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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――勝負駆けって……

2010_0827_0489  ピットの空気がとたんに痛々しくなる。12R、1周2Mで篠崎元志が転覆した。以前に書いているが、選手控室はまさしく2マークを正面に見据える場所である。この12Rでは、杉山正樹と石橋道友の87期コンビが、外に出てきて観戦していた。その目の前で起こった転覆。あぁっと小さな悲鳴がいくつも重なり、杉山と石橋は落ち着かない様子で2マーク付近の水面に落ちた篠崎を見つめていた。
2010_0827_0217  真っ先に控室から飛び出してきたのは、山口剛である。レスキューの発着所に駆け寄り、救助されている篠崎の様子を心配そうに眺める。やがてレスキューがピットに戻ってくると、担架を探して右左へ小走りし始めた。それに呼応したのは吉田俊彦。吉田もまた、心配そうに顔を歪ませている。
2010_0827_0523  松井繁もあらわれた。はっきりと顔が曇っている。やや遠巻きにレスキュー上の篠崎を眺め、ソワソワしたような様子を見せていた。あと何人かの選手の姿があったが、僕もなんだかソワソワしてしまって、あとは誰がいたのかを思い出せない(魚谷智之は覚えている)。
2010_0827_0362  担架に乗せられた篠崎は、医務室へと運び込まれる。右手でヘルメットのバンドを外そうとしていたから、意識はハッキリしていたのは確かだし、腕がダラリと垂れてもいなかったから、上半身の大きなケガはないように見えた。だが、その痛々しい姿は、やはり直視できない。したくない……。
2010_0827_0429  妨害失格をとられた井口佳典が、ボートリフトのほうから走ってきた。1周2M、井口は猛然と突進し、篠崎に接触しているのだ。井口の顔色は、明らかに悪かった。責任感、いや、罪悪感に苛まれた表情は、こちらもまた痛々しいものだった。相手にケガをさせてしまうことは選手にとってもっとも恥ずべきこと、というのが選手道である。井口は、心に重いものを抱えながら、医務室に走ったのだった。
 井口の表情を見ながら、僕も複雑な思いを抱えるしかなかった。3着条件だった井口は、何としても着順を上げたかった。それが勝負駆けというものである。時にこうした激烈なシーンがあらわれるのがボートレースというもの。妨害失格をとられたわけだから、あの走りを肯定するわけにはいかないが、勝負駆けを100%以上の力で走ろうとした井口の思い、胸の内について否定したくない、とも思う。それにしても度を超えていた、という意見もそのとおりなのだが……。レースという競技で起こりうるツラすぎる場面に、僕はパニクっていたのである。
2010_0826_0202   その間にも12Rをゴールした4人はピットに帰還するわけだから、選手はエンジン吊りに出向かねばならない。篠崎の様子を見守っていた吉田俊彦と魚谷智之が、医務室に入って行ったのを見届けると、猛然とダッシュしてリフトに向かった。篠崎の容態は気になる、でもエンジン吊りの人手を減らすわけにはいかない。強く引かれる後ろ髪を断ち切るかのように、吉田と魚谷は全力で走っているようだった。
 僕も、完走した選手たちの様子を確認しなければ……とリフトに向かうが、どうにも気持ちが入らない。池田浩二はホッとした様子だ、平尾崇典が池田に駆け寄ったぞ、今村豊と菊地孝平が大声で語り合って、大笑いしている……事実だけが漫然と目に飛び込んでくるだけだ。いかん、外野でしかない僕が妙な精神状態になっている。
2010_0826_0832  記者席に戻ると、篠崎元志が準優を走るという知らせが届いた。まずはホッとした……というわけで、こうして筆を進められているわけである。なんとか出走表に名前が載って何より。明日は悔いのない戦いをしてほしい。優出を決めてしまえば、今日の痛みも忘れられるはずだ。頑張れ!

