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ボートレース特集 > GI浜名湖賞 優勝戦極私的回顧
この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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GI浜名湖賞 優勝戦極私的回顧

神風を吹かせたのは……

12R優勝戦 進入順 st
⑤大嶋一也(愛知) 19
①飯山 泰(神奈川)17
②平石和男(埼玉)  23
③白井英治(山口)  08
⑥重野哲之(静岡)  10
④池田浩二(愛知)  11

2011_0705_r12_0715   神風が吹いた。
 優勝者インタビューで、白井は言った。私も、そう思う。今日は1Rから11Rまで、いや、この優勝戦のスタート展示までそこそこ強めのホーム追い風が吹いていたのだ(11Rは4m)。それが、スタート展示からわずか5分ほどの間に、吹き流しの向きが180度変わった。最初は穏やかに、徐々に徐々に強く。ファンファーレが鳴り響く頃には、準優のイン選手を苦しめ続けた昨日の荒れ水面とほぼまったく同じような状態になっていた。今日、イン選手が11連続オール3連対を果たした水面は、どこにもない。
 その向かい風を切り裂くように、大嶋が怒涛のピット離れでインを強奪する。飯山は2コースで折り合い、平石もスロー水域で舳先を向ける。向けている間にも、また風が強まった気がした。有利なはずのスロー3戦士が、心細い存在に思えてくる。
 昨日みたいなエゲツない向かい風で、有利になるのは、有利になるのは、有利になるのは……?
2011_0705_r12_0691  長身を思いきり伏せて、4カドの白井がスリットに向かってきた。カド受け平石とのスピード差は歴然。スロー3艇は、やはり昨日と同じように向かい風で本来の推進力を失っている。
「白井じゃ、白井で決まりじゃ~!!」
 スタンドの誰かが叫んだ。もちろん、誰も否定しない。白井が一気に絞りはじめた。内3艇にもはや勝機はなく、白井の敵は外の2艇になった。

2011_0705_r12_0700 その白井を徹底マークしていた地元の重野が、渾身のまくり差しを突き刺そうとする。池田が最内から差し抜けようとする。だが、それを成功させるには、白井の一撃まくりはあまりにも峻烈すぎた。
 2011年7月5日午後4時25分頃、突如として目には見えぬ姿かたちを変貌させた浜名湖の風は、まさに白井英治というボートレーサーを勝たせるためだけに吹いた神風だった。そう思うしかない。

       ※

2011_0705_r12_0879 「おめでと~、白井師匠!」
 表彰式の会場で私が両手を挙げると、壇上の白井はそれに気づいてニッコリ笑った。
 ここから、余談を書かせてもらう。2年ほど前のある夜、ひょんな縁から私と白井は東京の大久保で将棋を指していた。「勝ったほうが将棋の師匠になり、今後は弟子を好きなだけこき使っていい」という妙な“懸賞”を付けて。そして、私は敗れた。攻守のカナメの馬を素抜きされるという大ボーンヘッドで頓死したのだが、約束は約束。それから私は、白井を師匠と呼び続けている。白井も私を弟子と呼ぶ。まあ、こき使われたことは一度もないけどw
 そして今節。前検日の朝、新山口駅のホームで「お~い、お~い」と私を呼ぶ声が。白井だった。
2011_0705_r12_0854 「うわ、師匠~~!!」
「おお、弟子ィ、元気だったかぁ」
 父子ほども年が違う2人が、年功序列と正反対の呼称を交わす。新幹線を待っていた何人かが不思議そうに私を見た。それから浜名湖までの道中、師弟はさまざまな会話をしたわけだが、ちょっと意地悪な目になって師匠がこう言った。
「そうだ、たまにはいいエンジンを引かせてよ、弟子ならなんとかしなさい!」
 私は「そればっかりは無理だ」と言ってから、「とにかく抽選会場で師匠のためにガッツリ祈りますから」と付け加えた。その2時間後、白井はガラポン機を回し、私はガッツリ祈っていた。2連率53%の超抜候補だった。その数値を知った白井師匠はチラリと私を見て、口の半分だけで笑ってみせた。
2011_0705_r12_0818 嗚呼、だらだらと書いてしまったが、要するに私は自慢したいのだな。白井と私はなぜか 将棋の師弟関係で、山口で1年ぶりくらいにバッタリ再会して、それで流れが変わっていいエンジンが引けたのではないか、それが優勝につながったのではないか、とそんなことを言外に匂わせたいのだな。900万円の半分くらいは貰ってもいいのではないか、などと思っているわけだな。あるいは、今日の神風も私が……なわけないけど。
 表彰式の途中、弟子の私を見た白井が唇だけ「取った?」か「勝った?」みたいに動かした。舟券のことに決まっている。私は予想の通り買って、ガッツリ外している。白井師匠のアタマは134ボックスしかなかった。が、私は師匠に嘘をついた。思いきりうんうん頷いていた。弟子として首を横に振ることはできなかった。安心したように師匠は頷き返して、それで師弟のアイコンタクトは終わった。今、ここで書かせていただきます。
 白井師匠さま、師匠のパワーと勇気とテクとスタート力を信じ切れなかった上に、嘘までついてしまってご免なさい!!

 2011_0705_r12_0685_2今頃、白井は本物の大師匠・ミスター今村豊に、美味しい鰻重を振る舞っていることだろう。そして、900万円の手土産とともに山口へと帰ってゆく。一方の私は白井師匠を裏切ってほぼ無一文になって、同じく妻子の待つ山口(疎開先)へ……あ、無一文で帰れないじゃん!!(Photos/中尾茂幸、text/H)


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コメント

イイ話ダナァー(;∀;)

投稿者: ボート小僧 (2011/07/05 21:00:49)

うむ、ええレースじゃった

投稿者: ホワイトエンジェル (2011/07/06 7:22:37)
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