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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――気分が揺らぐSG準優

 予選1位の今村豊が1着で優出、1号艇では濱野谷憲吾も勝利をあげた。1号艇が飛びまくることも珍しくなかった今年のSGにおいては、結果だけ見れば順当のようにも思える。でも、とても一筋縄ではいかなかったMB記念準優。ピットで僕の気持もゆらゆら揺れる。
2010_0828_0140 ●9R、フライングを切った徳増秀樹の硬直した表情
 フライングを切ってしまった選手の姿を見るのは、本当にツラいものだが、それがSG準優ともなると、ツラいなんてもんじゃない。多額の返還金を出してしまったことへの罪悪感。優出を逃してしまったことへの悔恨。SGの出場権を向こう4つも手放さねばならない無念(徳増はダービー出場予定だった=柏野幸二が繰り上がり)。いろいろなものがゴチャ混ぜになって、誰もが顔面蒼白となる。徳増はレース後、すべての選手に詫びて回っていたが、外野としては「いちばん悔しいのに、そこまでしなくても……」と同情してしまう……。
2010_0828_0313 ●9R、2マークで菊地孝平の突進を受けた福島勇樹の憮然たる表情
 このレースは、2番手がもつれた。徳増は差して2番手を走っており、しかしこれはリタイアとなる。その後ろだ。内を伸びていた福島に、菊地が突進して接触。吉田俊彦はその外を大きく回り、内を差した仲口博崇が2番手に浮上している。もし福島がすんなり回っていたら、たしかに2着があったかもしれない。それだけに……。好漢・福島のあんな表情は初めて見た。緑の勝負服を脱ぎ捨て、小さく蹴りを入れる姿も。菊地はもちろん詫びに来ているが、それに対しても小さく会釈を返すのが精一杯の様子だった。
2010_0826_0241 ●10R、転覆した辻栄蔵の悔恨
 まさかの1マーク転覆。幸いにもケガはなさそうで、転覆整備のあと様子を聞いてみると、「大丈夫ですよ!」と快活に返してくれている。そもそも陽気な辻栄蔵、着替えを終えると広島勢の輪に笑顔で合流して、仲間とともに明るくモーターを組み直していた。だが、一人になった辻は、おもむろに頭をかきむしり出している。1号艇をモノにできなかったことは、やはり後悔しか残さないのだ。実は、声をかけたのは、そんなタイミングだった。辻はすぐに笑顔に戻って、こちらに対応したのだった。
2010_0828_0222 ●11R、須藤博倫の優しさ
 3コースとなってしまったことなのか、それとも単に敗れたことなのか。ピットに戻ってきた須藤は、まず悔しそうな顔つきを見せている。そのすぐ後には、もつれて転覆となった平尾崇典の様子を気にし始めていた。片付けがすべて終わると、医務室に向かう姿も目撃している。そんな晴れない気分のなか、もちろん顔つきも神妙なのだが、そこで平本真之とすれ違った瞬間、即座に「おめでと! よかったね」と声をかけている。ヒロリン、優しすぎる……。それだけに、優出を決めてほしかったと心から思った。

