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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――レース後

●トライアル第1戦 11R後

2010_1220_0427 「失敗したぁ~~~」
 岡崎恭裕はそう言って、顔をしかめた。自分のモーターを運んでくれている福岡支部の先輩たちのそばにすっと寄り添って、岡崎はヘルメットを脱ぎながら、眉間にしわを寄せたのだ。
 このレースでもっとも悔しい思いをしたのは、たしかに岡崎だったかもしれない。1マークは果敢なツケマイ。これがインを沈めている。しかし内を差され、2マークで後れを取り、2周1マークではややターン漏れして後ろに追いつかれ、2周2マークでは内から突っ込まれて接触。賞金王デビュー戦を勝利で飾る瞬間が見えていながら、結果は4着なのだから、あのクールに見える岡崎でも表情がゆがんで当然だ。
2010_1220_0646  いや、もしかしたらこの男も岡崎に匹敵するくらい悔しかったかもしれない。湯川浩司だ。インからスタートは決めている。先マイできそうな隊形にも思えた。しかし、岡崎のツケマイを浴びて後退。最終的には追い上げて逆転2着とはなっているが、せっかく自力で掴んだトライアル初戦1号艇を活かせなかったことは、心を揺さぶるものだったに違いない。
 実際、レース後の湯川は、相当に脱力している様子だった。カポックを脱ぐ動作も妙にスローだし、ヘルメットを脱ぐと「はぁ~~……」と溜め息が出る。こんなんやってられませんわ、てな吹き出しをくっつけたくなるほど、湯川は敗戦をただただ悔いていたのだった。
2010_1220_0707  池田浩二は、悔しがるというよりは、寺田祥や飯山泰、同期の面々に向かっておどけるような様子を見せていた。池田は2周2マークで岡崎と接触。内から突っ込んだ際、ターンマークに接触したことでスピードがさらについてしまい、岡崎に激しくぶつかってしまった、ということらしい(長嶺豊さんに聞きました)。この接触で、なんと池田のボートのフィンが外れてしまった。3周1マークで大きく外にそれていったのはこれが原因で、しかしそれでもしっかりゴールしているのは「池田のテクニック、すげぇ~」ということになる(競走会の“鬼教官”ことK氏に聞きました)。
 池田としては、この大舞台でまさかこんなことが起こるなんて!と、悔しい思いを抱えながらも、どこか不思議な心持になったようだ。この思いを誰かに伝えたい、という風情で、テラショーを見つけると駆け寄ったのだから、こんなアクシデントに見舞われた心情を吐き出さなければいられなかったのだろう。
 松井繁は、池田の航跡のワケが気になっていたのか、坪井康晴に声をかけている。坪井が説明すると、納得したように何度かうなずく松井。そうすることで悔しさを紛らしている……というのはうがちすぎであろうが、いきなりの大敗に、さすがに表情をカタくするレース直後であった。
2010_1220_0839  これが賞金王決定戦だ! ちょっと興奮した。敗者がそれぞれに素直な表情で敗戦への思いをあらわしている。トライアルとはいわば予選であるが、しかしただの予選ではないのだ。短期決戦のなかで、大きな目論見を抱いて臨む第1戦。それが崩れれば、ひたすらに悔しさを発散するのが当然というものだろう。
 だから、石野貴之が誇らしげに笑っているのも、また当然なのだ。賞金王デビュー戦で、いきなり衝撃的な勝利を飾ったのだから、ポーカーフェイスなどを見せていたら、僕はむしろ首を傾げていただろう。ほんと、男前だったなあ、石野の笑顔は。男前とは、単にルックスがいいというだけではなく、その充実感をストレートにあらわにする彼の大物っぷりをも含んでいる。
 で、賞金王とかそんなことを離れて、「ミスターらしさ」を今村豊が存分に見せてくれていたのも、嬉しいことだ。レース後にエンジン吊りを手伝う寺田祥らに向かって何かまくし立てているのは、いつもの通り。それをニコニコで聞きながら、ときに「アハハハ!」とテラショーが笑っているのもいつもの通り。ようするに、ギャグかなんかを交えてレースを振り返っているのだ。まあ、ヘルメットをかぶったままだからこっちには何を言ってるのか聞こえてこないのも、いつもの通りですね。それを見ているこちらとしては、これが賞金王決定戦の舞台で見られているのだから、ほんとサイコーだ。

