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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――雨!

 雨である。
 湿度は常に高い梅雨時ゆえ、調整の方向はそう変わらないだろうが(この時期は回転が上がりにくいので、上げる方向での調整)、しかし昨日までは好天に恵まれたのだから、しかも今日は勝負駆けなのだから、選手たちは多忙となるであろう。
 ……と思ったら、そうでもなかった。さすがにペラ室は満員であったが、これは昨日までとも変わらない光景。整備室に選手は少なく、装着場もガランとしている。なにしろ、装着場には正真正銘、僕だけしかいないという時間帯があったりしたのだ。選手の動き、姿はあまり見かけられない、不思議な前半戦であった。
2010_0624_0032  整備室には今村豊が。勝負駆けのための勝負整備。本体内の接地面を完全に平らにする、という凡人には気の遠くなる調整をしていたようで(長嶺豊さんに教えてもらった)、選手たちはそこまでするのか、とあらためて感服。そんな微細な調整の最中でも、今村は整備士さんたちを笑わせたりもしているのだから、そのお人柄にはただただ尊敬である。
2010_0624_0777  やがて、整備室には市川哲也と横西奏恵がこもっている。閑散とした装着場にボートを並べ、二人そろって本体を外す。二人は談笑しながら作業をしていて、ときどき市川の大きな笑い声も聞こえてきたり。凡機に苦しむ者同士、通じ合うものがあるのか。それともお互いの機力を嘆き合っていたのか。表情に暗さはまるでない二人だったが、整備に取り掛かればやはり眉間にシワは寄る。予選突破は絶望でも、あと2日、この状態でレースをするのは耐えられない、とばかりに、整備にも渾身をこめて取り組んでいる。

2010_0624_0827  レースを見るため、アリーナ席へ。ここは完全に屋外だから、さすがに今日は選手の姿はない。屋根のある喫煙所周辺には選手が何人かいて、遠目にそーっとのぞくと、徳増秀樹が何か考え込んでいた。視線を下げ、じっと一点を見つめ、微動だにしないのだ。そういえば昨日、装着場で同様の姿の徳増を、中尾カメラマンが見たと言っていた(写真)。ボートのカウリングにひじをつき、そのまま身じろぎもしなかったそうなのだ。レースの作戦を練っていたのか、今後の整備の方向を探していたのか。レースにしても、整備にしても、その作業をすることだけを指すものではない。こうして脳内コンピュータを高速回転させることも、レースであり、整備なのだ。
2010_0624_0734  そのかたわらでは、太田和美が柱にもたれかかって、水面をじっと見ている。こちらもレースの戦略を練っていたのか……と思いきや、周囲にいた選手に話しかけて、笑いをとったりもしていた。今節は、こんな太田和美を何度も見ているような気がする。中尾カメラマンの写真には積極的に視線を送っているし(写真は昨日、エンジン吊りに向かう際のもの)。

 選手が右へ左へと忙しく動く姿を見られるのは、エンジン吊りのときだけだ。大村のピットは決して広くないので、狭い空間に選手が密集し、それでもテキパキと作業をこなしていく。
2010_0621_0385  3R、2着の辻栄蔵がにこやかに笑うまわりに、西島義則、市川哲也、白井英治らの笑顔があった。ここまで這いまくっていた辻は、ようやく2着。不思議なことに、惨敗のときほど爆笑ぎみに笑っていた辻は、好着順を得ると穏やかな笑いになっている。そのかわり、周囲は爆笑ぎみの笑顔になっていて、西島あたりが辻をからかうとさらに周囲の笑いは大きくなった。不調だった仲間に光明がさすと、周りの選手も嬉しいんだろうな。予選突破は絶望、しかし辻の周りには幸せな空気があった。
 とにかくジメジメジメジメジメジメとしている今日。辻の周囲のような空気を感じると、少しだけジメが削られていくようだ(それでもジメジメジメジメくらいはあるけど)。午後は勝負駆けが激烈になっていく。どれだけ幸せなシーンを目にできて、ジメがなくなっていくだろうか。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)


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