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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――女子王座準優の美

<10R>
_u5w8271 ●はしゃぎっぷりが美!――海野ゆかり
 訝しくなるほど、大はしゃぎしていたのだ、海野は。ピットに戻ってくるや、李忠成ばりの弓矢ポーズを見せるわ(あ、二人とも“広島”だ!)、陸に上がれば出会った人ほとんどすべてと抱き合うわ。ついには、ほんの数分前、自分の前を走っていた山川美由紀とハイタッチ。そりゃあ、揃って優出を決めて嬉しいのはわかるけど……。2着でこんなに大騒ぎしている人を初めて見たぞ。
 謎は会見で解けた。
「ビリになると思ってたので、奇跡です(笑)」
_u5w8351 それくらい、機力はカンペキに不足しているのだそうだ。それだけに、優出を果たせたことは海野にとっては快挙なのだ。「(平高奈菜のまくりで生まれた差し場に)入れたのは、さすがだな、と(笑)」とそのハンドルワークに酔ってみせるあたりも、ノリノリである(もちろんジョークで言ったことですが)。
 11Rを装着場のモニターで観戦している我々の前にあらわれても、まだゴキゲンは続いた。田口のジカまくりにキャッキャとはしゃぎ、3号艇が2着を走っているのを見ながら「まだ私は(優勝戦)6号艇かぁ……えっ、当たり前?」と軽口を飛ばし、「ここでスタートびしっと決められるのはすごいなあ。私なんてこの間、フライングだもん(戸田のオール女子で優勝戦1号艇Fでした)」と自虐に走って我々を笑わす。こんな海野、初めて見たぞ、ほんとに。
 そんな海野が、めっちゃ素敵でした! そして、プリティでしたぞ。

2011_0304_0699●淡々とした風情が美!――山川美由紀
 海野とは対照的に、淡々とした振る舞いが印象的であった。海野とのハイタッチは笑顔だったが、その表情も長続きはしない。「ハッキリ言って、1号艇で準優に乗れたのが不思議」と語ったように、パワー劣勢と認識しているらしく、それだけに優出を果たせたことに安堵感が強かったのか。それとも、本当の勝負は明日だと心に誓っているのか。いずれにしても、その粛々とした様子はまさしく貫録と呼ぶべきものなのであった。
 それでも、優出共同会見の最後に「福娘なので、ツイてますね」とジョークを飛ばして、ニコニコっと微笑んでいる。福娘というのは、尼崎の正月オール女子戦「福娘選抜」を優勝したということ。そういえば、あのレースと女子王座は相性が良く、優勝者は女子王座でも活躍することが多いんじゃなかったっけ?

_u5w8322 ●めっちゃ悔しがってる姿が美!――平高奈菜
 本気で勝ちに行ったのだろうし、真剣に優勝を狙っていたのだろう。女子王座初出場にしてその快挙を果たすのはなかなか難しいに決まっているが、平高は怯むことなく標的にしていたのだ。
 レース直後の硬い表情も印象的だったが、レース後、報道陣と話しながら、何度も何度も天を仰いできつく目をつむる姿が、実に素直な悔しがり方で素敵だった。若者が悔しさを押し隠そうとするなんて、そっちのほうが不自然だと僕は思うのだ。
 平高は間違いなく、来年からも常連としてこの舞台に立つはず。そして必ず、優勝戦線の主役を張ることになるだろう。ならば、この悔しさはまったくネガティブなものではない。来年、「去年のリベンジを果たす」なんて言葉を力強く口にしてくれたりしたら、僕は今日の平高奈菜の可憐な悔恨を思い出すだろう。

<11R>
2011_0305_0343 ●嫣然とした微笑みが美!――谷川里江
 どう表現したら、この色気が伝わるだろう。そう、色気。いわゆるセクシーということではなく、人間的な色気だ。多くの経験を積み、数々の修羅場を乗り越え、だからこそ可能な自然体で大舞台に臨み、結果を出す。こんな色気を醸し出せる者は、相当に限られている。
 共同会見で終始、嫣然とした微笑みを浮かべ、穏やかに応えている姿が、そうした色気たっぷりのものだった。「出足も伸びもないけど、ツキはありました、フフフフフフッ」とジョークを飛ばしつつ悪戯っぽく笑う姿は、キュートですらあった。やはり谷川里江という人は、何かをもっている人である。
 それにしても、女子リーグ卒業組の3人が、いずれも機力的な不安を口にしていることには注目しておきたい。奇しくも偶数艇に入ったベテラン組、特に谷川はカドになりそうなだけに、パワー不足がどう展開を左右するのか、カギを握ってくることになるだろう。そうしたなかでも巧みに上位をうかがうのが、彼女たちベテランの腕っぷしなのだが。

