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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――笑顔と眉間のシワ

 山口が3人! 準優3個レースに1人ずつ分散した山口勢が、全員優勝戦に駒を進めた。
2011_0423_0300  新良一規が10Rで2着。ボートリフトには11Rに出走する今村豊以外の山口勢=吉本正昭、森脇徹、高田悌二が出迎えて、バンザーイバンザーイ。まるで我がことのように喜ぶ同僚たちに、新良一規も笑顔を返す。
 森脇徹が12Rで1着。今度は山口勢全員が出迎えて、バンザーイバンザーイ。山口勢、大盛り上がりだ。いちばん喜んでいたのは高田悌二で、ガッツポーズを森脇に向ける。森脇もヘルメットの奥でゆるやかに笑っていた。
2011_0423_0162  11R1着の今村豊の出迎えではバンザイは出なかったけれども、バンザイなどするまでもなく、ということなのだろう。もちろん皆ニコニコと笑っていたけれども、今村の優出は当然だから、大げさに喜ぶほどではない、といったところか。
 それにしても、山口の結束はなかなかに強い。そして若々しい。登番がいちばん上なのは新良だが、その新良からしてとても50代中盤には見えない。そして、今村をはじめ、みな風貌が若い。ちょっとした例外が森脇なのではあるが、共同会見でのあまりの朴訥っぷりに、なるほどと膝を打ってしまった。言葉づかいは丁寧極まりなく、気の利いたことはほとんど言わず、言葉数も多くない。その素朴さと風貌が妙に一致するなあ、と思った次第だ。
_u5w1439  今日はレース終了後にボート洗浄を行なう日なのだが、森脇が自分のボートをスポンジでこすっていると、今村が「いいから、勝利者インタビューに行け」と促していた。今村のほうが年齢は下だが、55期の森脇ははるかに後輩(デビューした頃にはもう今村はSGレーサーだった)。正直、不思議な光景に見えてしまったのです、はい。そして森脇も、今村の気遣いにかなり恐縮している様子だった。
「明日は、今村さんはスタート遅れないと思うので、6~7割は差しだと思う」
 年下であろうと、先輩なのだから「今村さん」。今さらながら、なるほどなあ、と感心した次第である。
 そうそう、会見では新良が終始朗らかで、「今日のスタート? 慎重でした、ッハッハッハッハハ」などと笑顔が絶えなかった。レース直後も同様であって、カポック着脱場から笑い声混じりの感想戦の様子が伝わってくるのだ。明日は気楽な6号艇。人気薄だからといって、無視しないほうがいいと思う。

 今年も“新人”が複数、優勝戦に乗って来た。昨年は“脅威の新人”が席巻した優勝戦だったわけだが、今年の新48歳もレベルは高い。
2011_0423_0238  北川幸典は、もちろん敗れた悔しさをにじませてはいたけれども、ノルマと課していた優出を果たせたことの安堵も大きく、レース後も会見でも若々しい笑顔を絶やさなかった。
「引っ張りたいですね。カドが理想です。昔を思い出して、カマシで」
 北川といえば、カマシからの強攻。昔と言わず、最近でもそうしたシーンは見られるのだけれど、北川としては「昔を思い出す」ことに意味がありそうだ。
「やっぱり新鮮ですね。気持ちが若返るというか。みんなの気迫もすごいし、こういうのを若い子に見てほしいですね」
 はからずも、昨年の表彰式で、同県の先輩・西島義則が同じことを言っている。名人世代の姿勢というものに、改めて感じ入るところがある、ということだ。優勝戦ではもちろん最年少ということになるわけだが、だからこそ若々しいレースを見せる腹積もりだろう。
_u5w1421  もう一人の新人は中村裕将。田上晋六のまくりに乗って、しっかり展開を捉えた。
「あの展開がいちばん欲しかった。田上くんがカドになるんじゃないかと思ってました。スタートして、“差すなよ、差すなよ”って言ってましたね(笑)。行ってくれてよかった」
 会見での印象は「快活」「聡明」。質問には即座に反応し、理路整然と応える。頭の回転が速いのだ。そんなユーショーだから、展開を読んだ。もちろん、多くの人が想定した展開のひとつだけれども、ユーショーは揺るぎなく田上のひとつ外を選び、揺るぎなくハンドルを切ったのである。
 明日はどんな展開を思い描き、どんなハンドルを切るのだろうか。

_u5w2006  優出メンバーのなかで、ただ一人、違う表情を見せていたのは、岡孝である。レース後、悔しさを隠さなかった、あるいは隠せなかったのだ。
 先述したとおり、今日はボート洗浄の日。その間じゅう、岡の眉間にはシワが寄っていた。近寄りがたいオーラをバリバリに発散させ、顔つきはド迫力のコワモテになっている。そりゃあ、悔しい。予選1位を活かし切ることができなかったのだ。2着で優出を決めたことより、負けたことが悔しい。勝負師とはそういうものだろう。
 一瞬、岡が笑顔になった。誰かが声をかけたのか……と思ったら、岡の隣には誰もいなかった。田上晋六など関東勢がボート洗浄をヘルプしていたのだが、誰が声をかけたというわけではなかったのだ。
 なぜ、岡は笑ったのだろう。
 すぐにまた眉間にシワが寄り、もとの悔しそうな表情に戻っているのだが、あの一瞬は何だったのだろう。自嘲だったのか、スタート後手のまくられ敗戦に笑うしかなかったのか……。その後、森脇がレース後の挨拶に歩み寄ったが、返礼するだけで、顔つきは変わらず。眉間のシワはどこまでも深くなりそうな勢いだった。
 で、どうでもいいことかもしれないけど、会見の様子を見ていたら、森高一真を思い出してしまった。質問に最初はぶっきらぼうに答えていたのだが、それは悔しさを引きずっているというよりは、照れくさそうな様子。視線が定まらず、挙動不審ぎみに眉間にシワを寄せたりするのは、そうした場が苦手でなんか照れちゃう森高とそっくり。普段はとびきり優しく、しかし報道陣の前ではキャラを作り、敗戦後には誰よりも悔しがっている……うん、岡と森高は共通点がたくさんあるぞ。そんなナイスガイ岡孝を、明日も注目してみたい。アシは問題なし。明日は眉間のシワではなく、とびきりの笑顔を見せてくれるかもしれないから。(PHOTO/中尾茂幸=新良、今村、北川 池上一摩=森脇、中村、岡 TEXT/黒須田)


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