この特集について
ボートレース特集 > 賞金王トライアル3日目 私的回顧
この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
ライタープロフィール
カテゴリー
関連リンク
競艇サポーターズ
関連書籍

 ボートレース特集

賞金王トライアル3日目 私的回顧

2010_1222_r11_1096_2 一太刀

11R
①池田浩二(愛知) 08
②今村 豊(山口) 10
③湯川浩司(大阪) 11
④石野貴之(大阪) 13
⑤岡崎恭裕(福岡) 13
⑥山口 剛(広島) 12

 遅ればせながら、池田が他艇に影も踏ませぬような鮮やかなイン逃げを決めた。スリットは美しいまでの横一線。相棒のモーターはモンスターと呼ばれる5号機。艇界屈指のイン巧者。この条件が揃っては、他艇に付け入る隙はない。
2010_1222_r11_1132  こうなると焦点は2着争い、どころか2~6着争いだ。私は3着以上でファイナルの1号艇が確定する石野を探した。何があったのか、はるか離されたシンガリ航走。これでは白いカポックにありつけない。これを踏まえて2着なら1号艇の可能性がぐっと高まる岡崎も、先団から千切れている。枠番の差なのか経験の差なのか、今日のやまとトリオはせっせとプール掃除をするに留まった。

2010_1222_r11_1143  2着争いは、今村VS湯川の王子決戦。快速王子・湯川はここで2着(9点増し)ならファイナル1号艇のチャンスは十分。3着(7点増し)なら途端に苦しくなるという正念場の争いだったのだが、初代プリンスの捌きの前に屈した。湯川のストレートは天下一品だが、やはりちょっとターン回りの掛かりと出足が甘い。ということは4カドあたりからの自力攻めがもっとも破壊力があるわけで、この3着を前向きに捕らえていいだろう。ダッシュ戦の湯川が楽しみだ。
 大魚を逸した石野はすべての足が上位のバランス型で、どのコースからでも展開ひとつで突き抜けられる。誰かが強引に仕掛けて混戦になればなるほどチャンスが膨らむパワーだ。岡崎は石野より見劣ると思うのだが、この男の最大の武器はふてぶてしいまでのクソ度胸。明日もピンロク上等とばかり、捨て身の決め撃ちアタックをやらかすだろう。
 嗚呼、それにしても、池田5号機の真の底力をファイナルで見てみたかったなぁ。

集大成

2010_1222_r12_1277 12Rコース順
①中島孝平(福井) 02!!
②濱野谷憲吾(東京)06
④菊地孝平(静岡)  01!!
⑥松井 繁(大阪)  07
⑤瓜生正義(福岡) 09
③今垣光太郎(石川)10

 着順から先に言ってしまえば、123654。11Rと寸分違わぬ結果になったのだが、レースの熾烈さは縦長展開の11Rとは別次元の凄まじさだった。まず、勝負駆けの条件がヤバい。ボーダー7・00として、外枠3艇が菊地①、瓜生③、松井②と崖っぷち。内3艇にも完走当確や脱落者のいない問答無用のサバイバルカードなのだ。
2010_1222_r12_1254   6号艇の松井が動いた。すかさず瓜生が、菊地が、今垣が抵抗する。松井が加速し、他艇も加速。こうなると、イン水域を死守したい内2艇も“参戦”せざるをえない。バック水面からホーム側へ、全艇が猛ダッシュで突入するという異常事態だ。一歩も引かない王者に、まずは瓜生が一抜けを決めた。スタート展示でも5対1の単騎がまし。想定内の範囲だろうし、これはこれでスローよりチャンスは膨らむ。
 そして、松井の内に舳先を入れようとしていた今垣も、「ダメだこりゃ」とばかりに回り直し。スタンド騒然。5対1ならともかく、深~い横並びの4艇にたっぷり助走距離をとった2艇となれば、どちらが有利かわからない。
2010_1222_r12_1264_2  5カドの瓜生か!?
 瓜生のアタマ舟券で勝負している私の心はそぞろときめいた。スロー4艇がずんずん深くなるたび、私の動悸もどんどん速くなる。逆に中島アタマでメイチ勝負している人も、心電図が振り切れるほどだったろう。12秒針が回る。中島の起こしは、80mを切っていたかもしれない。他の3艇も。
 瓜生、行けっ!!
 心の中で叫んだが、なんとスリットの臨界点まで突っ込んだのはインの中島だった! 後でそうと知って驚く、コンマ02のタッチ発進。3コースの菊地もコンマ01という生死を分かつ領域まで踏み込んでいた。
 ありゃ、瓜生、届かない!?
 スロー勢の決死の覚悟が、ダッシュ勢の脅威を帳消しにしてしまった。それでも瓜生は果敢な全速決め撃ちのまくり差しを敢行したが、前が開かずに危険回避の減速を余儀なくされた。
2010_1222_r12_1316  バック直線、タッチSを生かして中島だけが抜け出した。抜け出したからといって、本当の勝負は終わらない。むしろ、はじまったばかり。これはファイナルではなく、トライアル3戦なのだ。2マーク、他の5艇がみんなもの凄いターンをしていた。どれだけみんな凄かったかというと、回り終わって5艇がほぼ横並び。進入固定のスタートみたいだった。そこから、わずかに有利な態勢だった憲吾が2周1マークを先取りする。ファイナル1号艇を決定付ける高速モンキー。でも、レースはまったく終わっていない。

2010_1222_r12_1321 2周バックで今度は4艇がほぼ横一線で伸びを競い合っていた。こんなレース、競艇じゃほとんどありえない。全員が「とにかくひとつでも上の着順を!」という決死の思いと、最高レベルのテクニックを駆使してターンすれば、こんな全部の直線がスタート?みたいな多数並列の状況が生まれるのか。2周2マーク、わずかに有利だった今垣が抜け出した。それでも、レースはまだ終わらない。松井と瓜生と菊地がもつれあいながら3周1マークで交錯し、バックで競り合う。4着争いなのに、SG優勝戦の1マークのような激しさ。いや、それ以上だったかもしれない。そして、すべてのターンマークがそんな迫力だったのに、ほとんど接触がないというテクニックの凄さ。まいった。あんたら、凄すぎる。
2010_1222_r12_1317  そして、最後に123654という死闘の結果が示され、勝者と敗者が生まれた。最後まで激しい4着争いを演じていた3艇は、実のところすべて脱落した。が、それでも、いや、だからこそ「ひとつでも上を、1点でも多く」という思いだけで死闘を繰り広げた彼らの走りは感動に値する。
 なんだか褒めてばかりだが、いくら褒めても褒め足りないぞ。
 進入といい、スリットといい、5着争いまで含めた道中の競り合いといい、これぞ究極の賞金王決定戦・トライアル第3戦だった。この1戦でベスト6に入れなかった者には、わずかな賞金が与えられるのみ。生き残った者には、1億円と艇界NO1の象徴である黄金のヘルメットと名誉と賞賛と尊敬と、それらを同時に勝ち取るチャンスが与えられる。さらに、向こう1年のSG参戦権まで得られる。そんな残酷なまでのトライアルの本質を、言葉ではなく水面の航走だけで余すところなく伝えていた。伝えてくれた。私がこれまでに観てきた中で、間違いなく最強最高の「勝負駆けレース」だった。(photos/中尾茂幸、text/H)


| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
コメント