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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THE ピット――シリーズ準優の結末。それぞれの表情

_u4w8612 「やっとスポットの当たるところに出られてたいへん嬉しく思っています。準優のインタビューがなくて、これってSGだったかな、と思っていましたので」
 とは、辻栄蔵の優出共同会見での最初の言葉だ。
 もちろん、うれしげな表情で口にしたジョークなので、会場は笑い声に包まれた。

 シリーズ準優勝戦第一弾の8レース。1号艇の辻が見事に逃げ切り、2着には4号艇の西島義則が入り、広島ワンツーで優出を決めた。

_u4w8995  ピットに引き揚げてきたあと、取材陣は近づくことができないボートリフトの傍で2人は声を掛け合い、互いに笑みを浮かべていたが、報道陣が待ち構えている場所まで歩いてきたとき、西島の顔つきは一転、厳しいものになっていた。
 どうしてだろう?と不思議に思ったが、カメラマンが並んでいる前で顔を引き締め、無言で、うむと頷いたのは、西島なりのダンディズムだったのかもしれない。
 西島にしても、この後に臨んだ会見においては「(この結果は)上出来ですね」と、喜びの表情を見せていたのだ。決定戦と並行して行なわれるシリーズに出場していることでは微妙な感情が残る部分はあるのだとしても、SG優出という結果を喜ばないわけはないし、優出すれば、その上を目指すのは当然だ。

_u4w9006  レース直後、ボートリフト付近で大嶋一也が西島にひと声掛けて、ニッコリ笑い合っていたのが目を引いた。この2人はやはり「イン仲間」ということで、通じる部分があるのだろう。「ダンディ仲間」とだって呼んでいい。
 また、そこから少し離れた場所では、このレースで6着に敗れた濱野谷憲吾が、ヘルメットを半被りしている状態で屈み込んで、服部幸男に対して今のレースを振り返っていた。その表情は相当に厳しかったのだから、濱野谷としてはやはり“優勝ノルマ”に近い気持ちでここに臨んでいたのだろう。
 大嶋と西島が「イン仲間」であるなら、服部と濱野谷は「ペラ仲間」だ。いつも並んでペラ小屋で作業をしていることが多いためか、この2人が話をしている場面はよく見かけられる。私は以前からひそかに2人を「ペラ友(とも)」と呼んでいたのだ。

_u4w9126  第9レース。こちらは波乱の結果で、1号艇=白井英冶が落水。湯川浩司が1着、藤丸光一2着で優出を決めたが、2周1マークで優先順位の判断を誤った中野次郎が23条関連の「順位変動違反」で即日帰郷となってしまった。
 こうした場合、湯川や藤丸ではなく、つい白井や中野の姿を目で追ってしまう。救助艇での引き揚げとなった白井のレース後の表情は確認できなかったが、レース後、福島勇樹と並んで引き揚げてきた中野が首を傾げている姿は痛々しかった。
 その後、即日帰郷を知らされたあとには、慌ただしく荷物を片づけ、ピット内を動き回っていたが、その顔は、無理をして笑みを張り付けているようなものになっていた。今朝のピットで中野の表情を見て、珍しいほど気持ちの伝わってくる顔つきをしているな、という印象を受けていただけに、この結果は本当に残念だ。

_u4w9153  順位変動の対象でもあった藤丸光一は、明日の意気込みを聞かれると、「事故パンなんで無事故完走できれば」と話していたが、それが100%の本音であるわけないだろう。
 その言葉を口にした直後、優勝戦のコース取りを聞かれると、迷うことなく「じっとはしていないと思います」と答えていたのだ。

_u4w9102  このレース後、1着の湯川は拍手でピットに迎えられている。
 地元選手として優出を決めたのだから、これは当然だ。近畿のムードメイカー・鎌田義は「ひゅーひゅー」と、はやしたて、トライアル最終戦を控えていた田中信一郎や松井繁、吉川元浩は、嬉しそうな笑顔を見せながらエンジン吊りを手伝っていたものだ。
「失礼します!」と元気に会見場に入ってきた湯川は、「(4コースに)引いて正解でした」とレースを回顧。
「全体に良くなりました」と、足にも満足げで、「明日はたぶん何も(大きな調整は)しないと思います」「このエンジンでは100%のパワーを出せていると思います」とまで言っていたのだから楽しみだ。

_u4w8556  10レースは、井口佳典が1着、大嶋一也が2着。
 会見の言葉が最も興味深かったのはこのレースだ。
 大嶋の前付けによるプレッシャーはなかったか、と聞かれた井口は、「プレッシャーはなかった」と即答。さらに、「明日やること」を聞かれると、こう返している。
「深いところから練習しておきたいですね」
 つまり、調整のうえでは湯川同様、満足の仕上がりになっているので、明日は絶対にインを死守して、どの位置からでも最高のスタートをできるようにしておきたいということだ。
「ここまできたら優勝しか狙ってないんで」と言い切った表情も、気負いすぎることのない、いい感じのものになっていた。

_u4w9233  また、大嶋一也は、この会見の中でこんな言葉も漏らしている。
「西島はもう外野なんで」
 おお~! 大嶋はこうして西島を見切っていたのか!?
 だとすれば、8レース後に西島に掛けた言葉も、「いい外野になったな」といった類いのものだったのだと想像される。
 イン仲間という生きものたちは、「共棲」よりも「仲間の転向」を好ましく思うのだということを覚えておきたい。
 大嶋はこうも言った。
「明日も、いつもと同じ進入で、コースを取れれば深さは関係ありません」
「いつもと一緒ですけど、勝てるように全力を尽くします」
「スタート勘は今節いいですね。10くらいでいけるんじゃないですか」
 こんな男がいる優勝戦が、面白くならないわけがない。
 明日は、とても前哨戦とは呼べない、真の男たちの戦いが見られることだろう。
(PHOTO/池上一摩 TEXT/内池久貴)


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