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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――レース後、本日も……

●トライアル第2戦 11R後
2010_1221_0509  濱野谷憲吾がニッカ~と笑った。2戦目をモノにして、明日へのメドが立ったこと。もちろん1号艇を生かし切ったこと。短期決戦の賞金王では、2戦目はかなり大事な一戦になる。たったの2戦で白旗を揚げなければならないこともあるからだ。1着の重み。あるいは1号艇の重み。すでに11回目の経験となる濱野谷は、それをよくわかっているだろう。
「もし回ってなくても、握って回ればなんとかなる」
 濱野谷はレース後の会見でそう言った。自分のテクニックへの絶対的な自信。これが濱野谷憲吾という男に、どこかのほほんとした穏やかさを与えている。それは時に武器となり、時に詰めの甘さとなり……。トライアル3戦目、前者の顔が出るなら、悲願に王手をかけることになるだろう。
2010_1221_0497  石野貴之は、笑ってはいなかったけれども、凛とした表情を見せていた。第1戦1着、第2戦2着。これが何を意味するのか、よくわかっていたのだろう。
「明日、6着でも優勝戦に乗れるのなら、1着を獲るレースを心掛けます」
 仮定の言葉を使っているが、おそらく認識していたはずだ。石野は、無事故完走でファイナル当確である。しかも結果的には、ただ一人の。この男は、間違いなく聡明だ。だから、何をなさねばならぬのか、しっかり把握してピットに立っているに違いない。
 そして、ポイントはむしろこちらだと思うのだが、当確だからこそ「1着を獲るレースを心掛ける」というのだ。何着でもOKなのだから無難なレースをするのではない、負けたっていいのだから、飛ばされるのを恐れるようなレースはしないというのである。やはり、石野貴之は聡明だと思う。そしてこれは、この大舞台においては間違いなく武器である。

2010_1221_0836  この二人ともっとも対照的だったのは、やっぱり山口剛だ。得点状況を把握していたかどうかはともかく、昨日の6着に続いての4着は、山口の心を暗くして当然の結果である。ヘルメットのシールド越しには苦笑いのようなものも見えていたけれども、それは苦しさに耐えている表情だと思う。
 寄り添っている辻栄蔵の顔は、はっきりと曇っていた。賞金王制覇の経験もある辻には、この着順の意味がわかっていたのかもしれない。山口は明日、ボーダーを21点とすれば、1着を獲っても1点足りない。後輩が立たされた窮地は、先輩の顔をも暗くするのである。
2010_1221_0676  松井繁は、敗れても感情をぐっと噛み殺し、ただ一人で悔しさに耐える孤高の男だが、今日は比較的淡々としているように見えた。その意味については、わかるような気もするし、しかしまったくわからないようにも思える。そもそも、トライアル2戦を終えて5着、3着なんて松井を見た記憶がないのだから。いや、あったとしても、松井がファイナルに残れない姿を想像したことがなかった。2着という明日のノルマを思うと、その淡々とした様子がどうにも僕のなかでまとまらないのである。
 で、昨日とまったく同じ様子だったのが今村豊だった。今日は6着なのに、寺田祥と昨日のVTRかと思うようなやり取りをしてるんだもの。やっぱりこの人はミスターなのである。

●トライアル第2戦 12R後
_u5w9233  まずはやっぱり、岡崎恭裕の笑顔か。昨日はツケマイで湯川浩司を沈め、今日はまくり差しで湯川のふところをグサリと刺す。同じ艇番、コースで2戦連続銀河系のスターをぶち抜くのだから、本当にこの男はすごい。そして今日は1着なのだから、笑顔が浮かんで当然というものだろう。
_u5w9593  中島孝平は、2着にもあまり表情を変えていない。それよりも、岡崎を捉えられそうで捉えられなかったことに、むしろ首を傾げていた、と言ってもいいのかもしれない。もともと、感情を爆発させるようなタイプではないから、まあいつも通りといえば、いつも通りではあるのだけれど。
 で、この二人はともに、レース後の会見では機力的な不安を口にしていた。中島は「最悪の状態は脱したが、高松宮杯のときに比べたら押す感じがしない」と語っている。高松宮杯はかなり噴いていて、優勝戦1号艇だから、その感覚が残りすぎているのでは、とも思えたが、しかし満足できるものではないのはたしかだろう。岡崎はその中島に分が悪かったというのだから、さらに不安は大きいはずだ。
_u5w9317  そうなると、実に気の毒なのが、湯川浩司である。レース後のやるせない表情は、とりあえず2着3着とまとめて第3戦を迎える者のものではない。「まったく、どうなってるんだよ」と言わんばかりの脱力感が、明日に影響しなければいいのだが……。濱野谷も「湯川が出てると思う」と証言しているくらい、湯川は岡崎と中島とは違って、機力的には不安がない(少ない)のである。実際、前半の記事にも書いたように、本体整備をしていた岡崎と中島に対して、湯川は手持無沙汰な感もあるくらい余裕だったのだ。しかし結果は……。これも賞金王の魔、なのだろうか。
_u5w9511  その湯川以上に強烈な悔しがり方をしていたのは、菊地孝平だ。怒りにうち震える、という表現しか思いつかないほどに、恐ろしいまでの目をして、地面に憤りを叩きつけるかのように激しい足取りで、控室へと戻っていったのだ。排水溝のフタの上を通ったときには、「ダンッ!」と大音響が響く。それは菊地の心の中のマグマが噴出した瞬間のように聞こえる。その姿が、トライアル第2戦の重みを改めて実感させてくれたのだった。

