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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――緊張

_u4w3140  朝からピットに張り付いていた中尾カメラマンが、「小坂、緊張してるね」と言う。整備室にいた小坂尚哉の顔を覗き込むと、たしかにそんな様子が見て取れる。
 でも、緊張して当たり前。中尾カメラマンとそう話す。2着1本以外はオール1着。準完全優勝を目前にして、震えなければおかしい。ただでさえビッグの優勝戦1号艇は緊張するものなのだ。こうした経験の少ない若者が緊張感を抱いていなかったら、そのほうが心配である。
 小坂は、一心不乱にペラを磨いていたが、それは戦いの準備であると同時に、心を落ち着かせるための行動のようにも見えた。仲間もそうした雰囲気を感じているのだろう。藤岡俊介が整備室にやって来て、そばに寄り添う。藤岡が声をかけるたび、小坂の顔には笑みが浮かぶ。兵庫三銃士の絆は、やはり堅固だ。その後も藤岡は、小坂のそばをなかなか離れようとせず、小坂は笑顔を見せ続けていた。

_mg_0520  1号艇じゃなくたって、緊張して当然。今井貴士も、どことなく雰囲気が変わって見えた。「たぶん、レース直前になったら緊張するんじゃないですかね」とのことだが、そう言うということは、すでに緊張感があるのだ。そしてそれは、今井が本気で勝ちに行こうとしているということ。5号艇だから気楽、というのは本当は正解ではない。何号艇だろうと、1着にしか意味がない優勝戦。SG準優を経験している格上の今井が、2着や3着でいいなどと考えているはずがないのだ。
_u4w3053  同じような雰囲気は、馬場貴也にもあった。言葉を交わすことはできなかったが、間違いなく昨日などより神妙な様子を見せていて、こちらも大一番を前にした特別なムードを発散しているのであった。

_u4w2562  ならば、毒島誠の余裕はいったいなんだ、とも思う。仲間との談笑で見せている笑顔は、予選道中ともなんら変わらないもの。透明感としか表現しようのない爽やかなふるまいは、小坂や今井や馬場を見ていると、かえって不思議に思えてくる。
_u4w2849  新田雄史も同様。飄々とした様子は、昨日までとは何も違っていないように見える。昨秋のびわこ周年で優勝戦1号艇に乗ったときは、吐きそうなくらい緊張したそうだ。師匠である井口佳典が3号艇にいて、その威圧的なオーラにも気後れしていたという。だが、そんななかで優勝してみせたことで、新田はもう何も怖いものがなくなった。「あのとき一生分、緊張したから、もう緊張することはない」と、あの経験を完全に糧にしているのである。
 そう、経験の大きさ。今井にもSG準優の経験がある。馬場には、昨年の地元王座で空回りしてしまった苦い経験があった。毒島も王座優出は2年前に経験している。
_u4w2873  そうなると、大峯豊のしてきた経験もまた、大きいものだろう。初出場で優出、しかもいったん先頭で道中逆転される。2年目も優出するが及ばず。昨年は、準優で悔いを残している。
「今までは優勝戦に乗れることだけで満足していたと思います。でも、今年は違う」
 経験したことをふまえて、自分と向き合った結果、大峯はそんな結論を胸に、浜名湖に臨んだ。そして、優勝戦に乗った。6号艇だからって、大峯は少しも不利だなどとは思っていない。(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)


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