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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――整備する人たち

2011_1005_0705  東日本復興支援競走を制し、賞金王当確の重野哲之が、6着2本という最悪のスタートを切ってしまった。多くの節で持ち味の行き足から伸びが好調、それを武器に爽やかなレースを見せてきていた重野だが、今回の相棒はどうにも言うことを聞いてくれないらしい。というわけで、重野はレース後、大きな整備に取り掛かっていた。
 整備室には重野の他にも選手の姿が数多く見かけられ、そちらに視線を移していると、「カンッ!」と大きな音が響き渡る。音の方向に目をやると、重野が調整の過程で思い切り木槌を振り下ろした瞬間だったようで、木槌をテーブルに置いた重野がキャリアボディーの内部を覗き込んでいる姿があった。この整備はかなり長く続き、重野がようやく整備室から出てきたのは、ドリーム戦が始まる直前だった。
2011_1005_0531  そのドリーム戦をピットから対岸のビジョンで観戦した重野。「もしこれで明日良くなってたら、俺って整備の……」「理論的には……」などという言葉が聞こえてきていて、重野は三浦永理に整備の詳細を語りながらレースを見ていたのだった。会話の内容は、選手同士にしか理解できない類いのもので、とにかく重野は自身の経験と理論を頼りに、思い切った整備をしたということはわかった。時間があれば、試運転をして手応えを確かめたかっただろうが、さすがにもう時間は残されていなかった。明日は2R1号艇。おそらく朝早くから水面を駆け廻る重野の姿が見られるに違いない。
2011_1004_0823 整備室で印象に残ったのは、森高一真だ。本体整備をかなり長い時間、熱心にしていたのだ。その表情は、彼が人前で作るイカついものではないけれども、なかなかのド迫力。それほどまでに、森高は相棒のチューンアップに集中していたのである。
 森高とは3日前に一緒にイベントをやった。笑顔ばかりだったし、きわどい話もいっぱいしていたし、最後は相当に酔っぱらっていた。そして、とびきりに優しくみんなと接していた。これが普段の森高一真だ。しかし、整備室での森高は表情を180度変えていた。仕事とオフでは表情が違って当然、誰だって(きっと僕だって)同様に違いないのだが、勝負師に徹する森高のありようは、その度合いがかなり深く、濃密に思える。整備を終えて控室に戻る際には、こちらには目もくれず、厳しい顔つきのまま消えていくのだ。 いや、声をかければ、きっといつもの笑顔で応えてくれるに違いない。それもまた森高だ。しかし、戦場に立てば自然と戦闘モードに切り替わる森高に、こちらも無駄な言葉をかけようとは思わない。慄えるような表情の森高を見ているのも、実に楽しいからだ。その後は、ペラ室で木村光宏とペラ談義をしてもいたが、その表情もまた鋭く、それは職人的でもあった。
2011_1005_0721 整備室でもうひとつ印象に残ったのは、川﨑智幸の素早い動きだ。9Rは、スタンドの記者席で観戦した。川﨑が逆転で2着になったレースだ。見終えると、僕は即座にピットに向かっている。記者席は1マーク寄りで、ピットは2Mの少し奥。約300m+階段の上り下りで、3~4分の行程か。ピットに入って、整備室までは1分ほど。ピットのいちばん奥に整備室はあるのだ。その前に、装着場内を若干ふらついたりもしたが、整備室を覗いたタイミングはレースを見終えてから10分はかかっていない。なのに、川﨑が整備室にいたのだ。
 しかも、ギアケースの整備に取り掛かるところだった。レースを終え、エンジン吊りをし、着替えて、ピット最奥の整備室に向かい、モーターからギアケースを外し……という動きを10分もかからずに川﨑はやり終えたということになる。いやあ、ビックリしたもんなあ。タイムスリップでもしたんじゃないかと錯覚したくらい、そこに川﨑がいることが信じられなかったのである。9R組がモーター格納のために整備室に来始めたのはそれから数分後のこと。その頃にはもう、川﨑は工具を手にギアケースを調整していたのだった。

 さてさて、H記者がどんな機力評価をするのかはぜんぜん知らんが、初日時点でのツートップは太田和美と篠崎元志だと思う。
2011_1005_0671  エース50号機を駆る太田のレースぶりは圧巻でしたね。4枠5枠で連勝発進なのだから、早くもダービー戦線の主導権を握ったと言えるだろう。それでも、ピットでは淡々として、浮足立つところなどいっさい見当たらない太田は貫録の一言。この人をベテランとはまだまだ呼びたくないのだけれども、それに類した風格がある。明日ももちろん注目の一人だ。
2011_1005_0230   篠崎は、7Rで4カドから内の抵抗を振り切ってのまくり勝ち。スリット近辺の行き足とそこからの伸びは、すでに超抜級と言っていいはずである。で、その源はまずはもちろんモーターのパワーなのだが、どうやらそれだけではないというウワサなのである。篠崎が引き当てたボート(69番)もまた評判艇なのだそうだ。教えてくれたのはまえくみこと前田くみ子さん。まえくみも人づてに聞いたとのことだが、いくらなんでも「ボートがいいらしい」くらいのことを間違った伝言ゲームするわけないので、信憑性の高い情報だろう。舟券推理においてボートというのはかなり忘れられがちな要素だと思われるが(僕はいっさい考えません)、ボートだってモーターと同様、微妙な個体差もしくは個性があるわけである。篠崎は好機と好艇の組み合わせで戦っているというわけで、明日以降さらに機力を引き出してきたら……という期待感がある。そのあたり、篠崎に聞いてみたいと思ったのだが、あちこち飛び回っていてつかまえられなかったのが残念。もし興味深い話が聞けたら、続報します。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)


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