●トライアル第3戦枠番抽選
 明日はトライアル最終戦。まさしく運命の一戦となるわけだが、ということはつまり、枠番抽選は運命を左右しかねない、重すぎるガラガラポン。だというのに、今村さん、あなたって人は、ほんとサイコーです(笑)。
2010_1221_0563  まず奇妙な動きを見せたのは今垣光太郎。6つの玉をガラポン機に収める際、その穴から中を覗き込んだのだ。えっと、何も見えないと思います(笑)。いや、1号艇が出やすいところがムニャムニャ、と呟いていたが、そんなのもないと思います(笑)。で、「光ちゃん、光ちゃん」と突っ込んだのが今村さんというわけで。「こっちおいで、こっちおいで」と選手の輪に招き寄せて、笑いを誘っていたのでありました。
 今日の一番手は、12R1着の岡崎。さらっと回して、黄色い玉を出す。続く石野は、青い玉。残念そうに顔をゆがめたが、悪い枠ではあるまい。続いて湯川がガラポンの前に立つと、あたりはざわめき始めた。誰もが覚えているのだろう、福岡賞金王での3連続1号艇を。まさか再び……出た玉は赤。湯川は表情を変えなかったが、周囲が溜め息をついていたように思えたのは、気のせいか。4番手は山口で、ここであることに気づく。あっ、やまと世代のSGウィナーが勢ぞろいではないか。しかも、ここにはミスターがいる! まさしく歴史が交錯する一戦だぞ! と一人興奮していたら、山口は緑を引いて、あぁぁっと悲鳴をあげる。やまとのSG覇者は、なんと4~6枠に入ることになったのだった。
2010_1221_0425  となれば、ミスターが1枠に入れば……2000番台vsやまとの世代闘争色がより鮮明になる! しかし今村は今日6着だから、残りものに福を期待する立場。世代闘争ウンヌンなんてまったく意識してなかっただろうけど、残っているのが1号艇と2号艇ということで今村も色めき立っていた。
 5番手は池田浩二。玉が出た瞬間、ガッツポーズ! 白が出ました! というわけで、今村は自動的に2号艇に決まりなのだが、「ドキドキするな!」などと盛り上げるわけだから、ほんと今村さん、サイコーです!

 続いて、濱野谷憲吾がガラポンの前に立ち、A組の抽選。濱野谷は黒を出して、まずまず満足そうな表情を見せる。続く中島は、めちゃくちゃアッサリ回して、アッサリ白い玉登場! 最初の2人で内枠が出てしまったのだった。
_u5w9428  3番手は松井だ。薄く笑みを浮かべながら、ガラポンをくるり。出たのは……緑。そう、緑。何度見ても緑。なぜ王者は毎年、この色の玉を出してしまうのだ! 玉の色を見た松井は、ガラポンの持ち手を握りながら硬直。表情は薄い笑みなのだが、なぜ俺はこうまで、と思ったことだろう。ガラポンの前を離れると、松井は一言、「すごいわ」と呆れ気味につぶやいた。そして今村さんは「お前、もってる!」と嬉しそう(笑)。あなたって人は……(笑)。
 4番手の今垣は、赤を引いて「よしっ」。残っているなかでは一番の好枠だから、それを出せたことにホッとしたか。続く瓜生正義は、うがっ、また黄色! 3戦連続で5号艇! 顔が少しだけ歪んだように見えたのは、見間違いではあるまい。
 で、ラストの菊地は今日と同じ4号艇。リベンジという意味では、非常にわかりやすい状況になったと言えるだろう。菊地がニヤリとしたように見えたのも、見間違いではないと思う。
 今晩、ボートファンの集まる酒場でもっともアツく激論が交わされるであろうテーマは、「2着条件で6号艇の王者がどう戦うか(どこまで動くのか)」だろうな……。(PHOTO/中尾茂幸=11R、今垣、池田 池上一摩=12R、今村&瓜生 TEXT/黒須田)


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