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ボートレース特集 > THEピット――風を読む
この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――風を読む

2011_0419_0434  朝から強い風が吹いており、漏れ聞こえてくる選手や関係者の会話から「安定板」なんて単語が聞こえてきたりする。地元でもっとも登番の若い西山昇一が、関係者と何度も話をしていて、さまざまな選手の間を飛び回っており、レースを終えた選手や試運転をした選手に意見を聞いているのかなあ……などと推測してみたり。
2011_0419_0762  たしかに強い追い風となる2マークでは、どの選手も相当に乗りにくそうにしており、1Rでは先に回ろうとした万谷章がもたついて、鈴木幸夫の逆転を許したりもしている。レース後、万谷は鈴木に「幸夫がもっとモゴモゴモゴ……」と語尾がまるで聞き取れない言葉を投げかけていたが、2011_0419_0647 あの逆転のされ方は悔しさのぶつけどころを見つけるのがなかなか難しいだろうなあ、と思った(鈴木は万谷の言葉に優しく笑みを返していた)。
 ……などと書いていたら、たったいま記者席では「6Rから安定板使用でーす」というアナウンスがありました。やっぱりそうですか。たぶん西山がもろもろと調整をしていたんだろうな、やっぱり。

2011_0419_0497  西山が声をかけた一人が、原田順一。装着場でモーター取り付けの点検をマイペースでしているところだった。まったくあくせくすることなく、時折立ち上がっては水面を眺めたり、係留所のほうに目をやったり。その雰囲気は、まるで仙人だ。
 昨年の徳山でも、原田は一人、水面のほうをじーっと眺めたりしていた。何を見ているのかと声をかけると、「風」だと。吹き流しや空中線だけでなく、岸壁際の波の立ち方や横断幕の揺れ方など、さまざまな地点を自分の目で観測しては、風の様子を読み取るのだ、と懇切丁寧に教えられ、それをここにも書いている。
 今日もまた同じ。点検の合間にじーっとどこかを眺める原田だったが、そのたびに視線の向いている先が違う。特に今日のように強い風が吹き付けている日には、風の質をしっかりと把握しておくのが、原田にとってしておくべき準備なのだろう。
2011_0418_0058  ……おっと、そんな原田を見ていたら、その20mほど向こうで岡孝が同じようなポーズで水面を眺めているではないか。原田は、一点を見据えている時間はそれほど長くはないが、岡はかなり長い時間、水面方向を凝視していた。岡といえば、鳴門のスタート野郎。こうして風を読みながら、スタート勘を研ぎ澄ましているのだろうか。

2011_0419_0581  整備室を覗き込む。まず目に飛び込んだのは亀本勇樹。本体をバラして、懸命な整備を施している。かなり厳しい目つきで、黙々とモーターと向き合う姿はなかなかおっかない。陽気なキャラの亀本も、やっぱり勝負師なのだと改めて実感する。
2011_0419_0472  奥のほうでは、中村裕将も本体をいじっていた。中村のモーターは、勝率の高い評判機のひとつ。昨日のイン受難水面のなかでも、しっかりと1コースから勝ち切っている。後半は大きな着をとってしまっているが、勝ったレースを見る限りは、上々の手応えではないかと思われた。
 エース機には手をつけづらい、といろんな選手、元選手から聞かされてきた。自分がいじったことで悪くしたら困る、そんな思いから整備に慎重になってしまうというのだ。気持ちはよくわかる。さらに良くなる可能性よりも、壊してしまう危険性に工具の手が止まる。それが人間というものだ。
 だがユーショーは、恐れることなく手を入れていたのだ。今日は12R6号艇。うむ。ちょっと狙ってみたくなりますな。もちろん、そうした勇気をもてるのは、これまで積み重ねてきたキャリアの賜物であるというべきだろう。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)


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