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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――さあ、戦いの刻

_u4w8670  記者席でもろもろの仕事をこなして、ピットに降りたのは2R終了直後。エンジン吊りをぼーっと眺めていたら、赤岩善生が男っぽい笑顔で声をかけてきた。おそらく一晩、「12分の6」に残れなかった自分と徹底して向き合ったのだろう。表情はかなりスッキリしていて、会話の内容も明るいものだった。赤岩はまた力強い次の一歩を踏み出している。それを感じられただけで、こちらもなんだか嬉しくなった。
_u4w8618  赤岩と別れると、今垣光太郎が早足で歩いている姿を発見。何はともあれ、大きな負傷がなくて何よりだった。今垣はわき目もふらずに整備室に入っていき、のぞいて見ると本体をバラして点検もしくは整備をしていた。転覆したのだから当然の作業、ではあるのだけれど、彼がそれをしていると、また違った意味があるような気がしてくるものである。
_u4w8631  早足といえば、エンジン吊りに向かう原田幸哉も早足。田中信一郎は軽やかな足取りで、菊地孝平は踏み込みが強い。順位決定戦だって、大事な勝負(なんたって1着賞金が賞金王シリーズと同額)。彼らの戦いがまだまだ終わっていないことを実感させられる。
 と、服部幸男が早くも着水準備をしている姿があるではないか。決定戦用カラーリングボートのほとんどが装着場にあったその時間帯、準備をしていたのはひとまず服部だけだった。

_u4w8728  そのとき、すでに着水されていた決定戦ファイナリストのボートは2艇。ひとつは松井繁である。調整用係留所で、厳しい表情を見せつつ、モーターと語り合っている様子。シリーズ組のボートが並んでいるなかに松井の姿がぽつりとあると、そこだけ違った空気に包まれているように見えるから不思議だ。3R発売中の試運転タイムが終わると、松井はゆっくりと艇をボートリフトに進め、いったん陸に上がって、ふたたび作業を始めていた。「ひらめきを待っている状態」と言っていた優出インタビュー。そのひらめきは生まれただろうか。
_mg_0377_2   もう1艇は、田村隆信である。いち早く試運転などもしていた様子で、いったん試運転用係留所でペラをチェックすると、松井のようにゆっくりとボートリフトに向かった。
 その姿に、違和感を覚えた。何かがおかしい。いつもの田村とどこかが違う。
 はっ。オレンジベストを着ているじゃないか!
 オレンジベストとは、体重50kgを切る選手が重量調整用に着用するものである。すなわち、田村の体重は49kg以下になっているわけだ。田村の前検体重は、53kgなのである。住之江に入ってから4kgも減量したのだ。僕は田村のちょうど2倍ほど体重があるから、自分に換算してみれば4日で8kg減らしたようなもの。もしそれをやったらぶっ倒れるだろうし、今節は前検日から体重が増えている私……。もしや、田村はほとんど何も食べていないのではないか。
「いやいやいや、そんなことはないですよ。まあ、2日目くらいはちょっとキツいときもありましたけどね。でも体調はいいし、順調に減ってます。決定戦に照準を絞って減量した? まあまあ、見栄えの問題もあって(笑)」
 たしかにカッコよくなってる……というのは冗談だが(いや、もともとカッコいいっすよ)、今節の田村が一味違って見えたのは、たぶん減量も含めた「決定戦への意気込み」にあったのだろう。メンタル面でもっとも仕上がっているのは、おそらく田村だ。

_u4w8825  そのすぐ後くらいに、瓜生正義が装着したモーターの点検と調整を始めた。それを見て、TVカメラがどどどっと瓜生のもとへ。実に6台のTVカメラが、さまざまな角度から瓜生を狙うこととなった。これ、やりづらいだろうなあ。意識するなっていっても無理な話。そして一方で、自分が年間最大の一戦に出場するということを実感できる一瞬でもあっただろう。この思いを知ることもまた、「来年もこの舞台へ!」の意を強くさせるものだろう。
_u4w8870  その脇をすり抜けるように、坪井康晴が自艇のもとに歩み寄った。ちょうど坪井のボートの近くにいたものだから、当然のように坪井と目が合う。坪井は、ニコニコニコッと笑ってぺこり。うわっ、賞金王決定戦の1号艇に乗る男に、まるでカタいところがないぞ。実際は、緊張感がないわけがない。特別な心境になっていて当たり前だ。しかし、それをほとんど感じさせない坪井の強さには感嘆するほかない。彼をここまでに押し上げた最大の原動力は、その精神力ではないかと思った。
_u4w8902  決定戦1号艇の経験をしている男といえば、吉川元浩である。今回は5号艇、あのときのプレッシャーを思えば、肩に力が入るようなことはあるまい。エンジン吊りでも、中島孝平と並んで歩きながら、笑みすら見える。この男の精神力もまた、すごい。
_u4w8755  6号艇なのだから、本来はさらにリラックスしていてもおかしくない池田浩二だが、僕にはベスト6のなかでもっともカタいのは彼に見えた。チャレカのときも、特に準優で、そんな雰囲気を感じたんだよなあ。もしかして、本当に「サプライズ」を起こすつもり? それって、6号艇からのV? なにしろ、チャレカのときには同じような雰囲気で結果を出しているのだ。緑だからって、甘く見ないほうがいいかもしれない。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)


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