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ボートレース特集 > 名人戦ファイナル私的回顧
この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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名人戦ファイナル私的回顧

「名人」と呼ばないで!?

12R優勝戦
①今村 豊(山口)05
②森脇 徹(山口)08
③中村裕将(東京)13
④岡  孝(徳島)13
⑤北川幸典(広島)06
⑥新良一規(山口)13

2011_0424_r12_0882  誰が不動の本命・今村に鈴を付けに行くか。それが最大のキーポイントだと私は思っていた。今節の常滑水面は、初日から面白いようにまくりが決まった。イン逃げよりもまくりが多いシリーズ。ここが住之江ならともかく、今節の常滑はインがミスター競艇・今村豊であっても、鉄板とは言えない。では、誰が仕掛ける? ちなみに、私の予想は行き足が突出している森脇だったのだが……。

2011_0424_r12_0895  スリットを通過して、私の目は森脇を捨てて黄色いカポックに釘付けとなった。行き足は平凡な北川でも、カドの利はでかい。持ち前のスタート力とダッシュの加速度を十二分に生かし、一気に内の艇を絞りはじめる。私の◎岡孝が真っ先に攻め潰されてゆく。今節、何度もそうだったように(ほとんど、すべてのレースだ)、私の舟券は1マークの手前で紙屑になった。
 スタンド騒然。北川のまくりが届くか、今村が踏みとどまるか。完全に一騎打ちの様相だ。北川が森脇を超えて、今村まで引き波に沈めようとする。今村も握って応戦する。そこで、日々上昇して完璧の域に仕上がった今村のレース足がフル稼働した。受け止めきって、突き放した。2日目あたりとは、すべての足が違った。
2011_0424_r12_0910  ただ、応戦した分だけ懐は甘くなる。内からすっと艇を伸ばしたのは、北川を徹底マークしていた新良だ。一瞬だけそのアウト差しが入りそうな勢いも感じたが、真っ直ぐ走りはじめた今村のスピードが、それを単なる錯覚だと知らしめた。今村と新良、同県のふたりは前検から何十回も足合わせを繰り返している。私が見た限り、4日目くらいまでは形勢に差がなかった。そして、昨日から今村の出足~行き足が優位に見えるようになった。そして今日、最後の大一番で勝敗を分ける決定的な差を披露したわけだ。
2011_0424_r12_0917  ぐんぐんぐんぐん引き離す今村。しかし、今村にとって最も危険だったのは、差がついたはずの1周2マークだった。北川が内の新良を目標ポイントに置きながら、最後のお願いのまくり差しを繰り出したのだ。2着狙いなど微塵もない、ただただ逆転を狙った渾身のターン。さすが、かつてはSG優勝戦でもあわやの見せ場を作った48歳の“スーパー新人”。逆転できるとしたら、ここっきゃない!!という気迫満々にしてスピード抜群の旋回だ。この一撃で、今村と北川が肉薄した。肉薄どころか、北川の舳先が今村の艇尾に接触してしまった。わずかだが、今村の艇が左右に揺れている。ボートレースでもっとも危険な接触のひとつがこれだ。舳先がエンジンに当たって一瞬で転覆するシーンを、何度見たことか。私は息を呑んで成り行きを見つめるしかない。今村の艇がまた直進し、一方の北川が真横に流れたとき、私はホッと胸を撫で下ろし、同時に第12代名人が誕生した。
2011_0424_r12_1020  ウイニングランで嬉しそうに手を振る今村を見ても、私にはさほどの感慨はなかった。去年の蒲郡モーターボート記念では涙がチョチョ切れたものだが、今日は違う。勝って当然のGIを、今村は当然のように勝った。勝って当然。それが実はどんなに難しいことか、とはよく言われることだが、それをいつだってさらりとやり遂げるからこそ今村豊なのである。
2011_0424_r12_0928 「名人とは呼ばれたくないですねぇ」
 優勝インタビューでファンの笑いを誘った今村だが、私もこのスーパーヒーローを「今村名人」と呼ぶことはないだろう。「永遠のプリンス」、「ミスター競艇」……どんなに派手なニックネームを付けてもまだ言い尽くせないこの男にとって、この「名人」は数ある勲章のひとつ、ほんの通過点のひとつにすぎない。偉大すぎる伝説の中の1エピソードが生まれたにすぎない。

2011_0424_0317  付記/嗚呼、だからこそ今村には悪いのだが、今日の私は岡孝の優勝を切望した。「艇界でもっともセクシーな男」と我々取材班が勝手に呼んでいる岡。陸の上ではクールでダンディで、そこはかとない色気を漂わせながら、水面ではF2持ちでコンマゼロ台連発、2コースジカまくり連発などなど野獣のような男らしさも垣間見せる。また、ピットでK記者がそれを褒めると、手を激しく振って「いやぁ、そんなそんなそんな、たまったまですよぉ」と照れに照れまくるのだという。これらを全部含めて、「セクシー番長」と私は呼びたい。そして、そんなセクシー番長が54歳にしてはじめてGIを制し、「岡名人」などと呼ばれたら……いったいどんな表情になってしまうのだろうか。それが見たかった。マジで見たかった。どうしても見たかった!!
 え、だから予想でも◎にしたのか?
 いや、そんな、まさか、ちゃんと、その……はい、ほとんどそのためだけでありました、すいまっしぇんっ!!><(photos/中尾茂幸、text/H)

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