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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――三銃士、散る……

 九州イケメン三銃士は、そろって優出を逃してしまった。
 午後イチのピットでは、あれだけはしゃいでいた3人も、準優直前にはキリリと引き締まった凛々しい顔つきになっていた。若くて明るい青年たちも、一皮むけば勇ましい勝負師。ここ一番で見せる戦士の表情は、陽気な笑顔とはまた違った意味で魅力的だ。
_u5w7849  レース後の悔しそうな表情もまた、負けたのに失礼かもしれないが、カッコ良かった。いったんは2番手の目がおおいにあった岡崎恭裕は、露骨に顔をしかめて、悔しさをあらわにしていた。最近の岡崎は、敗れたあとによくこうした顔を見せるようになったなあ、と思う。それを僕は、非常に好もしいものと思う。悔しさを一人噛みしめるのは、もっともっと年齢とキャリアを重ねてからでいいはず。眉間のシワが深くなればなるほど、岡崎は怪物化するのだと僕は勝手に思っている。
_u5w7962  篠崎元志も、レース後に見せた表情は岡崎と同種のものだった。2番手争いに敗れた岡崎も悔しいだろうが、ほとんど見せ場らしい見せ場を作れなかった篠崎は、表情こそ同種でも、また別種の悔しさを噛み締めただろう。スリットではのぞいていたのだからなおさら。敬愛する偉大な先輩の強さをもっとも間近で目の当たりにさせられた篠崎が、端正なマスクを歪めるのは当然である(それでもイケメンだけどね)。
 峰竜太は、顔を真っ赤にして悔しがっていた。苦笑いも浮かんでいたが、これはスタートを行けなかったことが理由。かつて新鋭王座で見せていた「泣くのをこらえるための作り笑い」とは違うものであった。
_u5w8013  峰とは、レース後に話すことができた。モーター返納のあと、ペラ室に向かう峰に声をかけようとしたところ、峰はペラ調整のことで頭がいっぱいだったのか、いったんは通り過ぎている。だが、こちらの気配に気づいて、立ち止まってくれたのだ。そして開口一番、こう言った。
「本当に楽しいっす!」
 SGの準優を戦うことが、峰に充実感をもたらしていたようだ。「自分で言うのもなんですけど」と照れ笑いしてから、調整力がアップしていること、第一線で戦えていることの実感を嬉しそうに語った。そう、峰は確実にひとつかふたつ、ステージを上げた。「今日は情けないレースしちゃったんですけど」と反省も忘れず、それを糧にして即座に前を向く強さも身に着けている。今後おそらく、いくつかのカベにぶち当たることもあるだろう。だが、この最高レベルの舞台を楽しめるほど逞しくなった峰は、確実にこれからもSGの主役の一人として姿を見せてくれるだろう。
 三銃士の敗退は残念ではある。だが、今節のファイトはお見事だった。ピットでのハツラツとした動きも含めて。