2011_0305_0491 ●女子王座への思いが美!――田口節子
「やっと優出できた、という感じです。優勝戦に乗れないのがこれだけ長いと不安になるし、縁がないんじゃないかと思ってました」
 これ、何気ない一言だけど、誰もが口にできるような軽い言葉ではない。田口は05年大村女子王座以来の優出。彼女の実力からすれば、たしかに不思議なことだったし、そしてその田口のコメントは「自分は優出して当然なのだ」という自覚のもとに口をついたものであることがスゴいのである。
 機力は、整備をして急上昇したそうである。実際、準優の行きアシはすごかった。そのうえ、田口はひとつの安堵を手に入れ、さらに教訓を忘れず、つまりはメンタルをも仕上げてきた。
「これまでの女子王座では、消極的なレースをしてしまっていた。だから、今日は差されてもいいので、思い切りまくった。2着までならそれでいい、と思って」
 これまで重ねてきてしまった後悔をもう二度と味わいたくない。そんな思いで、田口は優勝戦に臨むのである。

_u5w8398 ●涙が美!――三浦永理
 また三浦の涙を見た。賞金王シリーズ最終日、SG初1着で見せた涙。そして今日、1号艇を活かすことができず、田口にまくられて大敗を喫して流した涙。昨年の暮れは歓喜の涙だったが、今日は自分を責める涙だった。
 モーター格納作業をしながら涙を流す三浦に寄り添ったのは、佐々木裕美と今井裕梨。肩をたたいたり、背中をたたいたりして慰める二人だが、三浦の表情は変わらない。準優1号艇で見せてしまった“失態”を、三浦は絶対に許すつもりはないようだった。
_u5w8492  この涙もまた、誰もが流せるようなものではない。三浦もまた己の力、立ち位置などを自覚し、この1号艇は必勝だと誓った。明日は12Rを走るのだと信じた。だからこそ流れた涙なのだ。つまり、実力者の証、である。
 平高同様、来年の女子王座では「リベンジ」を口にしてほしい。そしてもう一度、うれし涙が見たい。今日の悔しさは、次なる歓喜への一里塚だと信じよう。

<12R>
2011_0305_0601 ●緊張感が美!――平山智加
 今朝、「ドキドキしてます」と言っていた平山。その緊張感は、準優でも平山から離れてくれなかったらしい。1マークでは緊張して少し握りすぎたのだと証言しているのだから、平山は自覚して走っていたことになる。
「理想はインから行かせていただきたいです(笑)」
 1号艇の選手のこの謙虚さは何だ? 鵜飼菜穂子が優出したのならともかく、もっと主張したって誰も怒らないし、罰も当たらない。しかし、平山はもってまわった表現で、そう言ったのである。もしかしたら、また新しい緊張が平山を包んでいるのかもしれない。
 しかし、そんな様子が実に初々しくはあった。女子王座4年連続出場のスーパーヒロインにそんな表現はふさわしくないかもしれないが、そんな雰囲気を出せるあたりがニュースターなのだろう。そして、そうでありながらも堂々たるレースを見せるのが、平山の真骨頂。今日だって、グレートマザーと菜穂子姐さんに真っ向から勝負を挑んで勝ち切っているのだから。

2011_0305_0502●ニコニコ笑顔が美!――魚谷香織
 平山と抱き合ってW優出を喜び合う姿は、艇界屈指の美しい光景だったと思う。考えてみれば、全国スター候補選手のワンツー決着。ボートレースの未来をまばゆく照らす光景でもあったわけだな。
 朝のピットで魚谷が整備士さんと相談しながら部品を選んでいた、と記している。これが魚谷のパワーを一気に変えたのだそうだ。交換したのはピストンリング。これがバッチリ当たったのだ。
 それが実っての優出。いったんは先頭を走りながら、2Mでターンマークに接触して後退したことについては悔やんでいたが、しかし喜びのほうが上回っている様子。浮かんでくる笑顔は、うーん、めっちゃプリティ! 優勝戦でもその笑顔が見たいし、平山と二度目のワンツーを決めたりしたら(どちらが先着しても)最高だよな~。

_u5w8533 ●永遠に美!――鵜飼菜穂子
 3着である。競り合いを制しての3着でも、準優では意味がない。それを知り尽くしている鵜飼は、ピットに戻り、ボートリフトが揚がるのを待つ間、手すりを右手で思い切り叩いた。
 いつまでも渾身の勝負に挑み、いつまでも生々しく感情をあらわにする。全盛期に比べれば衰えがあることを、たぶん誰よりも鵜飼自身が自覚していながらも、しかし勝負に臨む姿勢はその頃とも変わらないのだ。“小娘”の後塵を拝したことが本当に悔しい! それを強烈に魅せてくれる鵜飼菜穂子は、絶対的に永遠のビーナスである。
_u5w8547 「もぉ~、ダサすぎ!」
 そんなふうにおどけてみせるあたりは、それこそ開会式でも見せたようなお茶目な部分。そんな一面をもっているのも、また素敵である。そうした鵜飼菜穂子を目の当たりにして、自分がまだまだ若造であることを思い知る。それは、ともに戦う後輩たちも同様のはずで、鵜飼はその存在だけで周りを成長させてくれるのである。
 もちろん、来年の女子王座でもこんな鵜飼が見られることを信じている。(PHOTO/中尾茂幸=山川、谷川、田口、平山、魚谷 池上一摩=海野、平高、三浦、鵜飼 TEXT/黒須田)


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