●トライアル第2戦 12R後

 実は、12R出走の選手たちの表情は、あまり見ることはできなかった。というのも、12R終了後には明日、第2戦の枠番抽選会がある。決定戦出場選手は抽選会場に集まって、というアナウンスもかかるものだから、選手たちも急ぎ足で向かうのである。
 12R後というのは、言うまでもなく、次のレースの展示がないから(次のレースそのものがないから)、対岸のビジョンではすぐにリプレイが流される。選手はエンジン吊りをしながらリプレイを食い入るように見るもので、敗戦後の表情ウンヌンはあまり感じ取ることもできない。そのうえ急いで抽選へ、ともなれば、喜びも悔いもなかなか表情やしぐさには表れないものだろう。
2010_1220_0403  そんななかで印象に強く残ったのは、山口剛だった。川上剛が慰めの言葉をかけているようだったのだ、その間じゅう、実に複雑な笑顔を見せていたのだ。勝手に分析させてもらうと、苦笑い4割、本音を隠すための笑顔3割、やっちまった的笑顔2割、川上がそばにいてくれる嬉しさ1割、ってところだろうか。そのうえで、ほとんど目が笑っていないのだから、ようするに愕然たる思いになっていたようにしか見えなかった。
 昨日、山口は「決定戦はもっと独特な雰囲気だと思っていたが、そんなことはない」と言っていた。トライアル初戦、まさかの6着敗戦に、山口は何を感じただろうか。実際は独特の雰囲気に呑まれたのか、それとも……。山口に声援を送るなら、今夜、6着の悔恨は捨て去って、気持ちを切り替えてほしい! あの複雑な笑顔を引きずることは、絶対に得策ではないと思うからだ。

●トライアル第2戦枠番抽選
 まず、今年からシステムが変わった点があることを記しておこう。昨年までは「1着/3着/5着」と「2着/4着/6着」の2グループに分けられて翌日のカードが決定していたが、今年は「11R1着/11R3着/11R5着/12R2着/12R4着/12R6着」と「11R2着/11R4着/11R6着/12R1着/12R3着/12R5着」に分けられることとなった。前者がB組、後者がA組だ。で、枠番抽選はA組から行なわれ、ガラポンを回すのは着順が上の者からだ。
2010_1220_0648  ということで、いちばん最初にガラポンを回したのは、今垣光太郎。なぜか白いカポックを着たまま抽選に臨み(その後の勝利者インタビューでもそのままでしたね)、手を合わせて祈りを捧げてから、ガラガラポンと回すと……今垣の顔が瞬時に曇った。そして溜め息。そう、緑の玉が出てしまったのだ。取り囲む報道陣からも溜め息が漏れる。
 続いては湯川。トライアル初戦1号艇の2人が、明日は同じレースを走ることになった。で、湯川がさらりと回すと、出た玉は白! 会場はどよめきに包まれ、湯川は皆に向かってお辞儀をしてみせた。なんだか、福岡賞金王を思い出すなあ。ともあれ、初戦の白カポックは明暗くっきり、である。
2010_1220_0562  3番手は菊地孝平で、4号艇を引くとクールな表情。4番手の岡崎は、初戦と同じ3号艇で、奇しくも11Rの再戦の様相を呈した。5番手の中島孝平は2号艇を引き、ラストの池田浩二は必然的に……のはずだったのだが、今村豊が野次を飛ばす。
「2号艇を引け!」
 いや、だから必然的に5号艇なんですけど(笑)。まったくもって愉快なミスターなのである。
2010_1220_0502  続いてA組。最初に引いたのはもちろん石野で、3号艇が出るとニッコリ。2番手は瓜生正義で、ガラポンを回そうとすると、報道陣の輪の後ろから「瓜生さん!」と声援が飛んだ。見ると、身長3mくらいの川上剛。って、そんなに背が高いわけがなくて、よく見たら今井貴士が肩車をしていた。その際にあたりを見渡すと、辻栄蔵や石田政吾、須藤ヒロリンも報道陣の輪に紛れ込んでいた。シリーズ組も気になるんですね、抽選が。で、瓜生は初戦と同じ5号艇。
 3番手は今村。いざガラポンを回そうとすると……あ、照明が落ちた。会場が一瞬だけ暗くなって、すぐに蛍光灯がふたたび灯る。
「もってる」
 今村がそう言って笑う。そしてガラポン……。出たのは、緑。
「もってる(笑)」
2010_1220_0543  今村がつぶやいた瞬間、会場は大爆笑の輪に包まれたのだった。いちばん目立ってたのは、やっぱりこの人だったな(笑)。で、本当にもってたのは、次のファンタジスタで、濱野谷憲吾、2戦目は1号艇です! 濱野谷はクスリとも笑ってなかったけど。5番手松井は、さらりと回して、初戦と同じ4号艇。ラストの山口も、初戦と同じ2号艇。なんだか初日と同じ枠番がいくつか出てますね。
 ともあれ、11Rに組まれることとなったA組は、6号艇=今村でオールスローが濃厚となっている。瓜生は抽選後、今村に言ったそうです。
「今村さん、明日はダッシュの練習をしておいてください」
 ま、まさか……。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)


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