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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――ペラ調整室の面々

2010_0621_0233  入り待ちの原稿を書き終えたのが午後1時すぎ。さてひと休みしようかと立ち上がった途端、1艇のボートが水面へ駆け出してきた。まずい、試運転がもう始まった。休んでいる場合ではない。急いでピットの様子を見に行った。
 しかし行ってみるとまだピット内の装着場にほとんどのボートが止まったままだった。試運転に出ている選手は2、3人ほどだ。まだ整備室でモーターを受け取ったばかりの選手すらいた。聞くところによると最初に試運転を始めたのは田中信一郎。彼はいつも断トツの一番乗りで水面へ出ていくらしい。それを知っていればひと休みしてからピットに行けたのに。SG取材経験の少なさをいきなり露呈してしまった。

2010_0621_0559  しばらくすると各選手が次々と水面へ降りていき、ピットの中が閑散とし始めた。静けさの中で10人ほどがモーターの装着作業を進めている。するとその静寂を破るように、ブルルルルッと電動ドリルの大きな音が響いた。その音は2回、3回と繰り返される。
 音源にいたのは今垣光太郎だ。今垣はボートのカウルについたネジにドリルを差し込み、力いっぱい締め込んでいた。この光景は今まで何度か見たことがある。カウルにわずかな隙間があると、そこに空気抵抗が生じてタイムロスにつながるのだという。ロスといってもおそらく3周でコンマ1秒あるかないか。それでも今垣はきっと毎節これをやっているのだろう。ちなみにしばらく後には平田忠則も同じ作業を行なっていた。

 14時になるとスタート特訓と前検タイム測定が始まった。ここからは選手も記者も慌ただしさを増し、ピット内は喧騒に包まれる。そんななかで気になったのはペラ調整室の様子だった。整備室や装着場が人の往来でごった返すなか、ペラ調整室には別の空気が流れていた。
2010_0621_0573  最初にペラを叩きにきたのは地元の石橋道友だった。すぐあとに池田浩二が入ってきて石橋の隣に座り、何やら言葉を交わしながら作業を進めていく。そのあとにペラ調整室へ来たのは坪井康晴、市川哲也、田中信一郎、今村豊といった顔ぶれ。市川はゴンッという大きな音を立てながら何度も力強くハンマーを振り降ろしている。田中はココンッココンッと小気味良いテンポで金色のハンマーを刻んでいる。
 一度だけドゴッという明らかに変な音が響いたことがあった。どうやら市川がペラを叩き損ねたようで「アッ!」という顔をしている。ただ大事には至らなかったようで、すぐにホッとした表情に変わった。それを見た田中が「ドンマイ!」と笑顔で声をかける。そしてまた2人は自分の作業へ没頭していくのだった。

2010_0621_0259  ちょっとペラ調整室を離れて整備室を見に行った。そこでは西島義則と安田政彦が本体を割って整備に取り組んでいた。西島が手にしたモーターは2連対率32%の20号機、安田のモーターは2連対率30%の53号機だ。西島はこれまでに何度も序盤からの整備で栄冠を勝ち取ってきた選手。今年の名人戦でも初日にリング2本を交換して結果的に優勝へたどり着いている。西島の本体整備にネガティブイメージはない。むしろ明日の動きが楽しみになってきた。
 整備室の奥では人だかりができていた。ギアケースの調整を行なう場所だ。奥まった場所にあるのではっきりとは確認できなかったが、服部幸男や湯川浩司、横西奏恵、平2010_0621_0565_2 石和男らの姿が見えた。といってもこの場所は人の入れ替わりが激しく、しばらく後に見た時はまったく別の顔ぶれで満員となっていた。おそらく半数以上の選手がギアケースの調整を行なったと思われる。

  最後にもう一度ペラ調整室を覗いてみた。そこにいたのは今村、市川、田中、坪井ら。メンバーはほとんど変わっていなかった。この4人が今日のペラ調整室滞在時間トップ4といって間違いないだろう。その他の選手がほとんどペラを叩きにこなかったのと対照的に、この4人は長い時間をペラ調整に費やしていた。この結果が明日のレースでどう出るのかは正直言ってわからない。ただ注目してみたい選手としてノートにメモっておくことにした。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/森喜春)


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