この特集について
ボートレース特集 > THEピット――ひとり
この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
ライタープロフィール
カテゴリー
関連リンク
競艇サポーターズ
関連書籍

 ボートレース特集

THEピット――ひとり

 今日のピットは、昨日とは様子が一変していた。整備室はがらんとしており、ペラ室にも空いている箇所が見受けられる。装着場の人影は少なく、やけに静かなのである。気温は昨日までと変わらないが、湿度が少し上がっていた午後イチのピット。体感としては4日間でもっとも暑く、それも少しは影響しているのかしら、とも思ったりして。まあ、夜の時間帯に出番を迎える選手にしてみれば、この暑さの中で調整したとしても、レースのころには気温などががらりと変わっているから、あわてて動き出す意味はそれほどない。
2011_0715_0187  いや、勝負駆けの日というのはこうした傾向があって、もちろん選手たちの気合が高まる日であるのは間違いないが、早い時間から整備やペラや試運転でドタバタと動き回る選手は意外と少ないものだ。ふと水面に目を向ければ、試運転をしているのは3~4艇だったりして、朝の特訓を終えてからはマイペースで動き出す選手が多かったということになる。ちなみに、試運転でもっとも見かけたネームプレートは「平石」。5Rに出走する平石和男が、単走で、時に村田修次あたりと足合わせをして、水面を疾駆していたのだった。
2011_0715_0409  装着場でもっとも見かけた選手は、平本真之だ。3R出走だから、まずは自分のレースの準備をしなくてはならず、後半出走組よりは当然、残された時間は少ない。同時に、新兵の仕事も合間にこなしており、他の若手が何もしていないというのではなく、先んじて仕事を見つけてはテキパキとこなしているという感じであった。あとで篠崎元志や峰竜太が仕事に向かえば、「あれ、誰かがやってくれてる」なんて感想を抱いたりするかも。これは今節を通して何度も目にする光景であり、だから装着場には選手が平本ひとり、なんて時間もけっこう多いのである。
2011_0715_0674  いや、早い時間帯で、装着場に平本ひとり、というのは本当は正確ではない。いちばん奥で、今垣光太郎がモーター装着とボート磨きを黙々としていたのだ。ただし、平本との距離は数10mあるから、絡みもないし、お互いの存在を意識することすらなかったであろう。今垣がこうしてひとり、作業をしている姿もあまり珍しいことではない。行動のパターンが少し異なっているのか、周囲には光ちゃんだけとなることは少ないことではないような気がする。そして、そうしたとき、普段は気さくに話しかけてくれる光ちゃんでも、こちらから声をかけようという気にはなれない。集中しているのが明らかだから。今日は、テレビカメラ、スチールカメラのレンズがいくつもいくつも向けられたりしていたものだが、今垣はそれを気にするふうもなく、作業に没頭しているのだった。
2011_0715_0571  整備室を覗くと、今村豊ひとりきり、だった。昨日はあれだけ選手がたくさん見られたのに、今日はミスターのみ。ただ、今村も整備をしていたわけではなく、ペラ磨き台でコシコシコシ。すでに大きな作業は必要のない段階に到達したようである。
2011_0715_0455  おもしろいもので、このペラ磨き台はその後も何人かの選手がやってきていたが、常にひとりきり状態であった。別に1台しかないわけではないのに、なぜか選手たちが入れ違いすれ違い状態になっていたのである。もちろん偶然でしょうけど。
 岩崎正哉→太田和美→松井繁→村田修次てな具合。ただ、岩崎と太田は一緒に整備室から出てきて、太田が「カハハハハハハ!」と甲高い声で笑ったのが聞こえたりもした。
2011_0715_0450  ペラ台が無人になったころ、整備室に飛び込んだのは井口佳典である。1Rで6号艇という不利枠を克服して1着、後半に望みをつないだ井口は、レース後に本体を外して整備を始めたのである。やはりこのクラスの選手は「1着だからOK」なんて気分には少しもならないのだろう。1着でも気になった点がある。1着でも不満だ。そんな感覚を得たら、迷わず本体を割りもするし、ペラも叩き直す。ひとり整備室にこもった井口の表情は相当に鋭く、後半の勝利に向けて全力で整備を始めたのだった。ピンピン勝負の今日、ひとまず1走目は乗り切った。井口の姿を見ていると後半も期待したくなるのだが、果たして。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)


| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
コメント