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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――珍しい光景?

2010_0624_0770  松井繁が妙にすっきりした顔をしている。
 こんな松井を後半のピットで見たことがあっただろうか……と考えて、松井が8R1回乗りなんてことがあっただろうか、と疑問を変更する。松井が終盤レースに出ないなんて、準優を外した節の最終日以外、ようするに予選道中に関しては、本当に珍しいことではないか。しかも、その8Rは2号艇でインコースをゲットして、逃げ切りの1着。準優当確を決めるイン逃げだったのだから、すっきり度がさらにアップしていて当然だろう。
 圧倒的な威圧感を発散する松井はもちろん魅力的だが、こういう松井もいいなあ、と思う。もちろん、ペラ室にこもれば、視線は鋭くなる。ペラ室を出た直後も、目つきに余韻はある。だが、エンジン吊りで姿をあらわしたときには、もうすっきり。仕事のあとの解放感のようなものもそこにはあった。
 その松井と大嶋一也の痺れる会話が少しだけ耳に飛び込んできた。完璧に聞き取れたわけではないのだが……。
「先輩が○○○○するから、僕もインとらなあかんと思って」
2010_0624_0745  大事な部分である○○○○が聞こえなかったのは残念無念。しかし考えられる内容は2つあって、①いつもインにこだわるから②カドまくりを決めたから、であろう。①なら、大嶋のスタイルへのリスペクトであり、②ならそれも含んだ今日の2Rへの称賛である。大嶋は照れたのかどうか、ふふふと笑みを返しただけだった。
 また考える。松井と大嶋がこんなふうに話している姿を見たことがあっただろうか。あまり記憶にない。ただ、通じるものはお互いにあって当然。それが、たまたまエンジン吊りに並んで向かった際に発露されたのであろう。
 愛知と大阪、もちろんエンジン吊りで向かう先は違う。松井はひとつ笑みを投げて、奥のほうへ。大嶋は、それでも変わらず淡々と手前のほうへ。大嶋の背中が誇らしげに見えたのは、気のせいだったか。

2010_0623_0205 市川哲也は悲壮な顔をしていた。
 噴かないエンジン。しかも今日の前半で転覆。開会式では「絶不調です」とおどけ気味に言っていたものだが、しかし本人の心を覆う暗雲は厚い。
 後半レースを終えると、市川は本体を外し、えっちらおっちらと抱えて、整備室に持ち込んでいる。冴えない表情で工具を操り出すと、整備士さんたちも心配な表情で市川のもとに寄り添った。ここから、懸命な整備が始まる。モーターの2連対率は40%を超えているのに、なぜ思ったように動いてくれない……。
2010_0622_0686  そこにやってきたのは田中信一郎だ。眉間にシワを寄せ、整備士さんや市川本人よりも苦しそうな表情で、市川の様子を見つめる。そして、何かを訴えるように、整備士さんに話しかける。市川ともいくつか言葉を交わし、その間じゅう、田中も市川も顔は晴れない。整備室の中のことなので、声はまったく聞こえてこない。だが、田中が市川の不調に深刻な気遣いをしているであろうことは伝わってきた。10年以上も頂点をめぐって戦ってきた二人。だからこそ、たとえ水面では敵同士でも、思い入れは深い。整備室を出たあとも、田中の顔はしばらく厳しいものになっていた。さらに懸命な整備を続けた市川の顔も。
 ちなみに、この時間帯は整備室がラッシュ状態。瓜生正義、森永淳、安田政彦、横西奏恵らが本体整備に懸命な姿を見せている。どの顔もそれぞれに、厳しさをたたえていた。

2010_0624_0497  中尾カメラマンがこんなことを言っていた。
「光ちゃん、いないんだけど」
 そんなわけはない。途中帰郷ならば、ニュースはすぐに伝わってくるはず。というか、僕は今垣光太郎の姿をちゃんと目撃している。
 たしかに、いつもの場所にはいない。いつもの場所とは、装着場か整備室。執念を感じさせるほどにモーターと向き合い、セッティングにこだわり、装着する際には微細な個所まで徹底的に点検する今垣は、装着場が主要な取材場所である我々にも比較的目につきやすいところにいることが多いのである。
 今日の午後、今垣が根城にしていたのは、ペラ室である。もちろんどの節でだって、ペラ調整をしないわけがないのだが、これほど長い時間ペラにつきっきりということは、たしかに珍しい。ペラよりもまずはモーターというのが今垣のスタイルのはずだから、それを知っている中尾カメラマンが「いない」とか言うのも、まあ自然といえば自然なのだ。
 10R後、ペラ室を出ると走って控室に向かったので(帰宿の一便に乗るのだろう)話はできなかったが、このパターンのときの今垣といえば、間違いない、モーターに不安な点はないということだ。その珍しい姿は、ポジティブな姿。グラチャン2連覇への視界は、はっきりと開けてきている。
(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)


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コメント

こんにちは!いつも更新を楽しみにしています、一人の読者です。
気になることがあったので初カキコをば・・・
松井選手が大嶋選手に言った〇〇〇の部分は、フライングじゃないですか?いえ当然現場には居ませんでしたのでただの勘ですが、何とはなしにそう思いました。
どのような答えであれ、松井さんが大嶋選手を尊敬しての発言でしょうね!

投稿者: 一読者 (2010/06/24 19:03:49)
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