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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THE ピット――厳しくも素晴らしい戦い

2010_1007_0393  先にUPした記事では、艇庫の入り口付近でペラ調整の作業をしているのは辻栄蔵だけだと書いていたが、後半戦の始まったピットに行ってみると、日高逸子がその場所で作業をしていた。
 さらに日高が去ったあとには、吉川元浩もそこでのペラ調整を始めた。その際には傍にいた吉田俊彦にやさしく親切にアドバイスをしているところも見かけている。
 その後に吉田が去ると、辻と吉川が2ショットで作業をするようにもなったので、この場所もにわかに活気が出てきた。
 孤独の作業を好む選手がいるなら歓迎すべきことではないかもしれないが、ピットの状況は、そんなふうに少しずつ変化していく。

2010_1007_0432  7レース前だっただろうか。
 前検日から試運転と整備作業を休みなく繰り返している平田忠則がゆっくりと歩いていたので、「今節は休まず作業をしてますね」と振ってみた。
 すると、足を止めた平田は、「いえ、前検、昨日とずいぶん乗りましたけど、今日はそれほどではないです。ヒザや首に痛みが出てきているので休みたいんですけど、次は夜(10レース)なんで、ペラを替えて試してみたかったんです。今村豊さんに、回転が上がりすぎじゃないのかというアドバイスをしてもらったんですけど、悪くない感じになりそうですね」と丁寧に状況を話してくれた。
 ほとんど休みを空けずにレースを続けている選手たちのなかには“長く付き合っていくしかない体の問題”を抱えている者たちもいる。そのために試運転の回数を自分で限定していく場合もあれば、それでも試運転を繰り返さずにはいられない場合もある。
 そういう話を聞くたび、ボートレーサーという仕事がいかにハードなものかが痛感される。
 この後のレースで平田は6着と結果を出せなかったが、そういう繰り返しの中で戦っていくしかないわけだ。

2010_1007_0430  今節は初日から事故が目立つが、今日も7レース、8レースと、また連続して転覆が出てしまった。
 7レースで転覆したのは絶好調男の石田政吾だ。
 レスキューで戻ってきた石田は、待ってくれている仲間たちに、何度も頭をペコペコ……。様子を見にきた医師に「大丈夫」と伝えると、そのまま控室のほうへとダッシュしていった!
 その後、着替えなどを済ませたあとにすぐにモーター整備を開始したのは言うまでもない。

2010_1007_0438  また、石田の転覆とは関係なく、同じレースで上瀧和則はあわや転覆というように艇をホッピングさせる場面があったが、引き揚げてきたときには、“笑うしかない”というように苦笑いしていた。

2010_1007_0332  8レースで転覆したのは今村暢孝だった。今村暢も引き揚げてくる際には、“やっちゃった”とでもいうように、からっとした笑顔を見せていた。
 そして、それ以上の大笑いを見せていたのが今村暢を迎えた上瀧だ。
「ノブさん。あんた、危なかったって言うとったけど、あんたは危なすぎたね(笑)」
 事故が続くと、見ているこちらもやり切れない思いにさせられる。それでも、ピットが暗いムードにならずに済んでいるのは当事者たちの人柄なのだろう。
 一度事故を起こして減点がつけば、予選通過はかなり厳しくなることを考えても、いちばんつらいのは本人たちであるのは間違いない。だが、彼らは周囲を気遣って、そんな笑顔を見せているのだ。
(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/内池久貴)


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