 とまあ、ダウン気味になったシーンを一気に書いてしまった。ここからは、明るい話だ。
2010_0828_0055 ●今村豊、高橋節がお気に入り
 展示の準備に向かおうとした今村、装着場で関係者と話す重成一人を見つけると、ニヤニヤしながら近づいていった。そしておもむろに……
「グググイィィィィィッとぉぉぉぉぉ!」
 蒲郡のスーパーアナウンサー・高橋貴隆さんのモノマネ! これは貴重です。その後も何度も「グググイィィィィィッとぉぉぉぉぉ!」と叫び、いったい何のアピールだったのかよくわからんまま、展示ピットへと歩いていったのだった。これから予選1位の準優1号艇を戦う人とはとても思えませんな。さすがミスター競艇、なのである。
2010_0828_0135 ●仲口博崇の思い入れ
「僕の状態が最近は悪くて、まさかMB記念に呼んでもらえるとは思わなかった。こんな状態でも呼んでもらえたので、久しぶりのSGだし、挑戦者の気持ちで、自分でもまだ通用するのか確かめるために、51人にぶつかっていこうと思ってました」
 せつない言葉だと思う。今、SGにもっとも近い男といえば、白井英治だが、もともとはこの人がそう呼ばれていたのである。しかし、そう呼ばれているうちに、成績が急下降していった。SG戦線からも遠ざかった。A1級陥落の危機すらあった。そうした臥薪嘗胆を乗り越え、優出を果たしたということ。これは大きな意味のあることだと思う。仲口自身、崇高な思いを抱えているはずだ。
 ちなみに、今村はこう言っている。「仲口くんが出ている。同じスタートタイミングだったら、まくられますね」。これに「濱野谷くんか中島くんに止めてほしいです」と付け加えて報道陣を笑わせるあたりがミスターらしさであるのだが。また、今垣光太郎はこう語る。「仲口くんがすごく出てます。明日は、まくり差しの展開がありそうなので、すごく楽しみです。だからコースは動かず5コース」。すでに優勝戦のイメージが出来上がっているのもすごいことだが、今垣をワクワクさせるアシであるということは、頭に入れておくべきだろう。
 その伸びを武器にまくり切ったら……我々は最高に感動的なラストシーンを目撃することになるだろう(その場合は表彰式必見!)。
2010_0828_0094 ●おめでとう、平本真之!
 実は、平本の優出はあっさりとは決まらなかった。1周2マークの逆転シーンで、池田浩二と接触していたシーンが審議となったのだ。もちろん、不良航法か否か、である。
 レースを終えてピットに戻ってきた白井英治に、上瀧和則が「優出おめでとう!」と大笑いしながら語りかけた。もちろん上瀧は判定を知っていたわけではなく、レースを見ていてその可能性があると判断したから、半ばからかうように白井に声をかけたわけだ。白井は「ウソッ!?」と目を丸くしたが、もちろんその時点では何とも言えない。その上瀧と白井のやり取りに周囲が爆笑の連発となったことから、平本は当然、不安げな表情になるわけである。
2010_0828_0526  この審議がまた長かった。二人とも着替えを終えて、すぐにでも共同会見に出られる態勢なのに、決まらない。平本は、当てにいったわけではなく、池田がターンマークを外した内を突いただけだから、反則はしていないと確信はしていたようだが、しかしジャッジは当事者の意向と重ならないことも多々あるものである。選手用喫煙所には白井の姿もあり、こちらもすぐに会見に向かえる態勢。平本の顔つきがどんどんと不安げになっていくなかでも、判定はなかなか届かなかった。
 結果は、もちろんセーフ! 競技本部から呼び出しのアナウンスもあったため、平本は先にそちらを済ませようと向かい始めたのだが、その途中でセーフの知らせが届き、会見場へUターン! 優出の知らせを知った報道陣が万雷の拍手を送る中、平本は笑顔で会見場への階段を上って行ったのだった。
 SG初出場初優出、すごいぞ!

2010_0828_0543  最後に他の優出選手。濱野谷憲吾は「優勝できるアシ」とハッキリと言った。最近は機力不足を嘆くことばかりだったSG優勝戦での会見。間違いなく、濱野谷は今回、優勝を本気で狙いにいくはずだ。肋骨はもちろん、気にする必要はない。
2010_0828_0540  中島孝平が饒舌だったのには驚いた。「宿舎で、今垣さん、(中村)有裕と一緒なんですけど、リズムがいいから大丈夫、大丈夫、って言ってくれるんですよ。僕的には上がったり下がったりって感じなんですけど」。そういうこぼれ話的なことをしてくれる人という印象はなかったのだが。本人が感じていることはともかくとして、これがリズムがいい証だろう。
2010_0828_0196  そして、今垣光太郎。先述したとおり、すでに優勝の展開を頭に思い描いている。蒲郡との相性は最高であるわけだが、その契機が初めてMB記念に呼ばれた際、「岩口(昭三)さんはバリバリのSGレーサーで、僕はまだ6点A1だったのに三国に選ばれたんですが、2日目で準優が絶望になったんです。それがもう、今までで三本の指に入るくらい悔しくて。それが蒲郡だったんです」。好漢・今垣光太郎も、やはり勝負師。そうした悔しさを糧にして、大きくなったのである。蒲郡への思い入れは、地元の仲口にも負けていないのかもしれない。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)


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