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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――風の準優

2011_0704_r10_0517  準優が始まる前にピットへ戻ると、朝とは明らかに"音"が違っていた。係留ピットにとめてあるボートが、艇底に波を受けてバシャッ、バシャッと激しく音を立てている。その音は風に乗ってピット内へ運ばれ、屋根の低い装着場の中で増幅されたように響いている。公式記録では1R時が風速6m、準優時が風速7mだからたいして変わってはいない。しかし体感と音はまるで違っていた。いつもは静寂に包まれて穏やかな時間が流れる夕方のピットも、今日は何だか騒がしく感じられた。
 向かい風=イン不利は艇界の定説だ。今年に入ってからの浜名湖のデータでは、イン1着率は追い風時が38.5%、向かい風時は37.0%。さらに風速5m以上になると、追い風時が37.2%、向かい風時は32.6%と大きな差が出る。

2011_0704_r10_0607  結局準優1号艇の3人は定説に逆らえなかった。
 10Rは⑥白井英治が6コースから制す。③井口の5コースまくりにのって全速まくり差し一閃。鮮やかな一撃だった。これで白井は当地51周年(2着)、52周年(3着)、55周年(2着)に続いて浜名湖周年4回目の優出となっている。
 白井はレースを終えてピットに揚がってくると、真っ先に井口のもとへ歩み寄った。そして右手を軽く挙げながら「ごめん」と1マークでの接触を詫びる。井口は首を横に振りながらそれに応えた。
 井口にとっては痛恨のレースだっただろう。持ち前のスタート一気の展開に持ち込みながらも、5着という結果に終わってしまった。
2011_0704_r10_0672  彼はモーターの格納作業を終えると、いまレースを走ってきたペラを持ってペラ調整室へと向かった。ゲージをあてがって確認しながら微調整程度に叩いていく。ほんの数回叩いてその作業は終わった。ベストな調整には数ミリ、いやコンマ数ミリずれていたようだ。
 残念ながら準優敗退に終わった井口だが、今節の彼からは感じるものがあった。井口の昨日の体重は51.2キロ。今年最も軽い数字だ。以前彼から聞いたことがある。「一番ベストなコンディションでレースができる体重は51キロ」だと。勝負どころのレースでは減量してそこまでもっていくという。彼の本気度は体重を見ればわかるのだ。おそらく井口は次節の蒲郡オーシャンで勝負をかける意気込みだ。今節はそのステップとして上々の一節になったことだろう。

2011_0704_r11_0784  11Rは④平石和男の4コースまくりが決まった。ピットに戻ってくる平石を、浅見昌克が小さく控えめにバンザイしながら出迎える。同じ関東勢の①濱野谷憲吾が4着に沈んだだけに大きく喜びを表すこともできなかったのだろう。配慮のきいた歓喜だった。
 平石は当地GⅠV2の実績。02年と04年に浜名湖モーターボート大賞でV歴がある。今年3月には浜名湖GⅢ企業杯で優勝も飾ったばかりだ。浜名湖巧者が今節も勝ち上がってきた。
 そういえば平石が乗っている54号機は、先月の女子リーグで鈴木成美が節間4勝の大暴れを見せて地元初優出を飾ったモーターだ。
 2着には②重野哲之が入った。これで浜名湖周年での地元静岡勢の優出は、04年から9大会連続で続いていることになる。重野自身は江戸川周年に続くGⅠ連続優出で、昨年の東海地区選に続く浜名湖GⅠ連続優出だ。

2011_0704_r12_1084  12Rは③飯山泰がまくり差しで制し、①池田浩二が2着に踏ん張って81期のワンツーになった。登番ひとつ違いの2人が優勝戦で顔を合わせるのは、02年の蒲郡新鋭リーグ以来で約9年ぶり。記念ではもちろん初めてになる。
 レース後の池田は、敗れた悔しさよりも2着に残した安堵のほうが大きいように感じた。エンジン吊りにきた大嶋一也や、2着争いを戦った服部幸男らに声をかけられ、清々しい笑顔で言葉を返している姿が目についた。厳しい水面状況、強力なライバル、立ちはだかる難敵と戦って優勝への望みをつなげた。最悪の結果ではない。
 あれは何R発売中だったか、池田と飯山が足合わせをしているのが目に入った。コーナーを回って池田が1艇身ほど先行し、直線で飯山が一気に追いつくという展開だった。池田にとっては準優で1マークを先に回れるかという不安もあったことだろう。先マイして2着なら及第点か。
 また「準優イン戦2着→優勝戦4号艇」という流れは、2月のびわこ周年で優勝したときと同じでもある。チャンスは充分あるということを池田自身がよくわかっているはずだ。

2011_0704_r12_1019  シリーズは5日間を終え、いよいよ最終盤の局面を迎える。優勝戦のメンバーはちょっと意外な顔ぶれといってもいいだろう。予選の順位は内枠から順に飯山6位、平石11位、白井16位、池田1位、大嶋3位、重野5位だ。風のいたずらもあって、誰が勝っても不思議ではない構成になった。今晩から明日午前にかけて雨の予報も出ている。明日はどんないたずらが待っているのだろうか。(PHOTO/中尾茂幸、TEXT/森喜春)


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コメント

女子番・森記者のピット記事、今節読ませて頂いて
情景・状況が現地で見てる人の視点からきちんと書かれていて、
非常に読みやすくてかなり好きです。
是非また記念でもピット担当して下さい。

こんなことを言うと申し訳ないですが、
編集長さんの記事は、こう…主観が主体な感が強いので(苦笑)

投稿者: みず (2011/07/04 23:51:33)
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