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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――12人がいようとも

 わかっちゃいるんだけど、わかっちゃいるんだけど……申し訳ない。やはり今日という日は、気づけば12人を追いかけている自分がいる。決定戦はあくまで前検、少なくとも水面ではシリーズ戦の勇士たちが主役である。それはわかっちゃいるんだけど、わかっちゃいるんだけど……ふと気づくと賞金のジャンパーを見ちゃってるんだよなぁ……。
2009_1218_0878  とてめえの頭をポカポカ叩いていたら、あることに気づいていた。濱野谷憲吾の服装がヘンなのだ。トンチキな格好をしているわけではない。濱野谷が普通のSGジャンパーを着ているのである。
 濱野谷といえば、ベイパイレーツのユニフォーム、そうでなければ賞金王ジャンパーを着ているのが普通の姿だ。そう、賞金王ジャンパー。その濱野谷が、普通のSGジャンパーを着ている。ものすごい違和感、なのである。とんでもない違和感、なのだ。
 ハッキリ言って、似合ってませんよ、憲吾さん! やはりあなたは賞金王ジャンパーが似合う!
 そのへんの話を聞いてみようと思って、濱野谷に挨拶をしにいったのだが、ペラに集中し切っていた濱野谷は、挨拶は返してきたものの、それ以上を拒否するかのように早足でペラ室に飛び込んで行ってしまった。何かの決意、あるのかもしれない。

2009_1217_0048  もちろん、シリーズ戦の選手たちは12人がいようがいまいが、水面で一喜一憂する。3R、中島孝平はスリットから軽快に伸びてマクっていったが、松本勝也に差されてしまった。マクリの宿命とはいえ、悔しさはつのる。
 選手控室の前には、リプレイ用モニターが天井からぶら下がっている。レース後、ひとり見上げる中島がいた。柱によりかかり、腕を組んで、黙々とモニターを見つめる。石のように固まったまま。表情を変えることなく。
 やはり、そこに12人がいることなんて関係ない。自分の戦いは自分の戦い、なのだ。
2009_1217_0346  実は、そのレースを別のモニターで見て、「おぉ、中島孝平!?」と声をあげていた男がいた。鳥飼眞である。「中島孝平!」ではなく、「中島孝平!?」。鳥飼は出走表を持っておらず、「ちょっと見せてもらえますか」と我々の出走表を覗き込んでいる。そこには、本当に中島孝平の名前があった。鳥飼は、レースぶりだけで中島が走っていることがわかったのだろうか。だとするなら凄い。それがまた、敬意がこもっている口調だったのだから、中島も凄い。決定戦とシリーズ戦を走る選手には、どうにもならないほどの大差があるわけではない。シリーズ戦を走る選手たちだって、凄い。改めて言うことではないかもしれないけど。

2009_1218_0323  12人がやって来たことを、歓迎……は言い過ぎだけど、自身の利にしようとする選手たちだっているだろう。3R前には、すでに11艇が係留所に着水されていたのだが、そのうちの1艇、菊地孝平のもとに駆け寄ったのは徳増秀樹である。足合わせをして、その手応えを確認しに走ったのだ。上位モーターが使用される決定戦、そのメンバーとの足合わせは参考材料としてデカい。自分の機力がどの程度かの確認にはなるし、もし自分のほうが強ければ、それは超抜級の可能性をもっていることになる。だから、菊地ではなく徳増のほうが、手応えについてより知りたかったのだろう。もしかしたら、大きな手応えに心湧き立たせて、後輩のもとに駆けていったのかもしれない。
2009_1218_0455  そんな姿を眺めつつ、水面にも目をやると、吉川元浩と鎌田義が足合わせをしていた。たしか、去年もこの組み合わせを見たはずだ。鎌田が吉川のスパーリングパートナーであるかのように、水面を並んで走っていたシーンを。巨大な信頼感のなかで、かたや決定戦、かたやシリーズ戦での活躍を誓って併走する。そんな足合わせを見ながら、吉川は大きな栄誉を得た、今年は鎌田の番だと思わずにはいられない。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)


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