この特集について
ボートレース特集 > THEピット――幸多き準優
この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
ライタープロフィール
カテゴリー
関連リンク
競艇サポーターズ
関連書籍

 ボートレース特集

THEピット――幸多き準優

2010_1010_0249_2  江口晃生が、係留所で調整をしていた上瀧和則のもとへ向かった。しゃがみ込んで上瀧に声をかけると、上瀧は柔らかい表情で江口に言葉をかける。1~2分ほどそうして、江口は次に今村豊のもとに向かった。今村とも、数分の会話を交わす。
 江口は、やるべきこと、やれることはすべてやり尽くしたのではないだろうか。準優組でもっとも動きが激しかったのは、間違いなくこの人なのだ。
 唯一の地元参戦。開会式で語った、そのプレッシャーとプライド。苦しい機力のなか、準優には駒を進め、優出に全力を傾注する。結果を言うのなら、江口のダービー物語は準優でストップしてしまった。だが、劣勢のパワーで準優3着となったことも含めて、江口の姿は心から尊敬するに値するものだと思った。レース後の、何度も何度も何度も何度も……本当に何度も首をかしげる様子は切なかったし、それでも彼らしい柔和な笑顔が戻っていたことにも胸を打たれた。江口晃生の戦いを見ることができたのは、本当に幸せなことだった。心からそう思う。

2010_1010_0470  レース前の峰竜太は、ただただカタかった。前半の記事でも書いたが、それでいいと思う。レース後の峰竜太は、ただただ落胆していた。またこの男の涙を見ることになるのではないか、とそわそわしてしまうほどに肩を落としていた。
 ようするに、6号艇だから負けてもともと、なんて少しも考えていないのだ、峰竜太は。チャレンジャー精神はありつつも、しかしバカ正直なまでに勝利を追求する。結果を出そうと真剣になる。そういうピュアさが、峰竜太の魅力であり、強みなのである。もちろん思う通りの結果が出なければ、その分だけ傷もデカい。それを峰は決して恐れないで、全力を尽くすのだ。
_u5w7303_2 レース後、カポック脱ぎ場でしゃがみ込んでヘルメットを拭いていた峰の頭上から、先輩の三井所尊春がひょこっと顔を出した。ここはカウンター状になっていて、中には洗濯係の方々がおり、カポックを受け取るのだ。三井所は室内に回り込んで、峰に声をかけたのだ。
「何にもできなかったす!」
 峰は悔しそうに三井所に言葉を返した。三井所は、そんな峰をどうしても癒したいとばかりに、慈しみ深い笑みを向けた。三井所のそんな表情を見て峰は、すぐに視線を落としてふたたびヘルメットを拭き始めた。それを優しく見降ろす三井所。この男気あふれる先輩もまた、峰のピュアさを知り尽くしているということだろう。
 一節を通して、峰はそんな全力疾走を見せてくれた。それを久しぶりにSGの舞台で見られたことは、やっぱり幸せなことだったと思う。

_u5w7171  9R前のこと。スリット写真に見入っていた今村豊のとなりに、飯山泰が並んだ。
「おっ、弓取り式か?」
 どうやら、ナイターレースの準優=9~11R後の12Rのことを、選手たちはそう呼んでいるようだ。なるほど、弓取り式とはうまい言い方だ。もちろん、こちらを走る選手にとっては、屈辱的な意味も込められているだろう。
「ターン回りがちょっとキツいんだよなあ」
「今村さんでも回れないんなら、僕だってキツいですよ」
「おぉ、俺が回れないのに、お前が回れるわけがないだろ」
「でも、直線だったら負けてないですよ」
「そうだよなあ、最近はお前のほうが勝ってたりするもんなあ。腹立つ」
「アハハハハ」
 準優を控えた選手が、“弓取り式”の選手にじゃれついているのだ。飯山が去ると、今村は誰にともなく話しだした。
「直線は誰にも負けないペラが欲しいな。4枚目を持ってきて、試運転ではぶっちぎるの」
 そのシーンを想像したのか、今村は嬉しそうに笑っている。でもミスター、持ち込めるペラは3枚だけなんですけど。
「でね、本番ではぜんぜん伸びないという」
 その4枚目は本番では使えないってことね(笑)。「それじゃダメじゃん」と自分でオチをつけて、さらに笑う今村。本当にこれから準優を戦う選手なんでしょうか。そんな今村豊を至近距離で目の当たりにできるのも、本当に幸せなことだ。そして、大一番を控えてさえ、自然体を保てる精神力にはひたすら尊敬するしかないだろう。

