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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――W孝平だけが

 トライアル最終章といえど、それほどピリピリ感が増したとは思わない。わりと穏やかに空気が流れていることを、気のせいとも思わない。今年の賞金王は比較的、ゆるやかに時が流れている。理由は定かではないけれども。
_u5w9560  この人の存在がそうさせているのか? いつでもどこでも朗らかなミスターこと今村豊。今朝は本体整備をしていたけれども、整備士さんたちにギャグを飛ばしたりしていて、作業の内容とは裏腹に、まるで焦っている様子がない。焦った瞬間もあって、それは1R、弟子の白井英治のエンジン吊りに遅れたこと。整備室から猛ダッシュでリフトに向かう後ろ姿は、新人選手のようだった。走って整備室に戻る際には、なぜかニッコニコだったし。
2010_1222_0133 この人の存在も大きいのか? 第1回賞金王が開催されたときには、生まれてもいなかった岡崎恭裕。その賞金王で今村は優出してるんだもんなあ。四半世紀の区切りとなる今回、そろって優出したらそれだけで大トピックだ。その岡崎は、JLCの取材を受けて、朗らかに笑っている。早くもモーターを装着していて、動き出しが早いのが気にはなったけれども、精神状態は普段のSGと何ら変わっていないようだ。
 今村にしても岡崎にしても、賞金王だから特別、という雰囲気はない。
2010_1222_0111  瓜生正義も同様。一般戦でも走るかのように、優しい表情を見せている。今垣光太郎もまったくテンパっている様子はなく、かなり遠くからこちらを見つけて、挨拶をしてくれたりした。嬉しかったぞ。池田浩二も、理由はさっぱりわからなかったが、ニコニコしながらモーター装着をしていた。こちらが目を離している間に、誰かと冗談のひとつも飛ばし合っていたのだろうか。松井繁は、笑ってはいないけれども非常に表情は柔らかい。6号艇で2着条件などという激烈ノルマを抱えているようにはとても見えない。それが王者であることを考えると、ちょっとした異変のようにも思えたりするのだが、松井は松井で静かに臨戦態勢を整えているのだろう。山口剛も、笑顔は見せていないが、じたばたしたところはなく、石野貴之は今日も今日とて男前だ。
2010_1222_0005  湯川浩司は、本体整備をしていた。昨日は手持無沙汰そうだったのに。今日になっていきなりの本体整備。1号艇を2日連続で活かせなかったことが、何かを変えたのか。
 いや、そうでもなかった。声をかけたら、「うん、ちょっと本体」とさらりと言って、笑顔を見せたのだ。ちょっと本体、って。まったく焦った様子もなく、まったく苛立ったところもなく、なんかものすごくゴキゲンな風情なのである。おもわず、ちょっとと本体の間に「ヒマだから」とか言葉を入れたくなったぞ。つまり、雰囲気は昨日となんら変わっていないのである。

 だが、もちろん穏やかな者ばかりではない。
2010_1222_0224 「中島選手がナーバスになってる」
 そう報告してきたのはチャーリー池上だ。ファインダー越しにハッキリと、険しい目つきが見えたのだという。たしかに、昨日までより表情がずっとカタく見えていて、これがトライアル1号艇のプレッシャーなのかと思ったりする。もともと淡々としている人なので、表情の変化は見えづらいのに、目つきが明らかに昨日と変わって見えるのだから、その内心の動きたるやいかばかりだろう。今垣や赤岩善生が言っていた「賞金王の場数」という言葉がにわかに現実味を帯びてくる。
2010_1222_0637  菊地孝平も、ピリピリしている。まあ、これぞ“菊地モード”ということなのだが、その目つきは相当に鋭い。声をかけると、笑顔を作ろうとして、しかしうまく作れない菊地。こらいかんと、こちらも挨拶だけにとどめることにしたのだった。
 どうやら孝平二人が、相当な緊張感を身にまとっている、ということだ。
 で、もう一人、違う雰囲気のように見えるのは、濱野谷憲吾だ。ピリピリしているわけではないのだろうが、顔つきが相当に厳しくなっているのだ。それは機力不安の類ではなく、いわゆる闘志に近いものではないかと思う。プロペラ調整が主たる作業のようだったが、ペラ室を出入りするときにちらりと見せる表情は、どこまでも力強く、凛としていた。
 さあ、トライアル最終章。運命の勝負!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)


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