2010_0827_0599  とまあ、最後の最後にすっかり篠崎の容態に気を取られてしまったのだが、明るい話題ももちろんある。平本真之だ。SG初出場で準優進出。快挙とはいわないが、拍手すべき健闘である。その平本が、10R前に試運転をしていたのだ。今日は3R出走だったから、もはや休息の時間となっていてもおかしくないのに、何か気になるところがあったのだろうか。
「明日は走るのが夜じゃないですか。だから、その時間帯に合わせて、はい」
 今日は夏真っ盛りの昼間のレースだった。準優は日が暮れてからの戦いとなる。だから夜用のセッティングで調整をしていた、というわけ。すでに今日までのことはリセットして、明日に目を向けて動いていたのだ。こうした動きをサラリとできるのも、才能である。
「まだ緊張はしていないですけどね。というか、今日のほうが緊張しました」
 平本はそう言って笑った。5着条件とはいえ、6号艇での出走だった勝負駆け。3着条件で4号艇、より緊張しそうなシチュエーションだよなあ。まあ、明日はきっと緊張に包まれるだろう。それが普通だと思う。そこでどんな表情を見せてくれるのか、明日の平本がおおいに楽しみになった。
2010_0827_0909  整備室には今垣光太郎の姿があった。よっ、整備の鬼! 今節ついに見せてくれた鬼の姿。それだけで、光ちゃんの真髄を見ているような気になって、嬉しくなってしまう。
 以前、光ちゃんは言っていた。「準優では一発勝負の整備をすることがある」ということを。たとえば新品のピストンリングを入れると、何度も走るとバテてしまってパワーダウンするが、準優一発ならば効果が出ることがあるとか。つまり、光ちゃんには準優、そして優勝戦で繰り出すとっておきの整備がある、ということだ。
 今日はおもにギアケースなどを整備していたようで、リング交換をやっている様子はなかった。しかし、準優を前にして時間を目いっぱい使った整備が、とっておきの整備でないはずがない。えっと、スキがあれば話を聞きに行こうと思ったのだが、光ちゃんは本当に12R終了後までエンジン吊り以外は整備室にこもってるんだもんなあ。というわけで、詳細は明日聞いてみたいと思っている。でも、明日も整備室、試運転、ペラなど、声をかけるタイミングがないほど、忙しくしているかもしれないなあ。
2010_0827_0332  最後にまたまた長嶺豊さん情報。長嶺さんは今日、JLCの展望番組の準優インタビュアーを務めていた。まずは、仲口博崇。結果によっては1号艇も2号艇もありえるポジションで、なかなかインタビューのタイミングがとれなかったようなのだが、仲口はなんと、1号艇バージョンと2号艇バージョンの2通りの収録を提案してきたというのだ。「そんなことやってくれるのは、仲口くらいですわ~。優しいなあ~」と長嶺さんは大感激。結局2号艇バージョンがJLCでは流れることになるわけだが、いやあ、応援したくなったぞ、仲口博崇! 悲願のSG制覇をぜひ! 2010_0827_0153 あと、ボーダー近辺で、もっと言うとレースが終わるごとに18位と19位を行ったり来たりしていたのが、前本泰和。準優インタビューをいつ録るのかが実に難しかったわけだが、前本は一便で帰宿するつもりだったらしい。そこで前本は、「準優に出られなくて、ムダになってもいいから」と、準優に出たつもりでインタビューを受けたというのだ。「前本にはなんとか残ってほしいですわ~」と祈る長嶺さん。11R終了後には18位に上がったのだが、12Rが終わって、嗚呼、次点19位に……。残りあと2日、前本泰和を徹底的に応援するぞ!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)


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コメント

くだらねぇ記事書いてんじゃねぇよ。
井口のあれはダメだろ。
選手としてやっちゃいけない事だろ。
いくら勝負駆けだろうと、度がすぎてる。
自分が準優乗れたら、相手が死んでもいいっていうの?
美化しすぎなんだよ。
本当くだらない。

JLCの犬が生意気な事言うな
艇界の事考えてるなんて一生言うなよ。
JLCが全て肯定しろって言ってるなら、競艇はもう終わりだね。

投稿者: あ (2010/08/28 0:08:25)

「あ」さんの言うとおり、あの井口選手の突進は危険そのもので、いくら勝負駆けとキレイごと並べても肯定できるものではない。
幸い篠崎選手は準優にのることができたのはよかったが

あのような行為を起こした選手に対して即日帰郷やさらにF並みの出場停止の処分もあっていいと思う。

投稿者: まあ (2010/08/28 10:23:30)

「あ」さんの言うとおりですが
ものの言い方というのもあるんじゃないですか?

投稿者: うっちゃん (2010/08/30 17:49:20)