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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――プロの「姿勢」

2011_0702_0737  10R発売中に整備室を覗き込むと、坪井康晴が本体整備をしていた。雰囲気的にはどうやら終盤に差し掛かっているようで、実際11R発売中には控室に引き上げるところを見かけている。逆算して考えれば、7Rで1着を獲ったその直後から整備にかかったはず。ここまでの中間着続きを一気に巻き返す6コースからの勝利の余韻に浸ることもなく、坪井は即座にさらなるパワーアップをはかったのだ。
 もう何度も書いているし、いつも同じような内容になってしまうのだが、それでも。僕はこうした「姿勢」こそがトップレーサーの証なのではないかと思う。それはもちろん、自分のため。ノルマをクリアして予選を突破するため。努力を惜しまないのは、結局は自分の勝利のためである。それは、我々にとっても、信用に値する姿勢である。そう、実は舟券を買う人たちのためにもなっているのだ。それが結果に直結するわけではない。坪井は明日2着条件だが、整備もレースでの奮闘もむなしく、敗れてしまう可能性はもちろんある。だが、「やるべきことをやり尽くして」くれたのなら、坪井の舟券で勝負して外したとしても納得できる(かなり悔しくはあるけど)。選手はそれを意識しているわけではないけれども、自分の勝利に対してとことん執着する選手というのは、だから強くなるし、我々に舟券を買おうという気にさせてくれるものである。
2011_0702_0214  同じ時間帯にやはり本体整備をしていた瓜生正義も同様。瓜生は5Rで逃げ切っており、初戦6着を完全に巻き返して15位につけている。それでも、瓜生はパワーアップを模索する。そのための努力をやめない。はっきりいって、僕は(僕たちは)選手のテクニックの神髄の部分を知らない。モーター整備やペラ調整の理論も知らない。もちろん勉強はするけれども、レーサーの経験のない僕は(僕たちは)結局のところ、実感としてそうしたものを得ることはできない。つまり、完全に知ることは永遠にない。レースを長く見続けていれば、瓜生のテクニックが図抜けていることくらいは理解できるが、ではなぜ、どういうところがすごいのかはやはり完全にはわからないものだ。だが、それを身に着けさせた、いや、それが天性のものだとするならそれに磨きをかけたものは、やはり勝利を追求する「姿勢」ではないか、とやっぱり思うのだ。
2011_0702_0276  今日の午後でいえば、11Rをジカまくりで制した大嶋一也も、レース後は整備室で調整をしている。ここまで3勝をあげているパワーは上位級で間違いないはずだが、伸び型に寄っている性質は大嶋のスタイルに合っているわけではなく、ゆえに自分向きのアシに仕上がるよう、勝っても勝っても模索を続けるのだ。成績が悪くないから、それでいい。そんなことをダンディは少しも考えないのだろう。自分が納得し、悔いの残らない戦いをするためにも、ここで調整をやめるわけにはいかない。そうした「姿勢」は、やはりファンをも納得させるもののはずだ。まあ、大嶋はそのレーススタイルだけでも、ファンを充分唸らせられるんだけどね。今節だって、伸び型だというのにきっちりコースを取りにいくし。
2011_0702_0957  11R、その大嶋に突っ張ってインを奪ったのは、なんと2号艇の三嶌誠司であった。スタート展示は1号艇の今村豊がイン、大嶋が2コースだったのだが、本番ではまず三嶌が抵抗し、今村がその争いに乗り遅れたようなかたちになってしまったため、三嶌は迷うことなく大嶋の内に舳先をこじ入れたのだ。この並びが現出した瞬間、ため息をもらしたファンもいただろうし、怒号を飛ばしたファンもいただろうし、「よっしゃ、三嶌、逃げろーっ!」と叫んだファンもいただろうし、持っている舟券によっていろいろな感想があっただろう。だが、これがボートレースなのだし、三嶌の負けじ魂は長い目で見て、我々を納得させるもののはずだ。三嶌が黙って内を明け渡すような選手ではないとこれで知ったのだ。三嶌が内枠にいて、前付けする選手がいて、しかも三嶌に勝負がかかっていて、という状況があったとすれば、三嶌のガッツに託す手が充分にある。今日のようにコースを主張して、それで負けてしまったとしても、少なくとも僕は納得できる。三嶌を信頼する。
 ただ、三嶌自身、スタートが行けなかったことはかなり悔やんでいた。そう、インを主張するだけなら誰だってできる。そのうえで何ができるか、というのが選手にとっても大事だし、我々の舟券にも重要なことだ。それでも、リスクを背負って勝負に出た三嶌を責めることはできないし、誰より三嶌自身が自分を責めている。まあ、11Rは大嶋だけが早いスタートを行ってるんですけどね。三嶌も「フライングじゃないかと思ったんだけど」と言っていたし、つまりは大嶋は本当にすごいレースをしてみせたということだ。

 とまあ、なんだか観念的になっちゃいましたね。すみません。私は今日で管理解除。今節最後のピットということで、選手たちを、レースをみているうちにいろいろと考えちゃったのだ。ご容赦を。
2011_0702_0258  というわけで、ワタクシの今節最後のレースとなった12R。池田浩二の笑顔が爽快だったぞ! 1~2コースがスタートで後手を踏み、平本真之がのぞいて攻めていくが今垣が伸び返して抵抗(平本はかなり悔しがっていて「くっそー」とぼそり)、その上を池田が二段まくりで突き抜けたレースである。かつての池田といえば「差し屋」のイメージが相当に強かったのだが、今の池田は4コース時にはまくりのほうが圧倒的に多い!(新概念データより)まさにそのスタイルを貫いて激勝したレースであり、レース後のニコニコ顔を見ながら、やっぱり「姿勢」的なものの大切さを感じたのであった。
2011_0702_0126 「毎度!」
 カポック脱ぎ場に遅れて合流した白井英治が、冗談っぽく池田に言った。毎度毎度、よくまくってくれるなあ、お前は。そんな意味だろうか。池田も「毎度!」と返したが、毎度毎度まくっちゃって、あざーっす!てな感じ? 仲のいい二人だからこそのやり取りであるが、それはどこかプロフェッショナルとして認め合っている者同士のやり取りに見えて、実に爽快なのだった。
 うーん、やっぱりトップレーサーたちって、いいなあ……。というわけで、すっかり浜名湖を立ち去りがたくなってしまった次第でありました。明日は日曜日、舟券勝負で選手たちの「姿勢」を堪能しましょうかなあ……。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)


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