 優出選手だ。
2010_1010_0214  強い覇王を目撃できるのも、やっぱり幸せなことだと思った。1着ゴールを果たし、陸の上に戻って、ニッコーと笑う。魚谷智之のこんな笑顔を見るのは、いつ以来だろう。前回のSG優出は、07年賞金王決定戦。えっ、そんなにも前の話!? 魚谷は「別に1走1走、普通に走れてるとは思ってますけど」と、ことさらに意味を見出そうとしていないようなコメントを出していたが、実際はさまざまな思いが去来していたはずだ。そうでなければ、あれほどまでの深い笑顔が浮かんだりはしないはずだ。
2010_1010_0478   強い天才児を目撃できるのも、本当にうれしいことだった。ただし、こちらはレース後は思い切り悔しがっていた。魚谷の同期、瓜生正義。76期二人が揃っての優出は、こちらにしてみれば大きな意味のあることだが、瓜生にとってはただただ敗れたことが許せない、そんな様子だったのだ。そして、その姿がまた、瓜生が真の強者であることを改めて教えてくれたように思った。「完全なる僕のミスです」。会見で瓜生はそう言った。「完全なる」という言葉を使った意味。それに思いを馳せれば、「優出を果たしたのに悔しさにまみれる瓜生正義」を見られたことも、瓜生には悪いけど、本当に幸せだったのだ。
2010_1010_0450  ならば、強い王者を見られたことも、やっぱり幸せなことのひとつに数え上げるべきだろうか。1着でボートリフトに戻ってきた松井繁は、出迎えた湯川浩司に声をかけられ、ニンマリと最高の笑顔を浮かべた。そのレース後の真摯な表情→歓喜の笑顔への変化が実に滑らかで、実に自然で、そんな松井を見られたことはたしかに幸せなことだったと言えるだろう。
「今日は賞金王決定戦のつもりで走りました。明日ももう一度、同じ気持ちで走りたい」
 松井は今日、そんな大きな決意をもって準優を戦った。そして明日も。松井が何を、どれだけ強く、欲しているのか。その巨大さを思えば、今日というより、明日の優勝戦で王者を見られることが本当に幸せなことだと言うべきだろう。「今日は2コース差しが決まるような条件ではなかった(気圧が低下したこと?)。だから、差せたのはたまたまじゃないですかね」。どんな展開になるにせよ、この男に「たまたま」などということはありえないような気がするのだが、明日は果たして。
_u5w6817  強いテラショーというのも、やはり嬉しいことではあった。寺田祥が賞金王決定戦に出場したのは07年。魚谷のSG優出ではないけど、そんなに前だっけ?とやっぱり思う。
 そのテラショーは、会見でずっと首をひねりっぱなしだった。体感として、モーターが噴いているとはまるで思えず、しかもこれといった特徴も感じられないらしい。ところが、リプレイを見てみると、今日のメンバーのなかでは出ているように思える。そのギャップにどうにも納得がいかないようなのだ。それって、単に自分の中のハードルが上がってるってことじゃないのか、と思うのだがどうか。池田浩二の泣きコメントに通ずるものがあるというか。だとするなら、テラショーは今、ステップをひとつ上がったということになる。SG初Vがあれば、それを見るのはやっぱり幸せなこととなるであろう。
_u5w6711  今坂勝広は、「総理杯の優出がフロックとは思われたくなかった。だから、自力で優出を手にしたことは本当にうれしい」と会見で語っている。そういえば、エンジン吊りの際に、大嶋一也が服部に「(今坂はSG優出)初めて?」と問いかけ、服部は目を丸くして今坂に「2回目だろ?」と聞いているシーンがあった。今坂は当然うなずいたわけだが、服部はまるで自分のことを自慢するみたいに、今坂を指差しながら「どうよ!」と胸を張ってみせた。なぜ服部が得意げになってるのよ、と突っ込みたいところではあるのだが(笑)、すなわち服部にしてみれば、今坂はSG優出を普通に果たすことのできる男なんだぜ、大嶋さん、ということではないのかと想像する。つまり、今坂よ、誰もあなたのSG優出をフロックなどとは思っていないのだ。
 それでも、今坂にとっては、大きな達成感があったということなのだろう。そんな幸せそうな姿は、見ているこちらにも幸せを分け与えてくれる。もちろん、これで満足するような男ではないだろうし、明日は6号艇とはいえ決して侮れず、さらなる幸せを我々に見せてくれる可能性は充分にある。
_u5w7017  で、個人的に非常に幸せだったのは、森高一真のSG初優出! 仲がいいというのもあるし、そのうえ過去2回も優出のチャンスを逃すシーンを目撃している(昨年のチャレカと今年のグラチャン)。今回はついにきっちり2着をキープ。とうとうこの男のSG優出を見られたということに、どうしても私情が強く押し出されてしまう。
 しかし、森高自身はそうした幸福感をいっさい表に出そうとはしなかった。祝福しようと駆け寄ったら、クスリともせずに「あー、あぶねー! 今までに2回も抜かれてるからなー。あー、あぶなかったー」と叫んだのだ。道中、そんなに危ないシーンがありましたかね? むしろ最後は先頭との差を詰めているし。
 これ、照れ隠しですよね。会見でも口数は少ないし、コースを聞かれて「安岐(真人)さんの言う通りにする」とか言ってるし、ほんとにもう、素直じゃないんだから。でも、これが森高一真でもある。キャラを作って貫き通そうとする森高一真。明日SG初Vを成し遂げて、キャラがぐだぐだになるくらい歓喜する森高を見ることができたら、最高に幸せなんだけどなー。(PHOTO/中尾茂幸=江口、峰、魚谷、瓜生、松井 池上一摩=三井所&峰、今村、寺田、今坂、森高TEXT/黒須田)


| 固定リンク | コメント (2) | トラックバック (0)
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
コメント

皆様、本日もお疲れ様でした!
あと、ラスト一日頑張ってください!

投稿者: UKpetta (2010/10/10 22:47:25)

はい、私も幸せです^^
「よし!私も頑張ろう!」って気持ちにさせてくれます。
ありがとう。


何か音楽♪を聴いているのかなぁ。
(まさか西武対ロッテのラジオ中継じゃないですよね^^)
私はバンプが大好きなんですが、
バンプの曲で「ダイヤモンド」を聴いて欲しいです。
この1曲に峰選手に伝えたい事が全部詰まっている・・・というか・・・
本当にその歌詞そのまま伝えたい・・・というか・・・
私の大好きな曲なんです。
まっ、そんなことはどうでもいいですが・・・峰選手はどんな音楽聴いているのかな~。


よし!ラスト1日!
いいレースを見せて下さいね。
応援してます。


あっ、予想も頑張って下さい^^
応援してます^^

投稿者: hiyo (2010/10/11 0:48:51)
コメントを書く




※メールアドレスは外部には公開されません