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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――準優の朝ものどか

2010_0625_0155  時折、強い雨が叩きつける準優の朝。まあおおむね、準優組は動き出しがもう少し先だから、あまり雨に打たれずに済むのかなあ……などと思っていたら、係留所に森高一真の姿があった。この動き出しはかなり早い。
 一昨日だったか、TOPICSのほうに書いたが、森高のアシは悪くないと思う。道中でやや強引な先マイをして、普通なら大きく流れてもおかしくない態勢をグイッと残したシーンがあったのだ。それが奏功して、着順をひとつ上げていた。SGでは苦戦を強いられることも多かった森高だが、今回は戦える。そう思っていた。
「出足がまったくや。回ってからまったく押していかん」
 今節、一貫してその言葉を森高は繰り返している。先のシーンをぶつける。
「かかりだけや。そこから押していかんからな」
 つまり森高は、他にいい部分があるのに、出足が悪いことですべてをネガティブに塗りつぶしているのだ。一本気な男らしい考え方だ。ならば、出足が来れば完璧ということか。
「出足が来れば、な。今日はこれからそのために仕事や。あとひと踏ん張り? 準優やで。明日、もうひと踏ん張りするんや。な?」
 ギアケースを外しながら、にやりと笑った。そこからは、昨年のチャレカ(準優で2着を走りながら道中逆転される)を中心に雑談気味の激励。あのチャレカ準優は、ピットで腰が抜けた。
「今日は腰抜かささんようにするわ。ガムシャラに走るで」
 にこりと笑って森高は整備室へ。明日ひと踏ん張りするための仕事に取り掛かっていった。

2010_0624_0477  早い時間帯にボートが着水していた準優組は、ほかに秋山直之のみ。秋山は、出走ピットの裏手にある、バックが公園の木々に囲まれた係留所の端っこにボートを置いて、回転調整などを行なっていた。その係留所には選手の数も少なく、秋山はひとりポツンとたたずんでいる。おそらくその場は、周囲から隔絶されたかのような静けさがあるはずで、秋山はその空気に包まれて闘志と機力を高めていこうとしているのだろう。今節、正直ピットでの雰囲気はあまり目立っていない秋山だったが、今朝のその姿は強烈に印象に焼きつく。
2010_0624_0381  着水の準備を始めていたのは、池田浩二と今垣光太郎。今垣はいつもどおりに、丁寧に、執拗に、細かな部分にもこだわって、装着作業をしている。池田も同様だ。ボートに乗り、キャブレターをじっとにらみつけながら、その付近を細かく微妙にいじっている。集中力が必要そうな作業だ。クールに見える池田のマスクだが、その奥には職人の本質がうごめいている。
2010_0625_0109  やがて、赤岩善生も装着場に姿をあらわし、定規などを使ってモーターの取り付けを確認し始めた。今日も男らしい顔つきで過ごしている赤岩だが、気のせいだろうか、昨日までより表情に穏やかさが差してきたように思える。レースが近づけば、ふたたび闘志が盛られていくだろうが、朝の段階では目元が普段より柔らかく感じた。
 さらにあらわれた吉川元浩は、笑顔も見えるほど、リラックスしているようだ。こちらも着水間近なのだろう、装着作業を始めていて、昨日までとは特別ちがうような部分は見当たらない。つまり、いつも通りの強い吉川がそこにいるわけだ。
2010_0625_0039  気分が柔らかそうだったといえば、松井繁も忘れてはならない。松井とは、アリーナから装着場への入口でばったり会った。決して広くない大村ピット、特にこの入口付近は狭くなっていて、しかもアリーナからは右に曲がりながら入口をくぐるような感じになっている。つまり装着場からアリーナに出るには、入口をくぐりながら左へ。アリーナに向かおうとして、左に曲がった瞬間、右に曲がろうとしていた松井とばったり会った、のである。いやあ、驚いた。誰かとぶつかりそうになって驚き、それが王者でひっくり返りそうになった。のけぞりながら、挨拶をすると、松井は力強く「おはようっす!」。どれだけピリピリしていても、挨拶を投げれば投げ返してくれる松井だが、こんなにハッキリとした声で、強く返してきたことは今までに記憶がない。その後、ペラ室に入っていった松井をアリーナからUターンして覗きにいったが、周囲と話しながら笑顔も見えていたのだから、気分が良さそうなのである。

 いったんピットを出たのは3R前。それまでに飯山泰と白井英治以外の準優組は姿を見かけたが、比較的のんびりした始動で、特にプレッシャーいっぱい、緊張感いっぱいの選手は見当たらなかった。一節を通して感じられるのどかさは、準優の朝でもそう変わらないのだ。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)


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