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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――燃えよ、地元勢

2010_0825_0302  2R、今井貴士と大嶋一也がフライングを切ってしまった。レース中にピットに戻ってきた二人は、特に今井の周辺は、さすがに沈痛な面持ちだ。
 篠崎元志の顔が曇る。岡崎恭裕も残念そうだ。石橋道友が近寄って、今井の肩をポンポンと叩く。隣で、平田忠則が溜め息をつく。
「でも、逃げてたよ」
「うん、ちぎってた」
 先頭を走れたことはまだ救いだったか。以前聞いたことがある。フライングを切ったのに後方を走ったのでは、まったく意味のないフライングだったことになってしまう、選手はそう考えるのだと。勝つために勝負をかけ、そのとおりに先頭に立って、しかし僅かにスリットオーバー。これを責めることは、勝負師の魂を否定することである。
2010_0825_0167  では、先頭を走れなかった大嶋一也は意味のないフライングをしたのか。そうではあるまい。己の仕事を果たすべくコースを奪いに出て、それがひとつの原因となってしまった。やっぱり、仕方のない勇み足だと言うべきだろう。しかも大嶋にとって、ここは地元である。気合が先走ることがあっても、誰が責められよう。
 ピットに戻ってきた大嶋は、今井に比べればサバサバとしていた。だが、取り巻く地元勢は、やはり言葉をなくしている様子だった。後輩たちがボートを引いていく後ろから、かなり遅い歩様でついていく大嶋は、今井が声をかけてくるより先に今井に歩み寄り、右手をそっとあげていた。

2010_0825_0085  そうでなくても気合がこもる地元勢だが、重鎮がFに散った以上、さらに闘志がこもるのは間違いない。今日は12R1回乗りの赤岩善生は、早い時間帯から試運転を繰り返す。この男が気迫満点なのは今節に限ったことではないが、汗だくになりながらも駆け回る姿からは、やはり鬼のような気合が発散されている。
2010_0825_0191  試運転のパートナーは、もっぱら仲口博崇だった。水面で足合わせをすると、係留所に戻ってきては、手応えを確認し合う。会話が終われば、ふたたび水面に出て、足合わせ。そして係留所に戻ってきて長い会話。仲口の顔も相当に鋭い気配を漂わせており、こちらも内に秘めた思いを感じさせるものだ。そうだ、大嶋と仲口は師弟関係にある二人ではないか。仲口に、師匠の分まで、という思いがなければウソというものだろう。
2010_0823_0412  池田浩二は、一見そうした気合のようなものとは無縁のようにも見える。飄々としているし、クールな装いはたとえば赤岩とは好対照でもある。ただ、動き自体は赤岩や仲口と同様、早い時間帯から懸命な調整と試運転に明け暮れているのだった。わかりやすく闘志を表に出すわけではないが、その動きが物語る地元SGへの思い。少し表情が暗いのが気にはかかるが、機力向上に懸命な顔つき、ということにしておこう。
 2010_0825_0132 そうしたなかで、SG初出場の平本真之も、着々と調整作業をこなし、水面へと飛び出していっている。先輩たちと違って、いきなりSG優勝候補というわけにはいかないが、だからこそケレンのない姿がすがすがしくもある。この空気に身を置き、必死で先輩に食らいついていくこと。それだけでも、平本にとっては大きな経験、大きな糧になることだろう。いや、2日目まではなかなかの好成績だもんね。声をかけると、平本はめちゃ爽やかに頬を緩めたのだった。その気分のまま、大金星を狙うべく突っ走れ!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)


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