2011_0717_0111  優出メンバーについて。6人が6人とも、実に印象的なふるまいを見せていたのだが、まず触れておきたいのは、今垣光太郎の異様なテンションの高さだ。
 重野哲之との2番手争いで、バックでは先行されながらも強烈な伸びで競り勝った。エンジン吊りに出てきた松井繁が「めっちゃ出とったやん!」と笑いかけると、今垣は「そうなんだよ~!」といった感じで、身振り手振りも交えながら、松井に話し続けた。松井としては、エンジン吊りの作業もあるし、そこまでの返答を期待していたわけではなさそうだったが、それでもかまわず光ちゃんはしゃべり続ける。ヘルメットをかぶったままだったので言葉はまったく聞き取れないが、松井が苦笑いになるほどの饒舌っぷりは、気分が高揚していることをあらわしているものだった。_u5w7956 激戦に敗れ、力が抜けたようにふらつく重野とは、正反対である。たった1つの着順の差でしかないのに、その差はあまりにも残酷だったのだ。
 会見でも今垣は、実に饒舌であった。もっともたくさんの言葉を並べたのは、間違いなくこの人だろう。そのなかからひとつだけ記しておくと、握って回ったら爆発力のあるアシ、だそうである。明日は白井英治の攻めに乗って全速まくり差し、というのが考えうる勝ちパターンとなりそうだ。
_u5w7868  テンションは変わらないが、赤岩善生は昨日と変わらぬ充実ぶりを見せていた。「機力も気力も充実している」とのことだが、たしかにパワーもメンタルも最高の仕上がりを見せている。レースを終えてピットに戻ってきた赤岩は、ヘルメット越しにも「してやったり」の笑みを浮かべているのがわかるほど、目を細めていた。誰と視線を合わせたのかはわからなかったが、誰かに向かってニヤリと笑みを深めた瞬間もあった。悲願や目標やノルマに向けて、ひたすら闘志を燃やす赤岩善生ではない、ニュータイプの赤岩善生がそこにいる。優勝戦直前にどんな状態になるのかは断言しきれないが、もし明日もこの気力を(機力以上に)維持できているのであれば、今日の勝利は地元SGに王手をかけたものということになるだろう。
_u5w7827  佐々木康幸は、会見でタイトル奪取への思いを、しみじみとした口調で語っている。グラチャンの優勝戦後、「SG取りたかったなぁ……」とやはりしみじみ呟いたのが印象に残っていて、佐々木のSGタイトルへの思いは日に日に増しているようである。
「SG制覇はもちろんデビューのころからの目標ですけど、以前は単なる目標だった。いまは、自分で言うのもなんですけど、技量も上がっていると思うし、狙える位置にいると思うんです。今までは、優出できてよかったって喜んでただけだった。でも今は、自分のレベルが上がっていると感じられるんです」
 まだ優勝戦用のカウリングが装着されていないボートを丁寧に磨きながら、佐々木はやはりしみじみとそう語った。明日、もっとも勝ちたいと強く願っているのは佐々木康幸ではないのか、と思った。
2011_0717_0442 同じくSG初制覇を狙う白井英治については、長嶺豊さんに面白い話を聞いた。10R終了後に帰宿の第一便が出発するのは既報のとおり。しかし、白井はJLCの優勝戦展望に出演しなければならなかった。11Rが終わるまでは枠番が決まらない。つまり、それを待っていたら、一便では帰ることができない。
「そしたら白井が言うんや。4号艇と5号艇の2パターン収録しましょうって(10Rの結果で6号艇がないことは決まっていた)。いや~、助かったわ~」
 結果、5号艇パターンはお蔵入りとなったわけだが、2パターン収録に付き合ってくれた白井に、長嶺さんは感謝していた。まあ、一便で帰りたかっただけなんですけどね、白井は。ただ「一便で帰るのは、けっこう大きいんですわ。早く汗を流せるから、疲れも取れやすい。帰れるなら帰ったほうがええんですよ」と長嶺さんは言っている。明日を体調万全で戦うための行動になっているのだ。
_u5w7989  瓜生正義は、淡々、である。なんかもう、優出するのが当たり前みたいだな~。「(最近好調だが)僕じゃない成績ですよね。恵まれてます」なんて謙遜、かえって違和感ありますよ、瓜生選手! とにかく強いし、レース後のふるまいや会見での様子は余裕綽々。瓜生については、これくらいしか書くことがないな。アシ的には、バランスがとれていて悪いところがない、とのこと。グラチャンとの相違点はまさにここで、児島ではとにかくストレートが強力で、今回はそこも含めてバランス型というわけだ。実際、スタート遅れても伸び返しているわけだし、準優は。なんか無敵っぽいな、もはや。
_u5w8095  で、もっとも不気味なのは、湯川浩司である。レースを終えてピットに戻ってきてから、会見終了まで、笑顔をまったく見なかった。地上波放送のインタビューや、会見場に向かう途中の表情は見ていないが、僕が見られる範囲では頬が緩んだ瞬間は皆無。会見で仕上がりを問われて、即座に「最高級でしたね」と独特の言い回しをした際には、報道陣は笑っているのだ。しかし湯川の目つきは真剣なままだった。
「コースはわかんないですね。はい、わかりません」
 これ、6号艇の選手のコメントだろうか。6コースでも何か起こりそうなメンバー、とも付け加えてはいるが、前付けを受けそうな内側の枠ではなく、コースが変わるなら自分が前付けするしかない枠の選手が口にしたコメントだと考えると、不気味と言うしかないではないか。
 明らかに雰囲気の違う湯川浩司が、優勝戦をかき回す存在になるのは間違いない。(PHOTO/中尾茂幸=今垣、白井 池上一摩=それ以外 TEXT/黒須田)


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