この特集について
ボートレース特集 > THEピット――悔恨
この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
ライタープロフィール
カテゴリー
関連リンク
競艇サポーターズ
関連書籍

 ボートレース特集

THEピット――悔恨

 笑顔を多く見かけた午前中に比べて、夕刻の時間帯には悔恨をたくさん見かけた。とびきりの負けず嫌いが集うのがレース水面、6分の5という圧倒的な確率で敗者が生まれているレース後には、悔しがる顔がずらりと並ぶのが必然ではある。それでも、気温が10℃を切って冷気が身に染みる午後には、なぜか彼らの姿ばかりが目についた。冬の空気がこちらの顔も固まらせているからだろうか。
2011_1220_1204 もっとも強く印象に残ったのは、須藤博倫だ。最高のナイスガイの表情が凍り付いていたのは、まさか寒さが理由ではあるまい。1号艇だった前半で痛恨の転覆。後半11Rはまくり差す展開があったように見えながらも5着大敗。転覆は選手責任だったから、得点的にはマイナスからのスタートとなってしまっているのだ。地元総理杯への勝負駆けと強い思いを抱いて臨んだ今節、初日に内枠が回ってくるという絶好のチャンスをこんなかたちで棒に振るとは、いくらヒロリンでも笑顔が浮かぶはずがない。落胆ばかりが心中を占めて当然だろう。
2011_1220_1195  レース後の整備室では、同じレースで敗れている藤丸光一と並んで格納作業をしていた。藤丸もレース後には呆然とも見える力ない表情を見せていたが、そうした二人が顔を合わせれば、レースの感想戦も陽気なものにはならない。快哉であれ苦笑であれ、レース終了から少し時間を置いてからのこの作業では、笑みがこぼれる場面のほうを多く見かけるものだが、須藤と藤丸からはほとんど見ることができなかった。代わりに、首をひねる場面を何度も見た。
2011_1220_1206  その11Rでシンガリに敗れたのは、白石健である。「シライシタケシですっ!」の開会式でもおなじみのシラケンは、普段は生真面目で折り目正しく快活な好青年である。しかし、大敗を喫したあとには陽気でいられるわけがない。沈痛なまでに、表情を硬くしているのだ。視線も下を向きがちで、ボートリフトから控室に戻る際には、待ち構えていたカメラマンの輪の中に突っ込んでいた。レースでの反省が脳裏を埋め尽くし、そこに人の群れがあることに気付かなかったのだろう。もちろん直前で気配には気づいて、人と人との狭い間隔をすり抜けている。頭を下げながら身をよじって通り抜けるあたりはシラケンらしいと思えるものだが、きっとそこまで全身で悔しがるのも、もうひとつのシラケンらしさなのであろう。
2011_1220_0392  ドリーム戦では、井口佳典の様子が目についた。12Rのあとには、当然のことながら展示航走がない。だから、エンジン吊りが終わって控室へと歩き出す頃、対岸のビジョンにはリプレイが流れている。歩を止めてその映像に見入る選手たち、というのが最終レース後のよくある光景。今日も、原田幸哉や魚谷智之が、レース時の姿のまま、ビジョンに目を向けていた。井口もその一人だったわけだが、原田と魚谷と違っていたのは、歩き出そうとしては立ち止まって振り返り、また歩き出そうとして振り返り、というアクションを繰り返していたことだ。なにしろ、道中は3番手を走っていながら、最終周で魚谷に逆転されて4着。気になる局面はいくつもいくつもあったのだろう。早く控室に戻ろうという思いもありながら、しかしどうしても気になってしまってビジョンを振り向く、といった風情の井口。気づけば、最後まで装着場にヘルメットとカポックを着けたまま残った選手となってしまっていた。
 レース前の井口の表情は、絶頂時のものに見えていた。気合がほとばしる鋭い表情と、こちらに気付いた瞬間に見せる最高の笑顔。これが、SGウイナーとなり賞金王を制した頃の井口のふるまいだった。その井口に戻ったと、こちらには見えた。その笑顔が作り笑いになればなるほど、気合が高まっている証しで、そうなる瞬間が楽しみでもあったのだ。今日の敗戦を経て、明日は表情にどんな変化があるのか。ある意味、もっとも気になる存在になった。
2011_1220_0527  悔恨ではないが、ドリーム戦後に神妙に語り合う赤岩善生と今村豊、というシーンも印象に残っている。ドリームの1、2着が、レースの感想を述べ合っている場面だ。赤岩も今村も、けっこう饒舌な二人だと思うが、眉間にシワを寄せて気合と集中力を高めていく赤岩と、目尻に笑いジワを作って朗らかに己の空気を作っていく今村は、タイプが違う。そのせいか、二人の絡みはあまりピットでは見かけないのである。しかし、やはりレース後ともなれば、戦友として言葉を交わし合う。当たり前の光景といえばそのとおりだが、珍しい組み合わせだったので、何かいいものを見たような気になったのだ。二人とも戦士らしい顔つきでいたこともまた、真っ向勝負の後らしい風景。これもまた、ノーサイドのひとつのかたちなのであろう。
2011_1220_0836  最後は笑顔で締めよう。11Rをボートリフト付近の水面で見届けようと歩を進めていた三嶌誠司に声をかけた。すでにピットアウト後だったため、進入のゆくえなどが気になっていたのだろう。型通りの挨拶に終わっている。三嶌には本当によくしてもらっていて、ピットで会えば朗らかに声をかけてくれる。優しく接してくれる。しかし、自分が走っているわけではないとはいえ、レースが始まれば勝負師の顔が前面に出るのだろう。そう解釈して、悪いタイミングで声をかけたな、と思った。今節、近くで顔を合わせるのは初めてで、しかも三嶌は久々のSGで、そんなこんなでちょっと調子に乗ってしまったか、と。
 すると12R終了後、今度は三嶌のほうから満面の笑顔で声をかけてきてくれたのである。クロちゃん、ども、と言いながら、実にゴキゲンな様子で、再会を喜んでくれたようであった。だはは、自慢かよ。ともあれ、こうしたメリハリもまた、選手たちの素顔であり、また魅力である。今日、悔恨にまみれた者たちも、あした勝利をつかめば、きっと最高の笑顔を見せてくれるだろう。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)


| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (1)
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
『しげ爺の賞金王決定戦予想 (2日目)』 2011/12/21 【しげ爺の競艇予想】
管理人のしげ爺じゃ。 当ブログは、『人気brogランキング』 『ブログの殿堂』 『くつろぐ ランキング』 に参加してるぞ。 読者の皆さんの協力が必要なので、下記画像のリンク先をポチっと頼むぞ。 わしの予想で楽しめた方は、是非応援クリックをお願いするぞ。... 続きを読む
受信: 2011/12/21 0:43:55
コメント
コメントを書く




※メールアドレスは外部には公開されません