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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THE ピット――戦いの始まり

2010_1006_0646   8レースで2着に入った峰竜太がピットに戻ってくると、上瀧和則と三井所尊春が笑い合いながらエンジン吊りに出てきた。この2人に限らず、峰を迎える九州勢の安堵感は、少し離れた場所にいたこちらにまで伝わってくるようだった。
 そんな仲間たちに迎えられ、峰竜太も安堵の笑みを見せていた。
 それでも峰は、ヘルメットを脱いで、記者陣の前を通っていくときには、さっと表情を引き締めた。
 転覆(=1レース)のあとの2着1本で顔をゆるめてはいられない――。
 そんな思いがあったかどうかはわからないが、一瞬の表情の変化の中に峰竜太というレーサーの「らしさ」が垣間見えたようにも思われた。
 峰を迎えた三井所にしても2レースで転覆していたわけだが、このレースの前から鳥飼眞と笑顔で話している場面が見られていたし、8レースのエンジン吊り前後にも自分のモーター整備を続けていた。
 初日の一走目で、こうした結果を出してしまったハンディは大きいが、彼らの戦いはそんなに簡単には終わってしまわない。

2010_1006_0321  7レースで転覆してしまったのが吉田拡郎だ。
 カクローにしても、その後、「新田、ごめん。大丈夫だった?」と、同じレースで走った選手たちのもとを謝って回ると、すぐに自分のモーターの整備を開始している。
 レース後のエンジン吊りにも何度も出てきていたので、その作業から戻ってきたとき、「大丈夫ですか?」と確認してみた。
 するとカクローは、「心も体も大丈夫です!」とニッコリ。こうした気持ちのいい言葉を返してくれるのがこの男のいいところだ。
「焦らずに行きましょう」と言葉を掛けると、「はい、ちょっと焦ってましたね」と頷き、「落ち着いていきます」と作業に戻っていった。

2010_1006_0504  また、この8レース後には、峰だけではなく江口晃生からも目が離せなかった。
 たった一人の地元勢としてプライドを懸けて戦っている江口の初日の結果は、6号艇3コース4着(=2レース)、3号艇2コース3着(=8レース)。こうした結果をどう受け止めているかが気になったのだ。
 濱野谷憲吾ら関東勢にエンジン吊りを手伝ってもらっているときには笑みも見せていた江口だが、一人になると焦燥の色をにじませた。
 それは“疲れた”という様子に見えたものだが、それ以上に“悔しい”という気持ちのほうが強かったのかもしれない。8レースでは2着を狙える展開の中で3着になっていたのだから、その部分で自分を納得させられなかったとも考えられる。
 レース後しばらくしたあと、ピットに馴染みのキャスターを見つけると、猫だましをするようにその目の前で両手を叩いて、大きな声で「ダメだあ!」とひと言。
 その後はモーターをすぐに格納するのではなく、本体を割って整備をしていた。
 明日の江口は1レース1号艇の一回乗りとなっている。勝負師のプライドが込められた、熱いレースが見られるのは間違いない。

2010_1006_0246 この時間帯のピットでは、他にもさまざまな光景が見られた。
 たとえばペラ小屋――。松井繁と服部幸男が並んで作業をしていて、声を掛け合う。昨日からそんな場面はあったのかもしれないが、これが個人的には今節では初めて見た“最強同期が切磋琢磨する光景”だった。
 また、そのすぐ傍では、上瀧和則と池田浩二が並んで座って作業をしていた。それを見て、この二人は以前からSGではよくこうしていたのだということを思い出す。
 さらに、そのすぐ隣では、今村豊がひとりで黙々とペラを叩いていた。今日の今村は、1日のうちのかなりの時間、そうしていたのだ。

2010_1006_0700  そんなことを確認しながら迎えたドリーム戦。勝ったのは、1号艇の松井だ。
 ペラ小屋で服部と話していたときや、その後、吉川元浩と話していたときの松井は、実に気持ちのいい笑顔を浮かべていた。
 昨日の前検での共同会見では、言葉数も少なく、厳しい表情を見せてはいたが、昨日と今日の作業によって“修正”できていると実感できていた部分も大きかったのではなかろうか。
 レース後、「走った感じは良かった」「夜の回転はこれで」と話していた松井だが、限られた時間の中で戦える足をつくっていけるのが王者の強みだ。
 レース後、エンジン吊りに出てくる服部や吉川は、松井が勝った結果が当たり前のような顔をしていたようにも見えていたし、当の松井自身も、当たり前の仕事を果たしてきたように見えていた。実際は、当たり前の勝利などというものはひとつもないのだが、それがあるようにも錯覚させてしまうのが松井繁というレーサーなのだろう。だからこそのダービー勝率第1位、なのである。
(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/内池久貴)


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