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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――今村豊の優勝を間近で見られた幸せ

2010_0829_0020  幸せなピットであった。
 ウィニングランが行なわれなかったこともあって、ウィナーの帰還は居合わせた選手全員によって出迎えられている。そして、全員が一斉に大拍手! そのヒーロー=今村豊の激勝に、誰もが感動した証であった。
 そう、今村豊が優勝! 49歳となり、名人世代と呼ばれるようになった今でも、SGの第一線で戦い、トップクラスの一角を占める存在であることは誰もが認めている。それでも、2010年という年がヤングヒーローの台頭というトレンドを示していたから特に、登番2000番台の男が頂点に立ったことは、誰にとっても感慨深いものだった。
2010_0829_0164 「一気に飛び越えちゃいましたね」
 今村はレース後にそう言って笑った。やまと世代の下剋上に対して、SG常連の既成勢力が逆襲する……そんな物言いは、松井繁らを中心とする3000番台が意地を見せる、という意味をもっていたはずだ。それが、一気に飛び越えて2992番の優勝! これはどう考えても、感動的なことなのだ。
 といっても、今村豊はわりと淡々としていたのだから、さすがである。レース前も淡々。展示を終えたレース直前には、強烈に集中している様子で、他者を寄せ付けない迫力を振りまいていたが、優勝後もやっぱり淡々。水面ではガッツポーズも見せていたが、駆け寄った白井英治が満面の笑みを見せているのに対して、今村はひとつのレースが終わったのだ、とばかりに、笑いもせず、はしゃぎもせず、自然な表情を見せていたのだった。
2010_0829_0402  そんな今村豊を見ているのが、また幸せだった!
 若者たちが席巻してきたこれまでの4つのSGでは、レース後は若々しい喜びが爆発していたものだった。それとはある意味、正反対のレース後の雰囲気。これもまた、勝負師たちのあるべき姿のひとつであろう。幾多の歴史を刻む戦いを繰り広げてきたミスター競艇にとって、6年ぶりのSG優勝であっても積み重ねていくひとつのレースに過ぎない。それを表現できるのは、やはり修羅場をいくつもいくつもくぐってきた男だからこそ、であろう。今村豊のSG制覇を間近で見られてはしゃいでいる僕には、とうてい辿り着けない境地だと思う。もちろん、今村みたいになりたいけど。
_b8e2035  ともかく、今村が勝者となったピットは、他のSG優勝戦後に比べて、崇高な空気が漂っているように感じられたものだった。やっぱり、誰もが感動していた、のである。ミスター競艇を誇りに思おう。改めてそう思った。下剋上の風を吹かせてきた若者たちも、ボートレースの希望である。だが、これから歴史を作る者たちの勢いを止めて、H記者をはじめ中年に希望をそそぐ勝利を射止めた「歴史を作ってきた男」は、どう考えたって、我々の心の支えであり、プライドであり、最高の宝なのだ。
 おめでとう、なんて言葉はかえっておこがましいような気がする。ありがとう、ではベタだろうか。やっぱり、送るべき言葉はこれかな。
 今村豊選手、SG優勝が見られて、本当に幸せでした!
 もちろん、これが最後だとはまったく思ってませんけどね。

 そうした敬虔さをたたえたピットだったこともあるのだろうか、敗れた5選手の表情もまた、比較的淡々としていたように思う。
2010_0829_0497  いちばん気になっていたのは仲口博崇で、悲願にまたしても手が届かなかったことが、彼の表情をどう変えるのか、注目していたのだ。ピットに戻ってきた直後は、やはり硬めの表情だったと思う。師匠の大嶋一也が歩み寄って、二言三言ささやいても、表情は変わってはいないようだった。ただ、モーター返納作業をしながら報道陣(つまり、地元の記者さん=新人の頃から見守ってきた人たち)と話をしながら、だんだんと顔つきが朗らかになっていったのが印象的だった。最後にはニッコリと笑ってもいたのだから、仲口のなかでこの準優勝は「ひとつの手応えをつかんだ」ものだったのかもしれない。それは当然、「自分がまだ通用するのかどうか」と悲壮な思いで今節に臨んだことへの、ひとつの答えである。これで、チャレカ、最低でも賞金王シリーズへの参戦は確定的になった。SG戦線に本格復帰したあとの仲口博崇が楽しみになった。
2010_0829_0194  一方、静かな悔恨を燃やしていたのが、今垣光太郎である。激しく悔しがったりはしていなかったが、モーター返納作業の間じゅう、顔をしかめていたのである。とにかく、何かに苛立っていたのは間違いなく、それはもちろん自分への怒りだったのだと思う。
 2010_0829_0515中島孝平も、今垣と同じように、かなり長い時間、顔をしかめたままだった。タイプというか性質は違うが、福井支部の二人がよく似たレース後を送っていたのは、偶然だったのだろうか。中島の場合、スリット時点では勝ち筋も見えていたのだから、その悔しさは今垣以上だったかもしれない。彼らしく淡々とはしていたのだが、顔にハッキリと書いてある「悔しい」の文字。淡々とした中にそれが見えたからこそ、強く印象に残ったのだった。
2010_0829_0438  濱野谷憲吾も、サバサバしている、とはとても言えない雰囲気であった。いや、仲間に囲まれれば、苦笑混じりの笑顔も見せてはいた。これはいつもの通りである。だが、この敗戦を良しとはしていない、そんな顔も見せているのだ。レース後、濱野谷と目があった。濱野谷は顔をゆがめ、口をひん曲げながら、「やっちまった」という目配せをしてきたのである。濱野谷にインタビューしたのは、ちょうど2週間ほど前。そのときに話していたことを思えば、その意味の重さがひしひしと感じられた(何を話していたかはBOATBoy10月号を!……って、この流れでの宣伝、失礼しました)。
2010_0829_0457  最後に平本真之だ。レース後に目が合うと、彼はまずニコッと笑った。展示に向かう前、ジェスチャーだけで「頑張れ」とメッセージを送ったときもニコッと笑っていて、その2つの笑顔はまったく同じものだった。それが不思議だった。もしかしたら、胸の内をあまり表に出さず、心の奥底でグッと噛み締めつつ、裏腹な表情を作るタイプなのかもしれない。山崎智也のように。
 そう思ったのは、返納作業の間じゅう、彼もまたしかめ面をしていたのを見たからだ。本稿にも何度か登場しているように、平本とはわりと話す機会も多いのだが、まだこの男の奥を見てはいないような気にさせられたのだった。ダービーに繰り上がり出場が決まり、今後はSGの常連となってくるはずの平本である。SG初出場初優出を果たした男の真実を見るのが、この先楽しみになったのだった。(PHOTO/中尾茂幸 表彰式=池上一摩 TEXT/黒須田)


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