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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――オッサンの戯言

 思えば、新鋭王座決定戦のピットに入るのは、5回目である。いちばん最初の唐津には、まだ銀河系軍団がいた。笠原亮や中村有裕もいた。あのときに出場していた若武者たちは、すべて新鋭を卒業している。
 翌年、我々はSports@Nifty競艇特集の取材班であると同時に、BOATBoy編集部として、大村の新鋭王座に参戦している。あの日を思い出せば、……そう、あのときピットにいた若者が、今年も浜名湖のピットで存在感を見せつけていることに気づかされる。
 最年長の吉川喜継でも取材班のオッサンたちより一回り以上年下という若者たち。大村の新鋭王座のときには、さらに3歳も若かったのだ。岡崎恭裕はまだハタチだったのか……と気づいて、しかし現在の23歳でも相当に若いことに呆然とさせられる。言っておくが、このハゲデヴオッサンにも23歳だったことはある。でも、それが自分でも信じられないほど、彼らの若さが眩しく見える。
2010_0121_0100  3年前、我々は当時まだ無名で、しかもA2級だった大峯豊の快進撃に驚かされたものだった。水神祭を果たしたときの大峯のことは強く印象に残っている。初々しい笑顔で、オッサンから見ればかわいらしい若者。こちらの質問に照れくさそうに答えた大峯が、だからまさか優出まで突っ走るとは想像できなかったし、優勝戦でいったん先頭を走ったときには腰を抜かしそうになった。ハッキリ言って、ピットでの大峯には荒々しいところを微塵も感じることはなかった。背は高いけど、キュートな若者だったのだ。
 強い緑色のウェアに身を包み、大股で、しかも早足で、力強く整備室に向かう大峯豊が、目の前を横切る。若者って、本当に変わっていくものだなあ、とオッサン丸出しの感想を抱く。3年前を思えば、大峯がこんなにもたくましく、強烈で巨大なオーラを発散させられる男になるとは、やっぱり想像ができなかった。その片鱗は、2年前の丸亀新鋭王座ですでに見せてはいたけれども、卒業期を迎え、有力選手として登場した今年の姿を見れば、そのすさまじいばかりの成長ぶりには、改めて驚かされるばかりである。
 カッコ良くなったぞ! やっぱりオッサン丸出しの感想が浮かんでくるわけだが、さすがにそう声をかけるわけにもいくまい。実際、今の大峯は軽口を叩いたりするのをためらわせるような、強者の雰囲気をもっている。
2010_0121_0017  毒島誠も、大村のピットに姿があった。毒島もまた、ころころと笑顔を向けてくるキュートさをもっていた。大峯よりもっと人懐こい感じで、10mほど先から大きな声で挨拶をしてくるような若者だった。顔を合わせたとき、こちらが振ったわけでもないのに、モーターの手応えを説明してきたこともあったはず。語弊のある言い方かもしれないが、子供のような天真爛漫さがあった。
 そうした朗らかさは、今年の毒島もそうは変わっていない。人の良さそうな笑顔を向けてくれる機会も、3年前と同じくらいにある。しかし、やはり毒島もたくましくなった。後輩である金子拓矢や土屋智則にアドバイスを送っている表情は、ハッキリと大人の顔つきである。同時に、一流選手のそれでもある。まだ胸を借りる立場だった3年前、しかし今は逆に胸を出して後輩のぶちかましを受け止める立場。記念戦線に入ればまだまだ若手であることに違いはないが、この浜名湖での毒島はどこから見ても上に立つ者の風格がある。オッサンとしてはやはり、つい目を細めてしまうのである。
 大峯も毒島も、4度目の新鋭王座。そして、これが最後の新鋭王座。3年前にピチピチの若さを発散していた2人が、最年長期として仁王立ちしている――それがなんだか非常に素晴らしいことのように思えて、実に感慨深いのである。って、やっぱりオッサン丸出しの感想ですけどね。

2010_0120_0133  となれば、あの大村にやはり参戦していて、今年が最後の新鋭王座となる濱崎直矢にも頑張ってもらわねばなるまい。快調にポイントを積み重ねた大峯と毒島に対し、濱崎はやや苦戦気味である。存在感ウンヌンなどという前に、右に左に走り回る時間を送る濱崎なのだ。ピット内を移動する何度か濱崎を見かけたが、その7割くらいは走っていた。係留所のほうから。控室のほうから。整備室の中から。濱崎は不調に喘ぐモーターとは裏腹に、ピットでは回転をばりばり上げて駆け回っているのである。
 キリリとした凛々しい顔つきは、3年前も今も変わらない。だが、浜名湖ピットでの濱崎の奮戦は、責任感のあらわれでもあるのではないかと思う。濱崎は過去3回の王座で、準優に進出したことがない。意外な気もするが、濱崎の王座の歴史は苦戦の歴史でもあるのだ。今回もまた、思うままにならない予選道中。しかし、最後の王座で同じテツを踏むわけにはいかないだろう。昨年の当地新鋭リーグ覇者として、優勝候補の一角にあげられた以上、このままで終わることはできない。そんな思いがこれまでに比べ、強くて当たり前なのだ。
 明日は厳しい条件の勝負駆け。それでもきっと濱崎は、今日と同じように、最後までもがいて見せてくれるだろう。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)


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