この特集について
ボートレース特集 > THEピット――仲間とともにいる幸せ
この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
ライタープロフィール
カテゴリー
関連リンク
競艇サポーターズ
関連書籍

 ボートレース特集

THEピット――仲間とともにいる幸せ

2009_1217_0531  SG初陣2着。6号艇なのだから、上々だろう。新田雄史は、申し分のない走りで夢の舞台の第一歩を踏みしめた。
 レース後、嬉しそうに微笑んでいたのは、むしろ井口佳典のほうだったように思えた。新田がなかなかヘルメットをとらず、表情が確認しにくかったのもたしかだが、井口は弟子の走りに満足そうに目尻を下げていたのだ。破顔一笑というほどに歯を見せたりはせず、穏やかな笑みを目元にたたえてエンジン吊りを訥々とこなしていく井口。そんな表情に気づいていたかどうか、新田は若者らしくきびきびと動いていた。
2009_1217_0265  新田のモーターを架台に乗せて整備室へと転がしていったのは、井口である。新田は井口のもとに駆け寄って、ヘルメットをかぶったまま声をかけた。振り向いた井口の顔は、やっぱり柔らかな微笑が残っている。新田の言葉に、「おうおうおう、うんうんうん」と優しくうなずきながら、いくつかの返答を投げ返していた。細かい内容までは聞こえてこなかったけれども、おそらくレース内容について、弟子は師匠に感想を求めたのだろう。そりゃあ細かい部分についてはたくさんのアドバイスがあるだろうし、それはきっと控室で、あるいは宿舎で、リプレイを見ながら授けられることになるだろう。そのときの井口はともかく、弟子の健闘をたたえ、喜びを分かち合っているように思えた。
 ヘルメットの奥で、たしかに新田の顔は安堵の色に染まっていたように見えた。

2009_1217_0193  満員御礼のペラ室で、目を引くコンビがあった。山本修一と森永淳である。86期の同期生。森永は今年の総理杯でSG優出を経験するなど、一足お先にこの舞台を何度も走ってきたが、山本のほうは初出場。こうしてSGのピットで行動を共にし、情報を交わし合うことができる幸福を感じているはずだ。
 外から覗いているだけなので、当然会話の内容はまったく聞こえてこないのだが、しばらく見ていると、森永が山本に言葉を投げかけ、山本がそれに応えていくという構図になっているのに気づく。もしそこで交わされている会話が、アドバイスや情報の類いのものであるとするなら、明らかに山本が森永に何かを教えているように見えるのだ。あるいは、森永が山本を頼っているというか。
2009_1217_0433  今回がSG初出場となったのは、たまたまなのだろう。山本には同期も一目置くスキルがあったということなのだ。初陣の場だとは思えないほど堂々としたふるまいをしていた山本は、震えて力を発揮できないというような失態は演じないはずだ。まして同期があと2人もそこにいるのだから、明日からも力を合わせる場面を何回も目撃することになるだろう。

2009_1217_0326  このコンビ、もちろん目にしたことがないはずがないのだが、しかしあまり記憶にも残っていないなあ……というのが、今村豊と寺田祥である。山口同士の2人だから、一緒にいて当たり前、たぶん見てもいるはずなんだけど、妙に新鮮な気がしたのはなぜなんだろう? 今村&白井の師弟コンビや、白井&寺田の同世代コンビは頻繁に見かけるし、記憶にもしっかり刻みつけられているのだが……。 
2009_1217_0496  調整用の係留所で回転数などのチェックをしていた今村に、寺田がニコニコと近づいていった。寺田の切れ長の目が、さらに細くなっていく。今村は、相当に大きい声で寺田に言葉を返しているのだが、モーター音にかき消されて、なかなか届いていかない。他にもモーターを始動して調整している選手はいたが、まずは今村さん自身がモーター止めたら?(笑)寺田の目がさらにさらに細くなっていったのは、今村が渾身のギャグを飛ばしていたのか、それとも。
 ともあれ、そこにはたしかな信頼感が横たわっていたのはたしかなことだった。ミスター競艇が先輩である幸せ、とともに。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)


| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
コメント
コメントを書く




※メールアドレスは外部には公開されません