ。
 その様子を見た瞬間は、準優出できていない内心の悔しさをこらえてのサービスなのだろう……とも思ったものだが、必ずしもそれだけではなかったようだ。
 もちろん、この1勝によって服部が満足したということはあり得ない。しかし、そのすぐあとには、ピットをひとりで歩きながら指をパチンパチンと鳴らしているところも見かけられたのだ。
 この1勝によってホッとできた部分はそれだけ大きかったということだろう。選手にとって地元の記念というものがいかに重い意味を持っているが改めて痛感された。

2009_0803_r10_0674  準優10レース。
 進入から動きがあったこのレースは1着=笠原亮、2着=萩原秀人という結果になった。
 1号艇の菊地孝平は3着、2号艇の佐々木康幸は4着で優出を逃してしまったのだから、静岡勢としては複雑な部分もあるはずだった。エンジン吊りに向かって歩いて行く服部も俯き加減になっていた。
 だが、服部とすればとにかく弟子の笠原が優出を決めたのだから嬉しくないわけはない。やさしい笑みを浮かべて笠原を迎え、そのままモーターを引き取り、格納していた。
 そのように師に迎えられた笠原は、そうしてもらうことをくすぐったがるように照れ笑いを見せていたものだ。

2009_0803_r10_0714  2着の萩原に関しては、ピットに戻ってきた直後の動きは見逃したが、引き上げ時にスリット写真を見て、ふっと苦笑い。
 そのスタートはコンマ02だったのだからそれも当然か……。
 また、その直後にスリット写真を見た佐々木は心底悔しそうに顔をゆがめた。それからしばらく時間が経ったあとにも、やはり悔しそうな顔つきをしていたのだから、その心境が察せられたものだ。
 だが、それからほとんど時間を空けずに、整備室で萩原が佐々木に自分のペラを見てもらっているところを見かけられた。そのときにはもう、佐々木は普段のやさしそうなあまいマスクに戻っていたのだから、ナイスガイである。
 昨日のピットリポートでも書いた言葉だが、こんなところにも“ノーサイドの光景”があるわけだ。

2009_0803_r11_0836  11レース。池田浩二がコンマ09のS一撃を決めた。
 レース後にピットに帰還すると同時に池田は「フゥーッ!」とプロレスラーのような雄叫びをあげて、「オレはやったぞ!!」と声高に言い放った。
 以前にも浜名湖のピットで、池田のこのセリフを聞いたことがあるのだが、どこまで本気で、どこまでギャグなのか……。その辺のところが意外と掴みにくいキャラとはいえる。
 このレースで5着に敗れた松本勝也は、スリット写真を見て、これなら仕方がないかというような表情を浮かべたが、その直後にスリット写真を見た池田は、また「フゥーッ!」。
「スタート安定してるわ、オレ」「有言実行やないか」と、“上機嫌なオレ”のままだった。
 ちなみにこの後にスリット写真を覗き込んだ田中信一郎(10レース出走)は、「バッチリ、20やないか!」と、からかうように弟子の湯川浩司に言っていた。1号艇でコンマ20のスタートから6着に敗れた湯川とすれば、師の言葉に苦笑いするだけだった。

2009_0803_r11_0823  このレースの2着は、2号艇の坪井康晴だ。
 静岡勢は一人だけだったこのレースで優出を果たしたのだから、とりあえずの責任は果たした格好だ。
 しかし、坪井にとってこの2着は、“最低限の責任”といえる結果だったのか、レース後はまさしくそういう表情を見せていた。
 こちらが見ていた範囲では、この結果にホッとしている感じや喜んでいる感じは少しも見受けられなかったのだ。

2009_0803_r12_0933  12レース。このときは、服部をはじめ、静岡勢が集まってモニターを見ていた整備室がにぎやかだった。
 レース前、服部は、「1、2、3、5号艇以外なら(静岡)やな」と笑っていたが(「1、2、3号艇以外なら(東海)やな」だったかもしれない)、スタートとともに整備室には歓声と悲鳴が交差した。「行けーっ!」という声援がまずあがったが、すぐに「あっ、後藤!!」との悲鳴に変わったのだ(6号艇=後藤正宗はコンマ01のフライングとなった)。
 だが、1マークを4号艇の今坂勝広が先頭で回ると、服部と菊地が「オーッ」と歓声をあげていた。その後に福島勇樹が今坂を交わして悲鳴があがったあとにも、接戦の展開になったので、「差せ、差せ、差せる!」「突っ込め!!」といった応援の声が続いた。
 結果は1着が福島で、2着が今坂だった。
 服部ら静岡勢は、まずフライングから戻ってきた後藤をやさしく迎えたあとに(何かの声をかけていたかもしれないが、こうした際には無言で出迎えることも多い)、今坂のことも、よくやったというように出迎えた。

2009_0803_r12_0960  一方、関東勢に迎えられた福島は、満面の笑みを浮かべていた。
 5月の蒲郡周年に続くGⅠ優出で1号艇を手に入れたのだ。
 10レースが近づいていた頃くらいから、顔に緊張の色を浮かべ出していたので、この結果によって、固まっていた表情が一気にほぐれたのは無理はない。
 明日は、2着だった蒲郡周年の上を行く結果を出すことも期待されよう。この12レースでは、“今年の好調選手”として大注目の2人が優出を決めたのだから、明日の優勝戦はおもしろくなってきた。

2009_0803_r12_0967_2  ……なお、準優が始まる前には、3レース後に病院に行っていた濱村芳宏と篠崎元志が荷物を取りにピットに戻ってきていたが、2人とも大きなケガなどはないようだった。
 荷物をまとめながら挨拶していた篠崎に対して、瓜生正義は「大丈夫か?」と心配そうに声をかけていた。その際にもしかしたなら篠崎は、少々気弱な言葉を返したのかもしれない。
「大丈夫! 体が死んでないなら、次やれる!」と瓜生は篠崎を励ましていたのだ。
 そのしばらくあとにも、「ゆっくり帰れよ」と声をかけていたが、瓜生という選手は、後輩たちの面倒見もいいやさしい男だ。
 今日の12レースで1号艇ながらも4着に敗れたのは意外だったが、私の中での瓜生に対する好感度は、さらに上がったものである。
(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/内池久貴)


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篠崎クン…月末にはMB記念も控えてますから、無理をせず、心身ともに調子を万全にして丸亀に入ってほしいデスね(;_;)

投稿者: ゆたぽん (2009/08/03 23:25:59)

『素敵な男達』の見出しを目にした瞬間に「服部サマだ〜」って思いましたよ。ブイブイの服部サマも、パッチンパッチンの服部サマも、「差せ差せ!」の服部サマも…この目で見たい(−_−#)
誰だ、私の見ることの出来ない、飛び切りの服部サマを見た上にそれを見せびらかしてるのはっっ!!

投稿者: 月ちゃん (2009/08/04 0:37:48)
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